好感度爆上げ作戦
ティターニアはパーティー会場から抜け出すと、
すぐに部屋に駆け込み着替えた。
会場ではしっかりみんなの前でいた事を主張した
し、会場で兄のアルベルトとも会話した。
これで皇女としての役目は果たしたはずだ。
会場を出る前に料理長に食事を包んでもらって
おいた。
着替え終わると、丁度包まれた食事が運ばれて
来たのだった。
こんな夜遅くでも、数名の騎士はパーティー会
場のそばで警護や、訓練に精を出している。
それは大抵が参加できない様な身分の低い騎士
達なのだ。
そう思うとせめて料理だけでもと、差し入れを
渡しに回る事にしたのだった。
今まで、最悪な噂が出回っていたせいで誰から
も見向きされなかったが、今から変えていけば
いい。
ティターニアは会場を抜け出した時にアルベル
トに見られていたなど、気づきもせずひたすら
前だけを見て歩いていた。
歩き続けるといつのまにか、黒の騎士団寄宿舎
まで来た。
ゴクリと息を呑む。
「よしっ……あれ?訓練場の方が明るいわね…」
惹かれる様に足がそちらに向かう。
そこにはガゼルをはじめ、そばにいるオルフェン
や、エミール、ビオーナ達がまだ訓練をしていた。
「ガゼル様……」
ドアが開く音で、こちらに視線が向くのが分かっ
た。
「こ…皇女様……」
「皇女様〜!今日はお兄様のアルベルト様の祝賀
会だったのでは?」
すぐに気がついたビオーナが駆け寄ってきた。
実に純粋で可愛らしい。
「えぇ、そうだけど…抜け出して来てしまったわ。
だってつまらなかったんだもの…」
そういうとバスケットに入れた差し入れを差し出
した。
「これ、会場ででた料理の一部よ。よかったら食
べて」
「わぁ〜!嬉しいです。私皇女様、大好きです!
勿論団長も、そう思っていますよ?ね〜団長?」
いきなり振られたガゼルは困った様な顔を浮かべ
ていた。
「今日はここまでだ!各自片付けしてからにしろ」
「えぇ〜!団長のケチ〜」
文句を言うビオーナをキッ睨むと、ガゼルは黙々
と片付けに入る。
また真新しいと言うものあったが、掃除が行き届
いているせいか散らかる事なく、綺麗に使われて
いた。
白の騎士団の訓練場や備品倉庫は時々メイド達の
掃除が必要なほどに荒れていたのを思い出すと、
どうにも笑えて来た。
こんなに違うものなのかと…。
「何がおかしい?」
「いえ、ガゼル様。綺麗に使ってるなぁ〜って、
傭兵ってこんなにきちんと片付けるものなの
ですか?」
「それは人ぞれぞれだろ?俺の部下で中途半端
は許さんがな」
訓練が終わると、床もしっかり拭き、汗などを
残さない程度にはしているようだった。
そう言えば、訓練前にも部屋内の訓練場は雑巾
掛けをしていた気がする。
外の訓練場では埃がたたない様に始めに水撒き
をしていた。
それに、魔法を使わないせいか地面が一気に凹
むことも少ない。
あらかた綺麗になると、ティターニアが持って
きたバスケットを開いた。
今日の料理は手で食べれる様にとパンで挟んだ
り、紙で包み食べやすく加工されていた。
料理長には感謝だった。
「んん〜〜〜!美味しい〜」
「よかったわね、ビオーナ、ここ付いてるわよ?」
齧り付いた拍子に頬にソースがついていた。
それを、指摘すると袖でぐりぐりと拭っていた。
やっぱり、傭兵出身だと食べ方も豪快だ。
それに引きかえ、ガゼルだけは違っていた。
確かに齧り付くのは一緒だが、食べ方が綺麗だ
った。
男爵といえど、貴族になった時に気をつけてい
るからなのだろうか?
この前の式典でガゼルを子爵にと言う話になっ
た。
これは大出世だった。
親が男爵だというのに、子供が子爵になるなど
あり得ない事だった。
その場合、普通は家名の方も子爵に統一される
事が多い。
だが、ガゼルはそれを選ばなかった。
自分だけが、家から抜けて、子爵になる事を選
んだのだった。




