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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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7/22

7、危険なパーティ

 ダンジョン三日目になる。私たちは二層目に降りて、ミサたちに声をかけた。


「おはよう!」

『おはよう!』


 二人が振り返って挨拶した。二人は急いで取った薬草を魔法袋に片付けると、入口まで小走りにやって来た。


「じゃあ行こう」


 ルイスがそう言うと階段に戻る。ミサがうれしそうに言った。


「昨日はね。百ルトになったのよ。今までで一番稼いだわ!」

「そうなんだ! 良かったね」


 百ルトで銅貨一枚だ。五〇ルトでも一か月で銀貨一枚だから、ミサたちは若い大人の女性と同じぐらい稼でいると思う。昨日はボーナスみたいなものだな。私もほほえんだ。


 三層目に着いた。森というより、鬱蒼(うっそう)としていてジャングルみたい。天井の色も少しどんよりしたグレーだった。なんか空気が濃くなった気がする。


「上と比べて、ちょっと暗いね」

「そうだな」


 私たちは中に入ったが、ミサたちは来なかった。


「やっぱりダメね。瘴気が濃いわ」

「えっ!?」


 これって瘴気なのか! 


「私たちにはちょっと強すぎるから、二層目に戻るわ」

「そっか。確かに何か変な空気だよね」

「……ミサたちにも悪いなら、きっと俺たちにもよくないだろうな」


 ルイスが難しい顔をして言うと、ミサは驚いた。


「そういう考え方をする人はいなかったわ。みんな、自分たちは大丈夫だと思ってる。——ルイスはさすが、聖剣の持ち主ね」

「へ~」


 私はルイスを見て感心した。あれ?


「もしかして、ダンジョンで争いが絶えないとか、おじさんたちの柄が悪いのは、瘴気のせいなのかな?」

「おじさんたちは性格だと思うけど……争いはそうかもしれない。ここに長くいるせいで、おかしくなるのかも。俺たちも気をつけたほうがいいな」

「うん……」


 ミサも口元に手を近づけて、ぽつんと言った。


「寮の子たちもそうかも……。

 でも、ユミとルイスなら大丈夫よ。じゃあ、頑張ってね!」

「うん、ありがとう!」


 私たちは手をふって別れた。


「注意しないとね」

「うん。俺たちもミサたちを見習って長居しないほうがいいから、昨日と同じ時間に終わりにしよう」

「うん! 賛成!」


 朝から入ると疲れるし……それって、瘴気の影響もあるのかな?


 私たちが進もうとすると、早速、茶色と白い毛がまだらに混じったホーンコヨーテが現れた。強そう! ルイスが剣を振るうが、その前にさっと()けた! 嘘でしょ!? 賢い!!


「手強そうだな」


 ルイスが構えると、聖剣は赤い光をまとった。ルイスが剣を振るうと、また避けたが光の範囲が広く、ホーンコヨーテを()らえて消滅させた。


「すごい!!」


 聖剣は無敵だ! でも、まだ三層だった……。ホーンコヨーテは、山吹色の魔鉱石と指のない茶色の手袋を落とした。


「フィンガーレスグローブだ! やった!」


 初めてアイテムが出るのを見て、私は歓喜(かんき)した! ルイスは魔鉱石と手袋を拾う。


()けると攻撃力と防御力が一つ上がるんだよ」

「本当に!? じゃあ、早速着けるよ」


 ルイスは手袋をつけると、手をグーパーして手になじませた。三層目はめっちゃ期待できそう! まあ、それだけ危険なんだろうけど。

 私たちはまた進んでいく。


「あ、これは、鎮静効果がある薬草だ!」


 私はさっと薬草の元にしゃがみ込んだ。ガサッと音がする。ん? 上を見ると目を見開いて四角い歯をむき出しにした、ホーンモンキーがいた。


「ぎゃ~!」

「ユミ、避けて!」


 私はなんとか横に飛び退いてひれ伏すと、足をさっとしまって体勢を立て直した。ルイスが剣を振るうと、ホーンモンキーも出てくる暇もなくポンッと消えた。ベージュ色の魔鉱石と四角い銀の包み紙が落ちる。私が近寄ってみる。


「バターだ! わー、溶けちゃうかも」


 ルイスが笑い、私は恐る恐る手に取った。


「こういうときに魔法袋があるといいよね」


 魔法袋の中は時間が止まって、劣化しないのだ。


「そうだな。お金が貯まったら買おう」

「うん! ——食べ物は換金してくれるのかな?」

「講習で、そう言ってたよ」

「あ、そうなんだ。聞いてなかった。あはは……」


 私、他のことを考えていて聞いてないことがよくある……。ルイスがいて良かった。


「アイテムの食べ物はおいしいから、普通の物より高価なんだって」

「じゃあ、分けて食べようよ」

「うん!」


 ルイスの提案にもちろん大賛成だ! 楽しみ! バターと魔鉱石は私のカバンにしまった。三層目はすごいな。


「ドロップ率、百パーだね」

「そうだね」


 こんな危険なジャングルで、私たちはご機嫌だった。その時、突然人の声がした。


「誰かー! 助けてー!」


 私たちは顔を見合わせた。ルイスが言った。


「行ってみよう」

「うん」


 声の方へ走って行った。少し行くと、男の子が二人座っていた。二人とも私たちより年下のようだ。一人が腕に傷を負っていた。モンスターはいない。ルイスが声をかけた。


「大丈夫か?」

「トミーが怪我をしたんだ! ポーションを持ってない?」

「あるわよ、ちょっと待って」


 介抱していた男の子は私のほうを見て言った。ルイスは嫌な顔をする。私がカバンからポーションを取り出そうとすると、ルイスが手で制した。


「ユミは下がって、俺がする」

「え?」


 よく分からないけど、ルイスの言われた通りに一歩下がった。ルイスがトミーに聞いた。


「モンスターはどうした?」

「倒したよ」


 ルイスはそれを聞くと、リュックからポーションを取り出した。トミーのところまで行くと、腕を(つか)んで引っかかれたところにポーションを一滴たらした。傷口が光ると、きれいに消えた。うわ! ポーションすごい!

 でも、男の子たちは嫌な顔をした。


「ありがとう……。よかったらそのポーションをくれないかな。俺たち使い切っちゃったんだ」


 ルイスは立って、二人からすぐに離れた。


「ポーションがないなら、戻るのがルールだ」

「……助けてもらってなんだけど、余計なお世話なんだよね。みんなやってるし」


 えっ!? な、何? この子たち……。私はトミーの態度に唖然(あぜん)とした。もう一人の子もこっちを睨んでいた。私は思わず口に出た。


「助けたのに……」

「ポーション一滴で、恩着せがましいんだよね」


 えー!! 最低!! トミーは続けて言った。


「君は聖剣の持ち主だろ。君のことみんなよく思ってないよ。あと、このことは誰にも言わないでよ」


 そう言うと二人はいなくなった。私がポカーンとすると、ルイスが言った。


「多分、ユミのポーションを奪うつもりだったんだ」

「えっ!?」

「全部飲んで治す気だったんだよ」

「えー!? そんな使い方したらすぐになくなっちゃうよ!」

「あの二人、三層で苦戦しているなら、ミサとメイアと同じでここに合わないんだと思う。ポーションを飲みながら活動しているんじゃないかな」


 え~!? そんなの違反だし、無茶だわ! 私は驚いた。


「分かった。あの子たちが、あの大人になるのよ!」

「え? ……あのしか言ってないから、よく分からないけど……」

「待合室の冒険者のおじさんたちよ」


 私は、トミーたちとおじさんたちに怒りながら言った。


「……あの二人は無理だと思う」

「え?」


 ルイスが静かに言った。——どういうこと? ……二層目でもまあ、普通ぐらいには稼げると思うけど……。


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