表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/23

9、バター効果

 ローイさんと、さっきのお姉さんがいた。


「私は、クレアよ。座ってちょうだい」

「はい」


 私たちは前の席に座った。二人は立ったままだ。私は聞いてみた。


「トミーたちはどうなりましたか?」

「警備署の兵に来てもらって引き渡したわ」

「……そうですか」

「あの子たちと会った時のことを話してちょうだい」

「はい」


 ルイスが返事をして話し始めた。トミーたちがポーションを飲みながら三層目にいたことなど、自分の見解も話した。話し終わると、ローイさんが頭をかいた。


「みんなやってるだと!? なんてこった! あいつ、引き渡して正解だな」

「今回のことは、無理をしたせいなのね……。

 これは問題だわ。本来ならポーションが切れた時点で、自分が活動できる範囲が分かるようになっていたのに……」


 協会は活動範囲を強制するようなことはしていないけど、そういうことなんだ……。


「トミーはポーションをかけたから、元気だったのかも……。

 あの二人は、初めからポーションを持っていなかったんじゃないかなと思います。同じように、その場で調達しようとしている人が他もいたと思います」


 ルイスは重い口調で付け足した。なるほど! ポーションは高価だからな……。それを聞いて、クレアさんとローイさんは顔を見合わせた。


「そうね。ありがとう。貴重な意見が聞けて良かったわ。トミーはもう冒険者にはなれないから安心して。

 あなたたちはいいパーティだって、ダリアが言ってたわよ」

『ありがとうございます』


 パーティを褒められてほっとした。トミーのことも……。ルールを守らない者は、もう冒険者にはなれない……。


『……あの二人は無理だと思う』


 ルイスが言っていたことを思い出した。きっとこういうことだったんだ。——そういえば、


「ミサたちは二層目にいたんですけど、帰りましたか?」

「ああ、トミーの奴は手前にミサたちがいることを知っていたから、ミサたちに職員を呼びに行かせたんだ」

「そうだったんですか!」


 ローイさんはトミーから聞いたことを話してくれた。

 クムンは素早く来たホーンモンキーに息を吹きかけられて、瘴気を吸い込んでしまったそうだ。


 私もホーンモンキーに会ったときに、息をかけられていたら危なかったんだ……。思い出してゾッとした。


 クムンが倒れると、ホーンモンキーは逃げたそうだ。モンスターも逃げるんだ! トミーはクムンを置いて、ミサたちのところへ行った。ミサたちは採取したものを置いて慌てて呼びに行き、閉鎖することを聞いたので、また戻って片付けると帰ったそうだ。良かった。


 私たちも話が終わったので協会の外に出た。とぼとぼと歩く。私は下を見ながら言った。


「悲しい事件だったね」

「そうだね……。いやな思いをさせてごめんね」

「うんん、もう大丈夫。明日は休みだからゆっくりしよう」

「うん」


 私たちはほほえみ合った。明日は土曜日だから子供ダンジョンは休みだ。他の子が監査が入るって話してたな……。


「そうだ。ジョンソンパンに行こうよ。バターを届けて買い物をしよう!」

「うん」


 私たちはジョンソンパンに行くと、ルラさんがカウンターにいた。


「ユミちゃん、ルイス君いらっしゃい」

『こんにちは』


 ルイスもパン屋に来るのは三回目だと思う。この辺に住んでいる人はみんなジョンソンパンに来る。一昨日一緒に行ったときに、ルイスをルラさんに紹介した。

 厨房にいたナンシーは私たちに気がついて窓越しに手をふった。私たちもニッコリして手をふり返す。


「今日はアイテムのバターを持ってきました」

「え!?」


 ルラさんは突然のことに驚いた。


「おいしいって聞いて。今日はたくさん取れたのでおすそわけです」

「わあ、ありがとう! じゃあ、パンを持ってっていいわよ!」

「え!?」


 今度は私たちが驚いた。


「アイテムのバターはとても高価だもの。二人で二〇個は持って行きなさいよ」

『えー!?』

「アイテムバターっていくらなの!?」

「あら知らないの? 最高級品なのよ。お店で買うと六〇ルトぐらいするわよ」

「えー! 知らなかった」


 ルイスと顔を見合わせた。あの恐ろしいサルのバターだけど……さすがアイテム! ルイスが言った。


「多分、換金だとだいぶ安いだろうね」

「そうだね」


 私たちは休み二日分のパンをもらった。ルイスが一二個で私が八個だ。


『ありがとうございます!』

「いいわよ。今日はもう店じまいね」


 残っていたパンがほとんどなくなってしまった。土日はジョンソンパンも休みだ。

 ジョンソンパンでは残ったパンを店の者で分けたり、明日開いている店に持って行って委託販売してもらう。次の日が営業のときは、その日のパンが焼けるまで早めに店を開けて安売りしている。本来の開店時間は十一時からと遅い。それ以後のものは、貧しい人たちに分けるフードバンクの人が回収しにくる。


 この国では食料を無駄にしないようになっている。ジョンソンパンでは渡すパンがないときでも、長い焼き立てパンを一個渡すようにしていた。


 ナンシーは休み明けの仕込みが済んで、片付けをしていた。魔法袋と同じで、保管庫に保存用魔法石を置くと、そのままの状態で保存が可能だ!

 モンスターがドロップした魔鉱石は、魔法使いがいろいろな魔法付与の加工を施して、誰でも使える魔法石になるのだ。魔法すごい! 


「じゃあナンシーも、もう上がってもらおうかな」


 ルラさんはそう言うと、厨房に入っていった。しばらくしてナンシーが出てきた。ナンシーは残ったパンを三個紙袋に入れて、カバンの中にしまった。いつも三個まで持って帰っていいのだ。いい店だ!


 私たちは店を出ると、今日あった出来事を話した。ナンシーも驚いた。


「なんかひどい話だね」

「うん、私もそう思った」

「ユミが悲しい思いをすると私もつらいよ。話してくれてありがとう」

「うん。聞いてくれてありがとう」


 ナンシーに話を聞いてもらえてスッキリした。


「ナンシーにもバターがあるよ」

「本当に!? 楽しみ!」

「帰ったら渡すね」

「うん」


 楽しい気持ちで帰れて良かった。私はナンシーに言った。


「今日はララさんに私がパンを渡すね」

「うん」


 そういえばララさんの分のバターを忘れた。

 寮に帰るとララさんに、もらったパンを二個と私の分のバターを渡した。ララさんも驚いて喜んでくれた。


「まさかアイテムバターが食べれるなんて! 食べてみたかったのよ。ありがとうね!」


 なんだか、みんなに喜んでもらえてすごくうれしい! サルのバターすごい!

 階段を上がって、部屋の前でナンシーにバターを渡して別れた。ルイスにも渡すと、ルイスは受け取ろうとしなかった。


「さっきは、ユミが自分の分を渡したからびっくりした。俺の分を半分こしようよ」

「うん! ありがとう。私も食べてみたかったんだ! 後で持って行くね」

「うん!」


 食べれるから良かった! 私は鍵を開けて部屋に入ると、バターを半分にしてルイスに持って行った。

 今日のご飯が楽しみだ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ