7、危険なパーティ
ダンジョン三日目になる。私たちは二層目に降りて、ミサたちに声をかけた。
「おはよう!」
『おはよう!』
二人が振り返って挨拶した。二人は急いで取った薬草を魔法袋に片付けると、入口まで小走りにやって来た。
「じゃあ行こう」
ルイスがそう言うと階段に戻る。ミサがうれしそうに言った。
「昨日はね。百ルトになったのよ。今までで一番稼いだわ!」
「そうなんだ! 良かったね」
百ルトで銅貨一枚だ。五〇ルトでも一か月で銀貨一枚だから、ミサたちは若い大人の女性と同じぐらい稼でいると思う。昨日はボーナスみたいなものだな。私もほほえんだ。
三層目に着いた。森というより、鬱蒼としていてジャングルみたい。天井の色も少しどんよりしたグレーだった。なんか空気が濃くなった気がする。
「上と比べて、ちょっと暗いね」
「そうだな」
私たちは中に入ったが、ミサたちは来なかった。
「やっぱりダメね。瘴気が濃いわ」
「えっ!?」
これって瘴気なのか!
「私たちにはちょっと強すぎるから、二層目に戻るわ」
「そっか。確かに何か変な空気だよね」
「……ミサたちにも悪いなら、きっと俺たちにもよくないだろうな」
ルイスが難しい顔をして言うと、ミサは驚いた。
「そういう考え方をする人はいなかったわ。みんな、自分たちは大丈夫だと思ってる。——ルイスはさすが、聖剣の持ち主ね」
「へ~」
私はルイスを見て感心した。あれ?
「もしかして、ダンジョンで争いが絶えないとか、おじさんたちの柄が悪いのは、瘴気のせいなのかな?」
「おじさんたちは性格だと思うけど……争いはそうかもしれない。ここに長くいるせいで、おかしくなるのかも。俺たちも気をつけたほうがいいな」
「うん……」
ミサも口元に手を近づけて、ぽつんと言った。
「寮の子たちもそうかも……。
でも、ユミとルイスなら大丈夫よ。じゃあ、頑張ってね!」
「うん、ありがとう!」
私たちは手をふって別れた。
「注意しないとね」
「うん。俺たちもミサたちを見習って長居しないほうがいいから、昨日と同じ時間に終わりにしよう」
「うん! 賛成!」
朝から入ると疲れるし……それって、瘴気の影響もあるのかな?
私たちが進もうとすると、早速、茶色と白い毛がまだらに混じったホーンコヨーテが現れた。強そう! ルイスが剣を振るうが、その前にさっと避けた! 嘘でしょ!? 賢い!!
「手強そうだな」
ルイスが構えると、聖剣は赤い光をまとった。ルイスが剣を振るうと、また避けたが光の範囲が広く、ホーンコヨーテを捕らえて消滅させた。
「すごい!!」
聖剣は無敵だ! でも、まだ三層だった……。ホーンコヨーテは、山吹色の魔鉱石と指のない茶色の手袋を落とした。
「フィンガーレスグローブだ! やった!」
初めてアイテムが出るのを見て、私は歓喜した! ルイスは魔鉱石と手袋を拾う。
「着けると攻撃力と防御力が一つ上がるんだよ」
「本当に!? じゃあ、早速着けるよ」
ルイスは手袋をつけると、手をグーパーして手になじませた。三層目はめっちゃ期待できそう! まあ、それだけ危険なんだろうけど。
私たちはまた進んでいく。
「あ、これは、鎮静効果がある薬草だ!」
私はさっと薬草の元にしゃがみ込んだ。ガサッと音がする。ん? 上を見ると目を見開いて四角い歯をむき出しにした、ホーンモンキーがいた。
「ぎゃ~!」
「ユミ、避けて!」
私はなんとか横に飛び退いてひれ伏すと、足をさっとしまって体勢を立て直した。ルイスが剣を振るうと、ホーンモンキーも出てくる暇もなくポンッと消えた。ベージュ色の魔鉱石と四角い銀の包み紙が落ちる。私が近寄ってみる。
「バターだ! わー、溶けちゃうかも」
ルイスが笑い、私は恐る恐る手に取った。
「こういうときに魔法袋があるといいよね」
魔法袋の中は時間が止まって、劣化しないのだ。
「そうだな。お金が貯まったら買おう」
「うん! ——食べ物は換金してくれるのかな?」
「講習で、そう言ってたよ」
「あ、そうなんだ。聞いてなかった。あはは……」
私、他のことを考えていて聞いてないことがよくある……。ルイスがいて良かった。
「アイテムの食べ物はおいしいから、普通の物より高価なんだって」
「じゃあ、分けて食べようよ」
「うん!」
ルイスの提案にもちろん大賛成だ! 楽しみ! バターと魔鉱石は私のカバンにしまった。三層目はすごいな。
「ドロップ率、百パーだね」
「そうだね」
こんな危険なジャングルで、私たちはご機嫌だった。その時、突然人の声がした。
「誰かー! 助けてー!」
私たちは顔を見合わせた。ルイスが言った。
「行ってみよう」
「うん」
声の方へ走って行った。少し行くと、男の子が二人座っていた。二人とも私たちより年下のようだ。一人が腕に傷を負っていた。モンスターはいない。ルイスが声をかけた。
「大丈夫か?」
「トミーが怪我をしたんだ! ポーションを持ってない?」
「あるわよ、ちょっと待って」
介抱していた男の子は私のほうを見て言った。ルイスは嫌な顔をする。私がカバンからポーションを取り出そうとすると、ルイスが手で制した。
「ユミは下がって、俺がする」
「え?」
よく分からないけど、ルイスの言われた通りに一歩下がった。ルイスがトミーに聞いた。
「モンスターはどうした?」
「倒したよ」
ルイスはそれを聞くと、リュックからポーションを取り出した。トミーのところまで行くと、腕を掴んで引っかかれたところにポーションを一滴たらした。傷口が光ると、きれいに消えた。うわ! ポーションすごい!
でも、男の子たちは嫌な顔をした。
「ありがとう……。よかったらそのポーションをくれないかな。俺たち使い切っちゃったんだ」
ルイスは立って、二人からすぐに離れた。
「ポーションがないなら、戻るのがルールだ」
「……助けてもらってなんだけど、余計なお世話なんだよね。みんなやってるし」
えっ!? な、何? この子たち……。私はトミーの態度に唖然とした。もう一人の子もこっちを睨んでいた。私は思わず口に出た。
「助けたのに……」
「ポーション一滴で、恩着せがましいんだよね」
えー!! 最低!! トミーは続けて言った。
「君は聖剣の持ち主だろ。君のことみんなよく思ってないよ。あと、このことは誰にも言わないでよ」
そう言うと二人はいなくなった。私がポカーンとすると、ルイスが言った。
「多分、ユミのポーションを奪うつもりだったんだ」
「えっ!?」
「全部飲んで治す気だったんだよ」
「えー!? そんな使い方したらすぐになくなっちゃうよ!」
「あの二人、三層で苦戦しているなら、ミサとメイアと同じでここに合わないんだと思う。ポーションを飲みながら活動しているんじゃないかな」
え~!? そんなの違反だし、無茶だわ! 私は驚いた。
「分かった。あの子たちが、あの大人になるのよ!」
「え? ……あのしか言ってないから、よく分からないけど……」
「待合室の冒険者のおじさんたちよ」
私は、トミーたちとおじさんたちに怒りながら言った。
「……あの二人は無理だと思う」
「え?」
ルイスが静かに言った。——どういうこと? ……二層目でもまあ、普通ぐらいには稼げると思うけど……。




