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二つの神物が共鳴している!?
やはり、これは一つでは意味を成さないようだ。
ティターニアの持っている指輪と、ガゼルの持つ
ネックレスを手に取ると、お互い惹かれ合うよう
に光り、そして近づけるとガゼルの持つ神物がま
るで別の物のように綺麗に輝いていたのだった。
「これは一体……」
「二つで一つのようですね」
「では、これは皇女様が持っていた方が…」
「それはダメよ。ガゼル様には絶対に必要な物な
のですから。肌身離さず持っていてください」
今は言えない。
でも、ガゼルが持っていなければならない。
これだけは本当に必要な事だった。
ティターニア一行は、安全の確保を優先して帰路
についた。
多くの影の尖兵と戦う事になったが、祭壇の浄化
によって、影は今はなりを潜めている。
これで、もしかしたらセイクリット公国の滅亡は
防げたのかもしれない。
この時のティターニアはそんな安易な考えをして
いたのだった。
ーこの世界は終焉に近づいている。
世界が終わる頃、どこからともなく影が湧き、全
てを飲み込んでいくだろう。ー
何かの一節で見た気がする。
目を覚ますと、フルール領のデリア伯爵夫人の
屋敷の一室だった。
一緒に来た黒の騎士団も一緒に泊めて貰ったら
しく、食事の時に顔を合わせる事になった。
豪華とまでは言えないが、地元の幸がふんだん
に使われて料理は珍しく、美味しかった。
「このあたりでは海で取れる食材が新鮮で美味
しいですわね」
「えぇ、皇女様に気に入ってもらえれば嬉しい
わ。港の付近なので、朝に水揚げされた海鮮
類が多く使われるのよ」
デリア夫人は自慢げに説明してくれた。
川魚しか食べた事のないガゼル達は少し戸惑い
ながら食事に手を伸ばす。
「昨日は、最近港で見かける影の被害を見て来
てくれたのでしょう?皇女様みずから行くの
は危ないですわ」
「いえ、もう多分片付いたと思いますわ。デリ
ア夫人、もし何かあったらすぐに教えて下さ
い、私でよければ力になりますわ」
ティターニアはデリアを味方につけるといい関係
を築こうと考えたのだった。
デリア伯爵夫人とて、完全に善人では無い。
イクシルート・フルールを推したい気持ちがない
わけはない。
誰もが、皇女の伴侶の座を狙っているのだ。
前のようにシグルドに一途というわけではなくな
ったせいか余計に早くアピールした方が有利では
あった。
しかし、本当にシグルドを諦めたのか?
本当に、性格が変わったのか?
誰もが知りたがる事だった。
「今日は街を息子が案内しますわ。よかったら楽
しんでいってください」
「はい、ぜひ」
騎士団は警護の為に一緒に同行することとなった。
ガゼルは目の前で、エスコートされるティターニ
アを眺めながら複雑な気分になるのだった。




