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『エプロンを巡る私たちの戦い』

作者: 醍醐乙兎
掲載日:2026/05/22

 今日も私は彼の家に通う。


(……また嫌なこと言われるかな)


 手提げかばんに入れてある、古いエプロンへと意識が向く。

 足取りは軽いのに、気持ちだけが少し重たい。


 最近の彼は私の気持ちを無視して、嫌なことを強要してくる。


(私……絶対に負けない)




「俺が小学生の時に作ったエプロンなんか捨てろよ!」

「嫌」

「新しいエプロン買っただろ!」

「これがいい」

「なんでだよ!!」


「キミが作ってくれた大切なエプロンだから」


 私の言い分に、彼は瞳を揺らし、頭を抱えた。


「そもそも、このエプロンはまだ使える」

「穴が空くたび当て布のをして無理やり使ってるんだろ!」

「私は物持ちがいい」

「小学生用で小さいだろ!」

「裾を伸ばしているから私にぴったり」


「そこまでしたら元のエプロンとは別物じゃないか!!」

「そう、このエプロンはキミと私の共同制作。もはや私たちの子供のようなもの」


「……市販品が嫌なのか?」

「違う。キミが作ってくれたエプロンがいい」

「…………わかった」


 負けを認めた彼は、ゴソゴソとなにかを取り出し、赤面したまま私と向かい合った。


「これ、やる」


 絆創膏をいくつも貼った手で彼が差し出したのは――大人サイズの手作りエプロン。


「作った……使ってくれるか?」

「……」

「生地も丈夫なやつを探して、縫い方も頑丈な方法で縫ったから」

「…………」

「ずっと……使えると、思う」

「………………」

「だ、だめか?」


 不安げな表情の彼から、真新しいエプロンへ視線を落とす。


(新品で、丈夫で、大きいエプロン……)


 私は目を閉じ、小さく息を吐いてから、彼に想いを伝える。


「こんなイケメン私たちの子供じゃない!!」

「…………俺に似たんだろ!!」


 耳まで赤い彼の投げやりな声が響いた。


 やっぱり私の気持ちを全くわかってない。

 騒ぐ彼を無視し、イケメン次男なエプロンが皺にならないよう、手提げかばんに優しく仕舞う。


(…………この大きさの物が飾れる額縁ってどこに売ってるのかな?)



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