トート卿の認知
その日は騎士団が一同に介して陛下への謁見が
行われていた。
「この度、遠征ご苦労であった……今回の成果
は実に大きい。そしてその結果から次の調査
場所が決まり、今回は黒の騎士団に出兵して
貰う事が決まった。我が娘も同行するので、
安全には気を使って欲しい。これから、危険
な事が多いと思うが……………」
長々と述べられる言葉に飽き飽きしてくる。
ティターニア皇女は静かに聞いてはいたが、次
第に欠伸が出てくる。
騎士団のみんなは黙って真剣に聞いている。
「長い話って嫌になっちゃう……」
こういう時は女性は楽だった。
扇子を広げると中では大欠伸をしても誰も気づ
かないのだ。
結局、小1時間程話されて居たのだった。
話の長い上司の様だった。
よく嫌われないものだと思ってしまうが、そこ
はゲームの世界。
誰も退屈そうにはして居なかった。
そして、数日が経った。
ガゼルの家に再びトート卿からの信書が届いた
のだった。
次の遠征出発まで日がないので、返事をする事
なく放置しておいたのだが、それが悪かったら
しい。
かなりお怒りなのか、書き殴った文字で…
『今すぐに来い』
と書かれて居た。
「はぁ〜……今更なんなんだ……」
いつもなら家の集まりにも呼ばれる事はないし
この前の誕生日も祝って貰った事など一度もな
い。
騎士団の給金も、半分は父親が受け取って行っ
てしまうので、生活費と防具と剣のメンテナン
スでほとんどが消えてしまっているのが現状だ
った。
面倒くさそうに立ち上がると、馬を取りに行く。
ガゼルは馬に手を伸ばすと、嬉しいのか腕に頬
を寄せてきた。
「本当は行きたくはないが……頼むぞ」
擦り寄ってくるのを優しく撫でてやると、ふわ
りとと飛び乗ると跨った。
そして勢いよく飛び出したのだった。
向かうは本邸。
トート卿のいる屋敷だった。
昔、ガゼルを追い出したあの屋敷だ。
二度と来たくはなかったが、追い出されてから
一度だけ訪れた事がある。
それは、騎士団に入った時にトート卿の席に入
る為に頭を下げに来たのだった。
トート卿には妻が一人と妾が3人いる。
妻との間に一人息子がおり、妾の間にも一人づ
つ子供を設けて居た。
貴族だったら当たり前の事だった。
トート卿は紅みがかった髪に真紅の瞳を持つ。
その子供達も同様の容姿を受け継いでいた。
そして、火魔法が得意だった。
ただ一人を除いては……。
そんな中、ガゼルだけが母親の血を色濃く受け
ており、黒い髪をしていた。
そのせいで、認知されなかったのだ。
兄弟にもバカにされて、よく虐められた。
しかし、騎士団は階級を重んじていた。
だから団長になる時に、爵位が必要で父親の
申し出を受けて、トート卿を名乗る書類にサ
インする為にここに訪れたのだった。




