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問題の溜池  

陽が落ちる前には村に戻りたかった。


小雨が降り出すと、視界が悪くなる。


「ここまでか……おい、ティターニア皇女と一緒

 に村に戻れ!」

「ですが、団長は……」

「俺はこのまま先に行く。まずは下見だから一人

 でも問題ない」

「嫌です!私も最後まで一緒にいきます」

「皇女様、我儘もいい加減に…」

「私がいなければ原因が分かっても、元には戻せ

 ませんよ?それでも追い返すのですか?」

「それは……」


確かに、ここに来てから皇女の活躍はめざましい

ものがあった。


だが、それでも危険には晒せない。

もし皇女に何かあったら、騎士団全員が生きた心

地がしないからだ。


それでもやる気の皇女を止める事はできなかった。


「危なくなったらすぐに引き返しますからね」

「はい…ガゼル様が護ってくれるって信じてます」

「買い被りすぎだ……まぁ、そうなるように努力し 

 よう」


我が命に変えても護るとは言ってはくれないが、口

下な推しはこれでも十分譲歩しているのだ。


ティターニアにはただ、ガゼルのそばにいられる

時間を取られたくないと考えていただけだった。


薄暗くなる前に、溜池に辿りつくと、そこには大

きな魔物の死体が串刺しになっていた。


死んでいるのかとも思ったが、僅かに息をしてい

た。


だが、誰がこんな事をしたのか……。


赤黒いのはこの魔物の血が混じったせいだったの

だ。

そして身体全体を覆うような影が、影の尖兵との

戦闘で付いた傷だと分かる。


「これは……どうしますか?」

「まずは溜池から出すのが先だろうな……」

「ですよね?泳いであそこまでいきます?」

「いや、そんな事はしなくてもいいだろう」


ガゼルは一歩引くと、オーラを貯める。

オーラとは魔法と違い、剣士が習得するスキルの

ようなものだった。


剣気を飛ばし相手を切り裂く。

魔法ほど便利ではないが、剣士の高みに到達した

者だけが身につける事が出来るという。


オーラを貯めると一気に放つ。

溜池の中央で刺さったままの魔物は剣気を受けて

吹き飛ばされたのだった。


対岸の淵に転がると、自ら立ち上がった。

まだ動ける力があるようだった。


ゲームではもっと後に気がつくので、魔物は死に

黒い影となっていた。


が、今は違う。


生きているのだ。


ぼたぼたと血を垂れ流しながらこちらを伺ってい

る。


水源の浄化をしたくとも、このままではままなら

らない。


まずは完全に倒して水源から取り出す必要があっ

たからだ。


この村で、この状態ならもっと下流はどうなって

いるのだろう。


そもそも井戸もあるが、一般的には生活用水は川

からひかれている。


それに畑などの水も川の水なので、作物にも影響

が出ていてもおかしくはなかった。


「この川の下流にある村は……もしかして…」

「皇女殿下、下がってください。オルフェン!皇

 女様を安全な場所までっ!すぐに行け!」


大声で指示をすると、部下と共に駆け出して行っ

たのだった。


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