私が聖女でいいのでしょうか 上
コツ、コツ、コツ___。
先行する彼と私の足音だけが渡り廊下に響いていた。
「アルデンヌ家のお嬢様だ」
凝った装飾が施された大きな扉のまえで彼は扉の警護をしていた男に声をかける。
護衛の男は、私に対して礼儀正しく頭を下げて、扉を開けた。
先ほどの部屋よりもさらに豪華な部屋だった。
暖炉には、パチパチとあたたかそうな火がかかっており、厚い絨毯が床を覆っている。
中央の奥の方には____
いまだにマントをきてフードまで被っているが、先ほどの長身の男性が腰掛けており、右にはザンク、左には誰かわからない人が控えている。
とうとう私はザンクに告発されてしまったということだろうか。
ザンクとは信頼関係を結べつつあったと思っていたので結構堪える。
私をここに連れてきた使いの人が私に椅子を勧めたので、私は素直に腰掛けることにする。
相変わらず静かにこちらを見つめる深みのある目を見つめる。
(それとも引き取ってくださる方なのかしら? おめでとう、セレナ!!)
ローリエの言葉を思い出して、私は一大決心をする。
「___ところで....」
「お断りさせていただきます!!!!」
先手必勝である。こういうのは思い切りが大事なのだ。
私は一気にまくしたてる。
「せっかくのお話ではありますが、私はアルデンヌ家から追い出された身に過ぎません。実
家との関係を深めるためだとしたら私では意味がありません。
たとえアルデンヌ家との繋がりを求めているわけではないとしましても、私は日陰者になる気は全くあ
りませんので、お断りします!せっかく助けていただいたところを申し訳ありません!」
ここまで一息で言ってはみたが聞き入れてはくれるだろうか。
ちらり、と右のザンクをみやると、なんだかうなだれたような表情でガックリしている。
なにか違ったのだろうか?
表情を変えているのはザンクだけで、左の人は全く表情をかえていない。
クッと笑いをこらえるような音がして、中央の彼がサッとフードを外した。濃い紺色の髪と赤い目が露わになる。どこぞの王様のように貫禄がある態度だ。
私は笑わられたことに対してむっとしてちょっとにらみつける。
「おっと、これは悪かった。すこしおもしろくてな。
初めましてというべきか、久しいというべきか....。まあ覚えていないだろう。初めてお目にかかる。
私はリヒト=ネクロン。まあいまのところは....王太子だ」
少し面白そうに微笑む彼は、私と似たような顔立ちをしている。つまりフェルシア皇国系。
社交を全くしていない私でも家の人たちが話していたことは何度か耳にした。
30年ほど前、ここ、エマニュエル王国と隣国フェルシア皇国の仲はそんなに悪くなかった。
友好の印として前王妃が現国王に輿入れしてきたが、フェルシア皇国の皇家内の争いによって傍系皇族に取って代わられる。
新しきフェルシア皇帝はエマニュエル王国に対抗的であり、友好政策を一方的にストップしてしまった。それに加え、戦争を仕掛けてきたこともあり、今では敵国になっている。
そんな中、前王妃は敵国の皇女として王国内の批判を浴びるようになり、幽閉されたまま亡くなった。
前王妃の息子で第一王子のリヒト=ネクロンが次期国王になることに対しては主要貴族たちが議論をいまだに続けている。
「ザンクを通じてある程度は聞いてはいたが....聞いていた通りの破天荒だな。
そうそう、こちらは馴染みであろうザンク=ランディン。こちらはザンクの父で我が側近、ロウズ=ラ
ンディン。そしてそなたのうしろで控えているのが、ヒルト=マルセル」
そこまでは理解した私に王太子は膨大な情報を畳み掛けてきた。
長くなりそうなのでここで切らせていただきます!
この度はこの作品に目を通していただきありがとうございます!!
さて、最近も忙しくなかなか更新できない日々が続きましたが、皆様のいいねやブックマークのおかげで創作欲が維持できております。ほんとうにありがとうございます!




