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綿毛のように遠くまで  作者: かけらあつめ


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さいしょ

「落ちたよ」

隣の席の××くんが消しゴムを拾ってくれた。


「あ、ありがとう」


ただ、お礼を言っただけなのに。

そう、お礼を言っただけなのに。


「『あ、ありがとう』だってさ、きもちわる」


どもってしまったのが良くなかったんだってさ。

周りの男の子たちと笑いながらそう言ってきた。


幼い私にとってはその言葉が棘のように心に刺さって、抜き方がわからなかった。



家に帰ったらお父さんとお母さんの喧嘩してるからいたくない。


学校ではいい子にしていたら褒めてくれる先生がいるから好き。


でも、学校で話したらまたきもちわるいって言われるかもしれない。


誰に頼ったらいいのかな。



どうしたらいいのかわからなくて帰ってお母さんにあたっちゃった。


わがまま言いすぎて物投げられた。


これ以上言ったらだめって気がしたけれど止まらなかった。


泣かせちゃった。

そんなつもりなかったの。

この感情をどうしたらいいかわからなくて苦しくて助けて欲しかった。


大丈夫だよ。辛かったねって抱きしめて欲しかっただけなんだ。


これじゃお母さんに言えないね。

そしたらこの言葉はどうしたらいいのかな。


嫌われたくない。

好かれたい。


そっか。言わなきゃいいんだ。

ぐっとぐっと心に押し込めて。


大丈夫って鍵をかけよう。


誰も抱きしめてくれないなら自分で抱きしめたらいい。


大丈夫。大丈夫だよ。




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