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始まりの聖女 ─彼女が呼ばれたわけ─   作者: はたの


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湯からゆっくりと体を上げる。


なんだか、少し頭がぼんやりする。


体が軽い。

ずっとまとわりついていた重さが、全部流れていったみたいだった。


ぽかぽかと火照る体を、用意されていた布で拭く。

籠の中の服に袖を通す。


この数日で見慣れた形の服なのに、少しだけ違う匂いがした。


深く息を吐く。


それから、ゆっくりと扉を開けた。


湯気が、ふわっと部屋に流れ出る。



部屋の真ん中、大きなソファに座ったアルヴェインさんが、本を閉じた。


「おかえり。温まった?」


……おかえり、か。


鼻で笑いそうになったのを、堪えた。


「ありがとうございます。すっきりしました」


アルヴェインさんが私の方を見る。


途端に、表情が曇った。


さっきの、顔に出ちゃってたかな。


「のぼせてないか?顔が赤い」


本をテーブルに置いて、その手が私のおでこに触れた。


「ああ、やっぱり。早く座って」


私より冷たい手が、そのまま腕を引く。


ふらり、と足が崩れそうになるのを支えてもらいながら、ソファへ案内される。


「久しぶりのお風呂だったから……」


調子に乗って、長風呂しすぎちゃった。


アルヴェインさんは、部屋の奥にある大きな机へ向かった。


そこに置かれていたピッチャーを手に取る。

コップに注いで、差し出してくれた。


両手でコップを受け取る。それを、一気に飲み干した。


冷た過ぎない水が、喉を通っていく。


「ふぅ……」


一息つく。


やっぱり、まだぼんやりする。


「紗和、もう少し休んだら小礼拝堂へ戻ろう」


「はい」


アルヴェインさんが、もう一杯水を注いでくれた。


そのコップを持とうとしたけど、力が入らないのが分かった。


少しだけ、目を閉じる。


ソファが、ひどく柔らかく感じた。




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