12、固有のモンスターたち
四層目も誰もいなかった。ここの環境は一から二層目と似ていて、明るい森だった。ここからはE級モンスターが出てくるから、倒せばE級に上がれるのだ。確認は魔鉱石の質やドロップアイテムで分かり、倒した者が申請する。
他のモンスター固有種も出てくるから楽しみだ! モンスターには既存の動物型と固有種の二種類がいて、固有種のほうはかわいいものや、カッコいいモンスターがいる。
私のお気に入りは、毛玉モンスターの通称「ほこり」だ。丸い毛玉に長い紐のようなしっぽが付いていて、しっぽの先もふさふさしている。四属性ごとに色が違い、マスコット的な見た目だ。軽いので常に浮いている。ドロップアイテムは、規定量の半分の半ポーションだ。
多分、持ってない子たちはこれを当てにしていたのだろうが、めったに攻撃はしないが、素早く動いて逃げるので難易度は高い。ポーションは一層から三層までのモンスターでも落とす。でも、ほとんどもらえないから、アイテムを期待するのはやはり危険だ。
しばらく歩くと、ピーピー、ギーギー鳴く声がして、複数のほこりがいた! おお~、なんてかわいいの! でも、ほこりも危険なモンスターに変わりはない。
様子を見るとなんだか変だ。四属性のピンク、茶色、緑、水色の四体のほこりが、一匹のクリーム系の白っぽいほこりを攻撃していた。攻撃されたほこりは、ピギー!! と鳴いている。
「あれだけ、色が違うわ」
「そうなの?」
「うん。属性の色だから、白っぽい子はいないはず」
「なんか、いじめられてるみたいだね」
私たちが近づくと、白っぽい子が気がついてすぐに私に寄って来た! その隙に、ルイスが四体を剣で払った。それぞれの属性色の半ポーションと、小さい魔鉱石がごっそり落ちた。おお~、大漁だ!
半ポーションは半分の量で、通常量の一・五倍の効果がある。属性ポーションは、その魔法攻撃のひどい怪我でもたちどころに治す効果があるのだ。
「魔鉱石はホーンの小型のものより小さいね」
「でも、多分魔力が多いから値段は高いと思う」
「そっか!」
白っぽい子はその様子を見ていた。私もその子を観察してみると、体の左下の一部が透明に欠けていて、端の像が不安定にジリジリと映ったり消えたりしている。
「この子、不完全なんだわ。それでいじめられていたのかも。……色がクリーム色だ」
「もしかして、光属性じゃないかな」
「え? それって、超レアじゃん! 狩るのもったいないな」
私がそう言うと、そのほこりは眉を吊り上げ、ギー! と鳴いて突進してきた。
「あ!」
「ユミ!」
私の左肩にぶつかると、光った。ほこりは私から離れると、体が完全体になっていた。ピギー! と得意そうに笑って消えた。
私はちょっと、気力が消えた気がする。手を胸の上に当てた。
「エネルギーを吸い取られたかも……」
「えっ!? 大丈夫?」
「うん、少しだけだから大丈夫」
「エネルギーを吸い取るのは、やっかいだな」
「光属性のことは本に載ってないから、詳しくは分からないな」
この国の魔法やモンスターは四元素の四属性だけで、光属性は確認されていない。
「あいつには気をつけよう」
「うん」
ちょっと生意気で、かわいい感じの子だったなと思った。
その後も小さい水色のミニユニコーンなど、倒すのがもったいないぐらいかわいいモンスターが現れた。落としたのはなんと、十センチはある赤と白の縞模様の渦巻きキャンディだ! ルイスはそれを持って、理解に苦しんでいた……。
「これは……」
「回復キャンディだよ」
「そうなんだ……デカいな。ずっとなめてなきゃいけないのかな?」
「たしか、吸い込まれると思う」
「ホッ、そうなんだ。じゃあ持っていよう」
「うん」
私は笑った。私たちには魔法使いがいないからね。魔法使いの子たちは魔法学校に通うから、子供のパーティには魔法使いはいないと思う。
先に進むと、赤い筒状の花をつけた珍しい薬草を見つけた。
「これは、咳止めね」
喘息の人に重宝される薬だ。ゲートに着くまでに時間がかかった。時刻は13:10と表示されている。
「広いのか、モンスターにてこずったかな?」
「少し広いよね?」
「そうだな」
私たちは遅い昼ご飯にした。
「今日はおもしろいモンスターに会えて良かったな」
「ユミはモンスターが好きなんだね」
「うん。ダンジョンに入りたかった理由が、モンスターを見ることだったから。危険なものもいるけど、やっぱり普通の動物と違っておもしろいし、かわいい!」
「この階は、簡単そうなモンスターだな」
「そうだね」
ここに来るまでに、一層目にいたモンスターもいた。でも魔力が高いんだと思う。ホーンラビットもポーションを落としていた。
「今日はもう帰ろうか?」
「うん。いいよ。——じゃあさ、ミサのところに寄って行こうよ。少し早いから、まだ会えるはず」
「うん」
私たちは昼ご飯の後片付けをすると、ゲートに入った。塔の二階に出ると一階に降りた。もう兵士はいなかった。通路の階段にもいないし、一層目ものぞくと誰もいなかった。二層に降りて、先まで進むとミサたちがいた。
「ミサ、メイア!」
「どうしたの? ユミ」
「今日は早く帰ることにしたの。それで、摘んできた薬草を渡そうと思って」
『え!?』
「ほら、珍しい薬草が取れたよ。咳止めと鎮静剤の薬草」
私は魔法袋から、薬草を取り出した。
「ホントだ! すごい。もらっていいの!?」
「うん。今日もいろいろ取れたから」
「そうだ。回復キャンディをあげるよ」
『え!?』
ルイスが言ったので、私はキャンディを取り出してメイアに渡した。メイアは驚いて、珍しそうにキャンディを見つめていた。その姿を見て、ルイスはほほえんだ。
「何かあったときに役立つと思う」
「ありがとう! 良かったね」
「うん! ありがとう」
ミサが先にお礼を言った。ミサは感動して目を潤ませていた。——ミサもメイアも、前より表情が豊かになった。
「じゃあね」
「うん。二人ともありがとう!」
「ありがとう」
私たちは二人と別れて、協会に向かった。
「ルイスもキャンディをあげるとは思わなかった」
「あはは、メイアがまだ小さいからね」
一歳しか違わないけど、メイアは小柄だから。ふと、聞いてみた。
「……ルイスにも兄弟がいるの?」
「うん、弟がいるよ」
「私は、兄と妹がいるよ。二人とも農業に向いてるから、実家を手伝ってる」
「そうなんだ。うちの弟は六歳で、まだ小さいよ」
協会に入ると相変わらずおじさんたちが休憩していた。




