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11.

 初めての生油田に興奮し、新たな産業についてアウソラード王国の王子たちと話に花を咲かせるランカ。

 そしてそんな婚約者の姿を見守っていることしか出来ないカウロ。



 月日を追うごとに気持ちのすれ違いは加速していく。

 正確には新たな商機に目を輝かせるランカを、カウロが恋する乙女と勘違いしただけだが。


 けれどとっくにアターシャはターゲットを切り替えているため、卒業式に断罪イベントが行われることはない。

 特に何かに手を出すこともなく、断罪エンドをスルーした悪役令嬢。それはただの令嬢である。婚約破棄なんて一世一代でも起こしたくないバッドシナリオが起きる訳もない。



 その上、カウロが心配していたことなんてそもそも起こるはずもないこと。



 こうしてランカとカウロは無事、婚約者から夫婦に関係を変化させるのだった。

 イベントすら起きなかったランカと、婚約解消の話すら振られずに婚姻を結べたカウロ。


 二人揃ってなにがなんだか状況を飲み込めずにいた。

 けれど不利益があるわけでもない。


 むしろカウロは「良かった! 本当に良かった!」と一人で号泣するほど。

 ランカは各地で祝福の声をかけられる度、あの人と結ばれるのか……と幸せを少しずつ飲み込んでいった。



 こうして思いを伝えることなく、結ばれた訳だが、心配事のなくなった王子は『尊敬するだけじゃダメだ! 尊敬されるような男にならなければ!』と王子として一層国務に力を入れるようになった。


 元より国民のことを誰よりも考えて行動する王子がメラメラとやる気に燃え、投資家としてだけでなく貴族の娘としても優秀だったランカは本来とは違う用途になった人脈を余すことなく利用し、愛しい夫を支えた。

 そこにアウソラード王国から優先的に分け与えられる石油の力も加わって、国はますます繁栄を遂げていくのだった。




 2人が互いの想いを知るのはもう少しだけ後のこと。

 けれど周りは2人が思い合っていることなんてとっくに気付いていた。

 なにせカウロは幸せオーラを振りまき続け、己の気持ちを隠す必要のなくなったランカはいつだって愛しい彼を見つめているのだ。気付かない訳がない。


 各地を飛び回り、民達の声に耳を傾けた彼らが国どころか大陸中にオシドリ夫婦として名を馳せるまでそう時間はかからなかった。噂を広めるのは珍しい髪の色をした少女だとか。けれどあくまでそんなのは始まりにすぎない。2人に出会った人達は皆、同じことを広めていくのだから。


 様々な場所を吹いた風が連れてきた噂で、ランカの想いを知ったカウロは結婚記念日にとある物を用意した。



「愛してる」

 一年前に言えなかった言葉と共に愛しい妻に贈るのは、いつかの物よりもずっと上達した花冠だった。あれだけ練習したのだから上手くもなるだろう。けれどそんな恥ずかしいことは妻には内緒なのだ。


「綺麗……」

 幼い頃のようにキラキラと目を輝かせるランカに、カウロの胸は温かくなる。

 ランカの頭に冠を乗せ、似合ってるよと絹のような指通りのいい髪を撫でれば彼女は昔のように真っ赤になった顔を手で覆い尽くす。

 そんな妻を抱きしめて「綺麗だ」と耳元で囁けば、花で作ったティアラで飾られたお妃様は耳まで真っ赤に染め上げるのだ。



 そして結婚記念日に言葉と共にプレゼントを贈るのはカウロの中で恒例となった。


「これからずっと私と共にいて欲しい」

 その言葉と共に二度目の結婚記念日に贈られたのは色違いの100本のバラ。

 ご丁寧に一つ一つ、品種と色の説明付で。



「君といられる私は大陸一の幸せ者だなぁ」

 三度目の結婚記念日にはランカをイメージした、すっきりとしたラインが特徴のドレス。

 小さな学校の教え子の作品なのだと伝えるその目は嬉しさで潤んでいた。



 新たな年を迎える度にランカの宝物は増えていく。

 そして思い出が満たされる度に、カウロの想いを身に染みて実感していくのだった。



「幸せってこういうことなのね」

 路頭に迷うことを心配していた元悪役令嬢はあふれ出す涙を止めることは出来なかった。


 隣には自分を認めて愛してくれる人がいる。

 優しくて頑張り屋で、幼く笑う王子様だ。

 けれど時折見せる顔はもうすっかり青年のもの。


 いつからかは分からない。

 けれどランカはカウロに恋をしていたのだ。


 元婚約者で今は夫のカウロに。


「愛しているよ、ランカ」

 婚姻を結んで幾度となく繰り返された言葉にランカは「私もです」と笑う。


 その笑みは澄んだ水のように美しかった。


 完


本作は元々思いついたものをTwitterに流していただけの、大筋だけを書いた1人リプライツリーでした。しっかりと書き上げるつもりもなく、そこで終わらせるつもりだったものでした。ですがとある方に背中を押され、小説として書いてみたところ、想像以上に多くの人に読んでいただけて嬉しかったです!


見事に悪役が存在しないお話ではありますが、登場人物全員が幸せを迎えられるお話を書くことが出来て良かったです。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!


追記:8/1~ アターシャ(ヒロインさん)のお話『歯車が狂った乙女ゲーム世界では『ヒロイン』は成り立たない』の連載を開始しました。

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