12
湯からゆっくりと体を上げる。
なんだか、少し頭がぼんやりする。
体が軽い。
ずっとまとわりついていた重さが、全部流れていったみたいだった。
ぽかぽかと火照る体を、用意されていた布で拭く。
籠の中の服に袖を通す。
この数日で見慣れた形の服なのに、少しだけ違う匂いがした。
深く息を吐く。
それから、ゆっくりと扉を開けた。
湯気が、ふわっと部屋に流れ出る。
部屋の真ん中、大きなソファに座ったアルヴェインさんが、本を閉じた。
「おかえり。温まった?」
……おかえり、か。
鼻で笑いそうになったのを、堪えた。
「ありがとうございます。すっきりしました」
アルヴェインさんが私の方を見る。
途端に、表情が曇った。
さっきの、顔に出ちゃってたかな。
「のぼせてないか?顔が赤い」
本をテーブルに置いて、その手が私のおでこに触れた。
「ああ、やっぱり。早く座って」
私より冷たい手が、そのまま腕を引く。
ふらり、と足が崩れそうになるのを支えてもらいながら、ソファへ案内される。
「久しぶりのお風呂だったから……」
調子に乗って、長風呂しすぎちゃった。
アルヴェインさんは、部屋の奥にある大きな机へ向かった。
そこに置かれていたピッチャーを手に取る。
コップに注いで、差し出してくれた。
両手でコップを受け取る。それを、一気に飲み干した。
冷た過ぎない水が、喉を通っていく。
「ふぅ……」
一息つく。
やっぱり、まだぼんやりする。
「紗和、もう少し休んだら小礼拝堂へ戻ろう」
「はい」
アルヴェインさんが、もう一杯水を注いでくれた。
そのコップを持とうとしたけど、力が入らないのが分かった。
少しだけ、目を閉じる。
ソファが、ひどく柔らかく感じた。




