『エプロンを巡る私たちの戦い』
今日も私は彼の家に通う。
(……また嫌なこと言われるかな)
手提げかばんに入れてある、古いエプロンへと意識が向く。
足取りは軽いのに、気持ちだけが少し重たい。
最近の彼は私の気持ちを無視して、嫌なことを強要してくる。
(私……絶対に負けない)
「俺が小学生の時に作ったエプロンなんか捨てろよ!」
「嫌」
「新しいエプロン買っただろ!」
「これがいい」
「なんでだよ!!」
「キミが作ってくれた大切なエプロンだから」
私の言い分に、彼は瞳を揺らし、頭を抱えた。
「そもそも、このエプロンはまだ使える」
「穴が空くたび当て布のをして無理やり使ってるんだろ!」
「私は物持ちがいい」
「小学生用で小さいだろ!」
「裾を伸ばしているから私にぴったり」
「そこまでしたら元のエプロンとは別物じゃないか!!」
「そう、このエプロンはキミと私の共同制作。もはや私たちの子供のようなもの」
「……市販品が嫌なのか?」
「違う。キミが作ってくれたエプロンがいい」
「…………わかった」
負けを認めた彼は、ゴソゴソとなにかを取り出し、赤面したまま私と向かい合った。
「これ、やる」
絆創膏をいくつも貼った手で彼が差し出したのは――大人サイズの手作りエプロン。
「作った……使ってくれるか?」
「……」
「生地も丈夫なやつを探して、縫い方も頑丈な方法で縫ったから」
「…………」
「ずっと……使えると、思う」
「………………」
「だ、だめか?」
不安げな表情の彼から、真新しいエプロンへ視線を落とす。
(新品で、丈夫で、大きいエプロン……)
私は目を閉じ、小さく息を吐いてから、彼に想いを伝える。
「こんなイケメン私たちの子供じゃない!!」
「…………俺に似たんだろ!!」
耳まで赤い彼の投げやりな声が響いた。
やっぱり私の気持ちを全くわかってない。
騒ぐ彼を無視し、イケメン次男なエプロンが皺にならないよう、手提げかばんに優しく仕舞う。
(…………この大きさの物が飾れる額縁ってどこに売ってるのかな?)
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