5
誰もいなくなった部屋で、ベッドに寝転んだ。
思ったより、固い。
一度、体を起こして、毛布を一枚、敷布団みたいに広げる。
その上に、もう一度、横になった。
さっきよりは、ましだった。
……みんなに会いたい。
天井の模様を、ぼんやりと目で追った。
見慣れない部屋の中で、動けなくなる。
それだけで、胸の奥が、ぎゅっと縮む。
颯馬なら、こんな時、なんて言うだろう。
「大丈夫だって」って、軽く言って。
それで、結局、全部引き受けてくれる。
あの声を、思い出しただけで、喉の奥が熱くなった。
まだ、謝れてない。
玄関を出る直前だった。
アイスを買って、渡して、それで終わるはずだったのに。
お母さんは、きっと、もう夕飯の支度をしてる。
お父さんは、帰りが遅い日だったかもしれない。
でも、私が帰らなかったら、絶対、心配する。
スマホを探そうとして、ここには、そんなものはないことに気づく。
胸が、すうっと冷えた。
……連絡も、できない。
布団代わりの毛布を、ぎゅっと握った。
「……颯馬……」
小さく呼んでみる。
返事なんて、あるはずないのに。
お母さん。
お父さん。
名前を、心の中で並べる。
ここにいない人たちの名前ばかり、増えていく。
声が、震えた。
泣かないって、決めてたのに。
昼間は、ずっと、我慢してたのに。
今は、誰もいない。
毛布に顔を埋めて、息を殺そうとした。
でも、うまくできなかった。
小さな声が、漏れた。
……帰りたい。
……みんなに、会いたい。




