皇位継承権
パーティーを終えて、しばらくは兄のアルベルト
の滞在が聞かされた。
てっきり、すぐにまた旅立つのかと思っていただ
けに、少し拍子抜けした気分だった。
コンコンッと軽いノックと、侍女の声が聞こえる。
「ティターニア皇女様、アルベルト殿下がおいで
です」
「通してちょうだい」
ティターニアが中から声を出すと、すぐにドアが
開き、中へと迎えられる。
今日も完璧なほどの金髪に整った顔立ち。
ティターニアに似た容姿でしっかりした胸板。
自信満々な笑みなどは、昔のティターニアを彷彿
とさせるほどだった。
朝からこんなイケメンを拝めるとは…。
しかし、今のティターニアの好みとはちょっと違
っていた。
もっと素朴な、努力家がいいのだ。
陰で頑張っているのに報われない。
それでも人の為にと必死でもがく、そんなガゼル
の様な人が推しなのだった。
「やぁ、妹よ。朝から悪いね!散歩でも行かない
かい?」
「えぇ。かまいませんわ。アルベルトお兄様は、
今日は忙しくはないのですか?」
「あぁ、大丈夫だ。しばらくはここで休養する事
になるかな…最近は何か変わった事はなかった
かい?」
何か言いたげな顔をしている。
これは、確実にシグルドの事だろう。
もしかしたら先にデボラやラジーナから何か聞い
ているかもしれない。
が、あえて聞いてくると言う事は、事実を確かめ
ておきたいのだろう。
「お兄様の言いたい事はなんですの?」
「別に言いたい事はないよ。ただ妹と散歩したい
なって思っただけだよ。昔は色々と忙しく相手
もできなかったしね」
「別にかまいませんわ。」
外へ出ると庭のバラ園へと足を向けた。
咲き乱れる花々を見ながら近くのテラスへと向か
った。
先にメイドにでも言っておいたのだろうか?
ティーカップと紅茶、お菓子のセットが用意され
ていた。
「ここで休もうか?」
「そうね、せっかく準備してもらったんですもの
ね、厚意を無碍にはできないわね」
「へぇ〜、ティターニアにもそういう考えが芽生
えたんだね?お父様が他国の来賓時に参加させ
ようって言ったのが頷けるよ」
「……」
そんな事を話していたのか?
内心、参加したくはなかった。
そもそも、ここはゲームの世界で、主人公目線で
しか知識がないのだ。
それ以上に詳しい設定など、分かるわけはない。
時に国との外交など、絶対に出たくはなかった。
我関せずでありたい。
「それはお兄様がやっている事でしょ?私が口を
挟むことではないのでは?」
「そんな事はないよ?俺はただの妾の子供だから
ね。正妻の子供であるティターニアが正統後継
者なのだからね」
この世界の設定的に、次期皇帝陛下の座はティタ
ーニアの旦那になる者に限られていると言っても
過言ではなかった。
そして、聖女であるこの物語の主人公はマリアで
ある。
彼女の攻略対象は勿論、アルベルト皇子をはじめ
白の騎士団のシグルド、副団長のテオバルド、緑
の騎士団団長、セルシオ副団長のペニー、そして
まだ出て来ていない商人の男性だ。
平民から神殿へ行き、苦労しながらも聖女として
覚醒して立派な聖女となる。
そして、ティターニアの想い人であるシグルドル
ートへ進むと、皇妃の座に着くことになる。
その時は、ティターニアは牢獄されるか、殺され
る事が多い。
こんなの絶対に避けなければならないルートだ。




