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突然の訪問

思い出した記憶を辿るように考えを巡らす。


マリアからの視点では、さほど苦にならない事で

も、ティターニア視点ではそうはいかない。


マリアを主に護っているのはこの騎士団の中でも

魔法に特化した騎士団員達だ。


それに比べると、黒の騎士団は戦力的に実戦経験

は豊富だが、近距離専門が多い。


遠距離は弓という物理攻撃を主とした武器しかな

い。


火力の程は知れているのだ。

それでも、誰にも見向きされなかった皇女が、今

は国の為に必死になっているというのもおかしな

話だった。


「こんなのティターニアじゃないわね……」


ティターニア・ルーウィンという人物だったら、

絶対にこんな事考えたりなんてしなかった。


誰を犠牲にしようとも、シグルドさえそばにい

てくれるのなら、どうでもいいと思うだろう。


だけど、今のティターニアは違う。


誰も犠牲になどなってほしくない。

それどころか、自分さえも追放や、反逆罪で殺

されたくはなかった。


その為の措置として、シグルドの評判を地に落

とす事が必要だったのだ。


「あぁ……つまらないわ……」


飲みすぎたせいか、足元がおぼつかない。


「なんで来ないのよ……ばかっ……」


思い出される暴言を吐くシーンには、いつだっ

て黙ったままじっと耐えるガゼルの姿があった。


「もう、いいわ!私から行ってやるわよ」


よろめきながらも、立ち上がると裏口へと出て

いく。


黒の騎士団宿舎まで来ると、硬いモノがぶつかる

音が響いてきていた。


音の方に進むと、ちょうどガゼルは手を止めて汗

を吹いているところだった。


「あぁーーーー!みーつけたっ!」


ティターニア皇女は大声を上げるとすかさずガゼ

ルに向かって飛びついたのだった。


咄嗟のことで、焦るガゼルにティターニアは満面

の笑みを向けた。


「今日はダンス踊る人がいなかったじゃない!

 それもこれも貴方のせいよ!なんで…なんで

 来ないのよ………」

「なんでって…俺は平民だし……」

「んーもう、ひどいわ。許さないんだからっ」


酒に酔った状態でガゼルの顔をギュッっと両

手で覆うと、チュッと唇を重ねたのだった。


顔を真っ赤にさせたガゼルを見ると、少しスッ

キリした気分になった。


にヘら〜とした顔で見上げると、こてんっと

ガゼルの腕の中で意識を失ってしまったのだ

った。


「ティターニア……皇女……さま?……」

「すぅ〜〜〜」

「………」


慌てて受け止めると、腕の中では規則正しい

寝息に驚くと、力が抜け落ちていく。


落とさないように抱き抱えるとそのままティ

ターニアの宮殿へと運んだのだった。


入口に控えていた女性達に引き渡すと、中か

ら専属の執事が出てきて、彼女を連れていっ

たのだった。


ガゼルはハッと自分の姿を思い出すと、少し

恥ずかしくなった。


「汗臭かったかな……?」


ずっと剣の訓練をしていたせいか服もラフな

ものだったし、綺麗なドレスで着飾った皇女と

は全くもって不似合いな格好だった。


まだ執事の方がしっかり着こなしている気がし

たのだった。


「はぁ〜……戻って寝るか」


今日は汗を流して寝よう。

そう考えると少し遠回りをして走って帰ったの

だった。


腕にはまだほのかに花の香りが残っていた。

それを振り切るように、がむしゃらに走り込む

とさっぱり流して忘れる事にしたのだった。

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