真実と報告 4
行きと違って帰り道はすんなりと王都へと帰還で
きたのだった。
数日前に帰宅時、襲ってきた魔物を何頭か仕留め
たせいか、数が少なくなっているというもの事実
としてあるのだが、実際の原因は川の上流にあっ
た例の瀕死の魔物が原因でもあった。
アレが他所から魔物を引き寄せ、しかも近くに村
や街を襲っていた影の尖兵の原因に近かったのだ
ろう。
そして、今回は生きていたというのが大きい。
なぜなら、死体が回収できた事が大きいからだ。
これを研究機関に送って調査させれば何か分かる
かもしれない。
それを期待して先行して帰って行く部下に持たせ
たのだった。
まだ皇女やガゼル一行が帰宅途中という頃、王都
では式典が催されていた。
今回の遠征で持ち帰った情報は今までにないくら
いに価値があるものだと判断されたからだった。
シグルド達が率いる白の騎士団は近隣の街へ行っ
た。
そこでは、最近遠くの森から来たという冒険者の
話を聞けた。
『夜になると獣の叫び声が盛んになって、夜の狩
りは控えているんだ』
『見た目おっかない狼だが、倒しても霧のように
消えちまって魔石すら出なかったよ』
それを考えると、王都近郊にはまだ影の尖兵が潜
んでいる事が伺えた。
セルシオ率いる緑の騎士団の方では、手足が黒ず
む病が発生していた。
人数も少なく手足などの末端を切り落とす事で身
体への侵食を防げたと報告が上がった。
そして問題は、まだ戻ってきていない黒の騎士団
の方だった。
調査団と部下半数以上が戻ってきた結果、報告書
には村の半数以上が川の水のよって手足が黒ずみ。
全身にまで到達している者が多いとあった。
実際に見てきた調査団員からもそう報告が上がっ
ていた。
それをガゼルの指示で皇女が解決して、無事全員
が完治したとある。
そしてそれだけではなく、川の濁りの原因と、黒
ずむ原因を究明できたとあったのだ。
その証拠として、影の尖兵になった魔物の遺骨と
皮膚片と色の変わった魔石などが持ち帰られたの
だった。
これは大きな功績と言える。
ただ、問題は団長がまだ戻って来ていないという
事だった。
王からの勲章などの授与には代理で部下に渡す事
は認められていない。
本人がいない場合、他の騎士団の団長が代わりに
栄誉を受ける事になっているのである。
前にガゼルがあげた功績をシグルドの白の騎士団
が奪ったような形になったのも、ガゼルが前線で
大怪我して授与式に出られなかったからでもあっ
た。
そして今回も、そうなる事となった。
盛大な宴が催されて、国民全員に放送される。
大きな広場全域にその場の映像と声が流されるの
だ。
いつか、誰も傷つかない、そんな国にすると誓う
シグルドの誓いから始まり、王から直々に渡され
る勲章。
侯爵から、今回の功績を鑑みて与えられる公爵と
いう爵位。
国王に継ぐ一番高い貴族の爵位だった。
顔もよし、地位もよし。
男としてはこれほどの地位に若くしてつく者は滅
多に居ないだろう。
しかもそれが王族の一人娘に見そめられていると
いうのだから、次期国王とされえ噂されていたの
だった。
それは国民間の噂であって、城内ではまた違った
話が囁かれていた。
『公爵の地位について、王族ですら口出しできな
い地位についたからこそ、皇女を蔑ろにして傷
つけ、女を弄んでいる』
………と。




