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用意された  作者: ロア丸ばなな
第三章[再臨]
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第二十話『知らせ』+α

試験終了から数時間後。

「いやー、終わったな」

ルーカスは待機所で水を一気飲みしながら、大きく息を吐き出した。

「まぁ、俺たちのことだから余裕で受かってるだろー」

「おっ、結果発表が始まるみたいだぞ」

白亜が顎でしゃくった先では、ルジェクが再び壇上に立っていた。

「これより、合格者、ならびに特別合格者を発表する」

ルジェクの言葉に、会場の空気が張り詰める。祈るように手を組む者、すでに諦め顔の者、自信満々に胸を張る者――様々な感情が交錯する中、ルジェクが背後の巨大なスクリーンを指し示した。

「これが結果だ」

スクリーンに、ランキング順に点数と名前、そして配属されるクラスが映し出された。

(……私は2位か)

白亜は自分の名前を見つけ、目を細めた。

1位 レイチェル・ヴィンセント 130点 特別合格(貴嗣クラス)

2位 霧生 白亜 127点 特別合格(貴嗣クラス)

3位 ハリー・フィリップス 112点 特別合格(貴嗣クラス)

4位 シャーロット・クラーク 101点 特別合格(兵士クラス)

5位 エルラ・カーター 92点 特別合格(兵士クラス)

(すごいな。私以外に、あのルジェクに勝った者がいるのか。……いや、おそらく1位の奴の時は、ルミエルが表に出てこなかったんだろう。それに、最後の質問の受け答えでも点差が開いたはずだ。妥当な結果だな。ええと、ルーカスの名前は……)

6位 リチャード・ルルガンド 88点(兵士クラス)

7位 ルミナス・グランヴィル 86点(兵士クラス)

8位 アッシュ・ソーンヴェイル 83点(兵士クラス)

9位 ルーカス・メルツ 80点(兵士クラス)

「おい! 俺、結構すごくないか!?」

ルーカスが自分の名前を指差して興奮気味に言った。

「そうだな。よく考えたら、300人中の9位だもんな」

「それよりお前、強すぎだろ! なんでそんな点数いけんだよ!」

「まぁまぁ、頑張ったからな」

適当に返しつつ、白亜は下位のランキングに新井海斗(13位・64点)という日本人らしき名前を見つけていた。

(合格最低点は……20位で54点か。結構、採点が厳しいんだな)

「採点が厳しいんじゃない、強い連中がおかしいんだよ」ルーカスが解説する。「このテストの平均点は例年20点ぐらいだ。0点の奴だってゴロゴロいる。なのに、今年は異常だぜ。いきなり貴嗣クラス認定が3人も出たんだからな」

「私は例外として、1位のレイチェルって人はすごいな」

「あの結果を見ると、3位も4位も、俺から見たら5位の人だって十分バケモノだよ」

「まぁまぁまぁ」

「なんだお前、煽ってんのか◎△$♪×¥●&%#?!」

「噛みすぎだろ」

「今日はここで解散だ。合格した者には近日中に書類を送る。不合格になった者も、これに挫けず再度挑戦してみてくれ。――それと、上位5名の特別合格者は、少しだけここに残ってほしい」

ルジェクの指示を聞き、ルーカスは肩をすくめた。

「だってよ。俺は外で待ってるぜ」

「まったく、面倒だな。半日もかからずに終わったと思ったのに」

「まぁ特別なんだし、いいだろ? じゃあな」

ルーカスはひらひらと手を振り、会場を出て行った。

残されたのは5人のみ。

白亜が周囲を確認すると、一際目を引く黒髪のショートヘアの少女がこちらへ歩み寄ってきた。

「あなたが白亜さんね。よろしく」

(これが、1位のレイチェルか)

「ああ、よろしくな」

「それと……あなた、一体何者なのかしら?」

レイチェルの探るような視線に、白亜は薄く笑った。

「なんだろうな」

そこへルジェクが壇上から降りてきた。

「残ってもらってすまないね。君たちは将来、幹部になる可能性が極めて高い有望株だ。改めて自己紹介させてもらおう。私の名はルジェク・ヨザット。ニューヨーク拠点の官長だ。君たちも自己紹介をしてくれ」

レイチェルが先頭を切る。

「私はレイチェル・ヴィンセント。よろしく」

「私の名前は霧生白亜。よろしく頼む」

続いて、端にいた茶髪の少年が控えめに口を開いた。

「ぼ、僕の名前はシャーロット・クラークです。よろしくお願いします」

その隣の黒髪の少年がハキハキと言う。

「僕はハリー・フィリップス。ハリーって呼んでくれ、よろしく!」

最後に、水色の髪をした女性が微笑んだ。

「私はエルラ・カーター。よろしくね」

全員の顔を見渡し、ルジェクは深く頷いた。

「よし。君たちは特別合格者だ。故に、今後妖撃士団から難易度の高い仕事の依頼が数多く回ってくるだろう。そこで、仲間意識と連携を養うため、これから1年間……君たち5名で「パーティ」を組んで行動してもらう」

エルラが言った。

「ほかの人とは組めないの?」

「最初の一年は原則として認められない。だが、個人として動く際に別の者と共闘することは許可する。優先すべきはこの5人のパーティ活動だということだ」

白亜も渋い顔で尋ねる。

「あまりパーティとかに縛られたくなかったんだが、自由に個人で動いても問題ないのか?」

「問題ない。だが、いざという時はこのメンバーで模擬戦を行い、互いに高め合ってほしいという狙いもある。……妖撃士団は常に戦力不足で、団員たちは死と隣り合わせだ。君たちには少しでも強くなり、生存率を上げてほしいんだ」

その切実な言葉に、誰も反論しなかった。

「質問がないなら、今日は解散だ。また後日連絡する」


拠点の奥の部屋。

ルジェクが戻ると、ヘレナを含む数名の部下たちが待機していた。

「お疲れ様です、官長」

「ああ。今年はとんでもない豊作だった。私を倒す新人が2人も現れたよ。中でも霧生白亜くんは、相当な規格外だ。もしかすると……至上クラスにすら届くかもしれない」

ヘレナは目を丸くした。

(霧生白亜って、ルーカスくんの隣にいたあの子!? そんなに強かったの……)

「昨日お会いしましたよ。ルーカスくんも9位ですし、恐ろしい子たちですね」

「ルーカスくんはあのロイの甥だからな。彼も今後、貴嗣クラスまで上り詰めるだろう」

ルジェクがそう笑った、その瞬間。

彼の脳内に、大天使ルミエルの冷ややかな声が響いた。

『――白亜さんは、あなたに対して本気を出していませんでしたよ、ルジェク』

(……!)

『彼女がもし全力を出したなら、彼女は人類すべてを上回ります』

ルジェクの顔から、スッと血の気が引いた。顔面が引き攣るのを抑えきれない。

「官長? どうかしましたか?」

不審に思ったヘレナの声で、ルジェクは我に返った。

(天使様の声は、私以外には聞こえない……落ち着け)

「いや……なんでもない。残りの業務を片付けよう」


白亜が外へ出ると、壁に寄りかかって待っていたルーカスが顔を上げた。

「すまないな、待たせてしまった」

「まったくだ。退屈すぎて眠りそうになったぜ」

その時。

ピリリリリ、とルーカスの懐から軽快な電子音が鳴り響いた。

「なんだ?」

「着信音だ」

ルーカスはスマートフォンによく似た端末を取り出した。

「これは魔力をエネルギーにして通話する『魔唱話』って魔導具でさ。えーと……あっ、おじさんの家からだ!」

ルーカスは嬉しそうに画面をタップし、耳に当てた。

「はい、もしもし! 俺だけど――」

白亜は隣でルーカスの顔を見ていた。

「……は?」

ルーカスの顔から、瞬時に表情が消え失せた。

まるで心臓を直接鷲掴みにされたかのように、瞳孔が収縮し、全身から血の気が引いていく。

異変を察知し、白亜は声を潜めた。

「……一体、どうした?」

ルーカスは小刻みに震える唇を開き、ひび割れた声で呟いた。

「――――――――」

「……なんで。まじか……クソッ!!」

白亜は即座に事態の異常性を悟り、叫んだ。

「急いで戻るぞ! まずはロイの家に!!」

「あ、ああ……っ!」

二人は弾かれたように、夕暮れのニューヨークの街を全力で駆け出した。


第三章[再臨] おわり


薄暗い空の下、どこかの国境付近にある崩壊した遺跡。

濃い藍色の髪をした妖艶な女性が、瓦礫の上を鼻歌交じりに歩いていた。

ひらけた場所に出ると、二つの巨大な気配が彼女を待ち受けていた。

「随分とご機嫌じゃないか、アズリーン」

アズリーンと呼ばれた女性は、唇を舐めながら答えた。

「ふふっ。ヨーロッパあたりの空を飛んでたらね、とんだ田舎にいいのがいたわ。……人間だったんだけど、人間にしてはかなり強かった。そして、とっても美味しかったわ。なんかよくわかんないけど凄く目立ってたのよね」

「そうか、それは良かったな。私は人間を食わない主義だが、どんな味がするんだろうな」

「他にも誰かもう一人食ったけど、最初の奴が美味しすぎて、ちょっと物足りない感じがしたわね」

「あまり食べ過ぎるなよ」

紳士的な口調の影が、忠告する。

「人間が滅んだら、我々だって滅びる。そういう仕組みなんだ。世界は良くも悪くも、人間を中心として回るように作られているからな」

アズリーンはつまらなそうにため息をついた。

「だからちゃんと制御してるのよ。わかってるのよ、世界の調律を守らなきゃいけないことは。だから今回強いやつをやったのよ。現代の人間は強すぎるからね。それより、あなたの方がもっと食べてるイメージがあったわ。暴食」

「私はさっきも言ったが食べないよ」

「最近の人間も結構強くなってきてるし、楽しめそうね」

「そうだな」

すると、もう一つの影が甘ったるい声で口を開いた。

「アズ。最近、日本から強い気配を感じるの」

「私も気付いてるよ。鬼の気配だね」

「そう。私と同格くらいあるわ」

アズリーンは面白そうに目を細めた。

「サラと同格ね。そりゃ面白そうだ。今度は、日本にでも行ってこようかしら」

「お土産、期待してるわね」

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