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花嫁に逃げられた侯爵と花売り娘、辺境で無双する  作者: ユーコ
第一章 花嫁に逃げられた花婿と花売り娘

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17/20

17.最初の成果

 今回の魔境探索隊はオズワルドを含め十名。

 全員、疲れた様子だが、自力でしっかりと歩いている。怪我人はいないようでリリはホッとしたが。


「リリ様」

 探索隊員の一人が済まなそうにリリに空のポーション瓶を差し出した。

「頂いた瓶は全て使い切ってしまいました。申し訳ありません」

 リリは一人頭十本の上級回復ポーションを渡したのだが、その全てを使い切ったようだ。

 リリはきっぱり言った。

「ポーションはまた作ればいいです。皆さんが無事で本当に良かった」


 魔境内では落ち着いて食事を取れなかったそうで、彼らはまず食事を所望した。

 料理人があわてて昼のシチューの残りとパンを持って来る。


 シチューを食べ始めたオズワルにをリリはとりあえずねぎらいの言葉をかけた。

「閣下、お疲れ様です」

「目的は達成した。手を出したまえ」

 オズワルドは片手でパンを掴みながら、もう片方の手でポケットをまさぐった。

 促されて、リリは両手を出す。オズワルドはリリの手のひらにポトポトと三つの緑色の魔石を落とした。

「あ、魔石」

「君の予想通り、木の近くや茂みにあった。緑はこれだけだ。赤は十個ほど手に入った」


 緑色の魔石を見て、リリよりアンドリュー達の方が喜んだ。

「リリ様、緑の魔石が手に入りましたよ!」

「これであの魔法具が動かせます!」


 彼らの声を聞いて、オズワルドは不審そうに眉を上げた。

「あの『魔法具』?」

「その話はおいおい。で、閣下、中はどうでしょうか?」


 リリの質問にオズワルドは食事の手を止め、虚空を見上げると、魔境内部の様子を語った。

「中は、想像以上に霧が濃かった」

 館から見ても、魔境一帯には常時濃い霧が立ち込めている。その霧は、現地に行くと予想よりも濃く立ち込めていた。

 不気味な霧のせいで、ほんの一メートル先も見えない。

 だが冒険者の集落までの道は地図が残されており、距離は十キロほどと遠くない。

 太陽の位置を常に確認してなんとか辿り着いたそうだ。


「ただ、道は思ったよりは悪くなかった」

 そう言うと、オズワルドはビールを飲み干した。

「そうでしたね」

 同行したイーデン・イーリーも同意のようだ。

「ぬかるみなどはなく、平坦でした。馬車が使えそうです」

 魔境は不毛の大地なのであの黒い木以外の植物はほとんど生えてない。

 そのため、足を取られずに済んだというわけだ。


「魔獣はいるにはいたが、始めて戦う相手ではないからな。周辺部で見る奴らよりは大型だったが、なんとかはなった。ただ、今回僕達は単体の魔獣としか戦ってない。群れで来られると危ういだろうな」

 オズワルドは憎々しげにそう言いい、追加の一品、ジャガイモとベーコンとインゲンのバター炒めをほおばる。


「集落の様子はどうでしたか?」

「全てが破壊されていた」

 オズワルドはしかめっ面で首を横に振ってみせた。

「一から作り直さないと使い物にならないようです。ただ、井戸は無事でした」

 横からイーデンが補足した。

「それは朗報ですね」


 リリがそう言うと、「そうかね」とオズワルドは嫌みったらしい目でリリを睨んだ。

「建物を作り直すなら、向こうに大量の資材を運びこまねばならないだろう。作ったところで集落を維持するには多数の兵力が必要だ」

「集落を守る防壁も作らねばなりません」

 イーデンも弱り果てたようにため息を吐く。

 それを聞いてリリは少し考え込んだ。

「防壁ねぇ……」


 オズワルドはあっという間に食事を食べ終えると、リリの方を向いた。

「それはそうと、植物を持ち帰った。部下から受け取りたまえ。僕はもう休む」


 そう言い放つと、オズワルドは立ち上がり、さっさと食堂を後にした。

 リリはその背中を見送り、呟いた。

「……お疲れなんですかね?」

「とても疲れたと思います。大佐がいないと我々は皆今頃、あの世行きですよ」

 イーデンは断言した。


 その後で、イーデンは奇妙なことを呟いた。

「大佐は例のあの姿に二度も……」

「イーデン!」

 アンドリューが鋭い声で制止した。

 イーデンはハッとした様子でリリを見る。


「……何でもありません。我々も、休ませていただきます」


 そして他の捜索隊員もそそくさと食堂を出て行った。






 ***


 リリが受け取ったのは、一行が探してきた『植物らしきもの』だ。

 オズワルド達は、目に付いたものはとりあえず採ってきたようだ。

 根っこが付いている草が数種類の他に、実も葉も付いていない枯れた枝が数本と、魔獣の糞の近くに生えていたという丸い物体。

「こんなのしかなくて……」


 捜索部隊の隊員は恐縮しつつリリに差し出したが、

「ありがとうございます!」

 予想に反してリリは大喜びで受け取った。


「それで、中は食べられそうなものは何かありました?」

 リリの質問に隊員は一様に首を横に振る。

「いいえ、食べ物は何も見つけられませんでした」

「木もあの黒い木以外はほとんど生えていない状態でした」


 まさに不毛の大地に相応しい場所だったようだ。




『生命維持』の魔法具はオズワルドが採取してきた緑色の魔石をはめ込んだのち、重体という部下の元に移送された。


 ぶっつけ本番だが、領主の館には現在、具合の悪い者はいないし、館の外の人間で試すわけにはいかないのだから仕方ない。

 何より――時間がない。


 リリは病人が王都近くの町に住むと聞いて、魔法具移送の兵士に手紙を託した。

「これをラカンタル教会の神父様に渡してください」

「内容を伺ってよろしいでしょうか?」

「もしその患者さんがルナ種ならもしかしたらクリンプス領で療養した方がいいかもしれません。神父様ならソル種かルナ種か、判定出来ます。神父様ならきっと力になってくださるはずです」

 とリリは理由を言った。

 兵士は深く頷いて手紙を胸ポケットに大事そうにしまった。

「……では必ずお渡しします」


 オズワルドが魔境で手に入れた赤の魔石は、今まで手に入れたものより大きかったが、ガーゴイルを作動させる大きさには足りてない。

 そのため魔石は取っておくことになった。



 諸々の後始末を追えたリリは、ニヤリと笑って腕まくりする。


「さて、やりますか」

 ここからが花屋のリリの腕の見せ所である。


第一章終了です。

続いて第二章からは魔境探索が始まります。

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