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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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1、勇者が来た!

「ユミンス、できたパンを運んでくれ」

「はい」


 私は店長のトムソンさんに声をかけられると、パンをトレーに乗せ、厨房を出た。店頭の棚に置く。


「今日はユミと働けてうれしいわ」


 カウンターからナンシーがにっこりとほほえんだ。ナンシーは私と同じ十四歳。ぽっちゃり目のおっとりした女の子で、子供寮の部屋のお向かいさんだ。

 私は仕事派遣で、人手が足りないところの手伝いをしている。今日は、ナンシーの働くジョンソンパンだ。ナンシーがトムソンさんに紹介して、私を指名してくれたのだ! ジョンソンはトムソンさんの名字だ。


「私もナンシーがいるから楽しいよ」

「ずっと同じところで働けたらいいのに」

「そうだね」


 でも、今日は休んでいるトムソンさんの奥さん、ルラさんの代わりだ。スモックに三角巾を付けて、トムソンさんの手伝いをしている。普段はナンシーが厨房の手伝いをして、ルラさんがお店担当だった。


 ここカルク国では、働くのは原則十四歳から。それ以下で働く必要がある子と、仕事が決まっていない子は、仕事派遣所に登録すれば仕事がもらえる。


 学校は六年間は行くことになっている。初等部は読み書き三年、中等部は歴史、数学、生活ルール三年、それ以上は自由進路だ。

 私は学校の中等部を卒業して、家の小麦畑を手伝っていたけど、思ったより体力がなかった。二歳年下の妹のほうが力持ちだ……。お母さんに、


「街で働く方がいいんじゃない」


 と言われて、十四歳になってから一番近くのヒルトの街に一人で引っ越してきた。ヒルトの街は国の北側にあり、比較的気候が穏やかで暮らしやすい、田舎の地方都市だ。


 今は仕事派遣所に登録して、固定で雇ってもらえるところを探している。働いてみて、どの仕事も大変だなと思った。合いそうなところはすでに埋まっていて、私は出遅れていた。


 今日の仕事が終わり、私は日雇いの分の給料を受け取った。残ったパンももらえた。いつもはナンシーがパンを分けてくれる。

 ナンシーと二人で店を出た。ナンシーは両手を広げて軽やかに歩き出した。


「楽しかった!」

「うん、いい店だね」

「でしょ」


 ナンシーは将来パン屋になるつもりだ。もう将来のことを考えていてえらいな。ジョンソンさんご夫婦は子供がいないから、ナンシーを跡取りにと考えているそうだ。ナンシーの背中を見ながら考える。街に来てまだ二か月だけど、気持ちが焦る……。


 今のところ私にできるのは、簡単な家事ぐらい。このままだと、結婚して養ってもらう方がいいのかなって、考えてしまう。でも恋愛もまだしたことないし、子育ても大変そうだ……。


 この国は王様がしっかりしていて、とてもいい国だ。子供にも優しい。子供でも働くことや暮らす場所に困らないようになっている。大人になっても同じだ。

 このまま仕事派遣で、ずっと独身という手もある。最悪、修道院で働くというコースもある……。

 どんより考えていると、先を歩くナンシーが振り返った。


「ユミ、どうしたの?」

「なんでもない!」


 私は小走りにナンシーに追いついた。

 寮に帰ると管理人室にいる、管理人のララさんに二人で挨拶した。


『ただいま』

「お帰り。今日は一緒なんだね」

「うん。ナンシーの仕事先のパン屋で仕事だったんだ」

「そうなのかい」

「あ、パンをおすそ分けします」


 私は肩からさげたカバンから、パンの紙袋を取り出した。


「私も」


 ナンシーも取り出した。


「まあまあ、ありがとう」


 ララさんは喜んだ。お皿を持ってきたので、一個ずつ乗せた。ナンシーと顔を見合わせてにっこりした。


 私が暮らすのは、十四歳から成人前の十七歳が暮らす、街の子供寮だ。十八歳以上から二十四歳までの若年層寮とそれ以上の大人寮もある。年齢は十歳で区切られていて、同世代で過ごせるようになっていた。五十歳以上は、利用する人が少ないので同じ寮だ。

 ララさんが私を見て言った。


「そういえばね、ユミンスの(となり)に引っ越してくる子が決まったよ。二人と同じ年で、なんでも勇者らしいわ」

『勇者!?』

「勇者って何だろうね?」


 ララさんは顔に手を当てて考えていた。ナンシーも分からない顔をした。


「冒険者かな?」

「……そうだと思う」

「明日来るはずよ」


 ——すごい、勇者なんて! 実は私、ダンジョンオタクなんだ。なんだか心が躍った。

 ララさんと別れると、二人で部屋のある二階に上がった。ナンシーも興奮していた。


「新しい子、楽しみだね!」

「うん!」


 ナンシーと部屋の前で別れた。私は右隣の()き部屋を見てから、すぐに部屋に入るとニンマリとした。

 私がやってみたいこと、それは、ダンジョンに入ることだ!


 この国にはダンジョンがいくつか発生して、ダンジョンを中心に街が発展した。

 ダンジョンにはモンスターが自然発生し、そこから出ないように冒険者たちが狩りをする。モンスターから取れる魔鉱石やアイテムは貴重で高値で取引されるのだ。

 それを求めて冒険者たちがわんさか来る。


 私はダンジョンに行ったら魔法生物や魔法生物に、魔法生物に会ってみたい! 三回言った。

 とにかく不思議な生き物、モンスターに会ってみたいのだ。森にもいるのだが、私が暮らしていたところは広い農村地帯だったので、まだモンスターには会ったことがない。


 私はモンスターのことは本を読んで知っていた。ここに来てからも、図書館でダンジョンのことを調べた。モンスターやドロップアイテムのこと、どんな魔法が()くかも知っている。

 本当はダンジョンで冒険してみたい。でも、魔法は使えないし、体力もないし、薬草の知識もない。ダンジョンは危険だから、最初のF級からC級までは原則二人以上で入る決まりになっていた。足手まといを連れていく人は誰もいない……。


 冒険者たちは一攫千金を狙う荒くれ者たちで、無法者も多い。ダンジョンの中は諍いが絶えず、冒険者の犯罪も多いと聞いたから、私が行くには危険すぎる。

 前に、冒険者協会で買取アイテムの仕分けの仕事をしていたので、協会には行ったことがある。受付は騒がしく、担当のお姉さんも大変そうだった。


 勇者って言うからには、アタッカータイプなんだな。どんな子だろ? ダンジョンの話が聞けるかもしれない。そう思うとうれしくて、明日が楽しみだった。


 私は荷物を置くと干した洗濯物を片付けて、スープを作った。今日もらったチーズの入ったパンを夕ご飯に食べた。



 翌朝、仕事派遣所に向かった。続きの仕事の時は直接現場に行くけど、それ以外は毎朝そこで仕事が割り振られる。大人も子供も同じ場所だ。朝から混み合って、みんな二列に並んでいた。受付は、帽子をかぶった制服姿のお姉さんが対応してくれる。


「ユミンスは、今日タッカーさんのところで四歳の男の子の子守だよ」

「はい」


 地図を書いたメモをもらう。妹がいたから子守は得意だ。

 勤務時間は、子供は十七時までと決まっている。今日は終わったら、すぐ帰らなきゃ!



 仕事が終わって、走って真っ直ぐ寮に帰った。途中でナンシーと会った。二人でニコニコしながら走って帰った。

 寮に()くとララさんに挨拶をする。


『ただいま』

「お帰り。今日も一緒だね」

「帰りに会ったの」


 私が答えた。ナンシーはお隣さんのことを聞いた。


「もう来てるかな?」

「ああ、来てるよ。紹介しようね」


 ララさんが二階まで一緒に来てくれた。ララさんが隣の部屋をノックし、私たちは後ろで待った。


「ララだよ。隣と斜め向かいの部屋の子を紹介するよ」

「はい」


 男の子の声がした。中から、黒髪の男の子が出てきた。


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