遠征先での問題 2
「ティターニア皇女は休んでいてくれ、あとの者
は今から森へいくぞ」
朝早くにガゼルが言い出した事だった。
「どうして私は居残りなのですか?」
「少し気になる事があるからだ、それに危険かも
しれないからな…」
「では、なおさら私も付いていきます。一緒にい
ればガゼル様が護ってくださるのでしょう?」
ニッコリと笑みを浮かべると、引く気はないと言
ったのだった。
ガゼルは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに険
しい顔付きになった。
「勝手にしろ!ただし…俺から離れるな!いいか?」
「はい。勿論ですわ」
推しと一緒に散歩♪
ティターニアは少し浮かれるようにはしゃいでい
た。
確か過去の回想で村の事は出てきていた。
黒死病で全員が亡くなり、ガゼルが去る頃には全
員に病が蔓延し、仕方なく撤収を余儀なくされた
とあった。
後に調査した結果、川の上流に仕掛けられたモノ
が原因だと判明されたのだった。
「水が原因なら上流に行くしかないですね?上流
というと溜池があったはずですよね?」
「よく知っているな?ここは川の上流に大きな池
があるんだ。そこの水がこの川へと流れてきて
いる」
山道を歩き続けて、もうかれこれ数時間は経った
だろうか、馬が行けるのは麓までで、それ以降は
歩くしかない。
「こ…こんなにきついなんて……」
「もう泣きごとですか?」
「そうじゃないけど……ちょっと休んでもいいん
じゃないかしらって事よ!」
「そうですね、まだ先が長いですが、ここで一旦
休憩にしましょう。各自警戒しながら休憩にす
る」
ガゼルが言うと、みんなが一斉に周りを警戒しな
がら身体を休めた。
ティターニアは、もうへとへとだったが、こんな
所で弱音を吐いて、推しに呆れられたくはなかっ
た。
横を流れる川の水を見ると濁っていて、飲みたい
とは思えなかった。
昨日も結局水は井戸からのを借りる事になった。
だが。それも残りわずかだという。
「これって魚も居ないし……本当に飲めないのか
しら?」
「皇女様、こんな赤黒い水を口にしては危険です」
「そうだけど……村の人が病になったのってこの
水のせいよね?だったら……」
そう言うと、コップに水を掬うと治癒と浄化をか
けた。
すると、キラキラと輝き、透明な水に戻っていっ
た。
「これは……一体何をしたんですか?」
「皇女様、すごいです!」
騎士団員達が騒ぐと、ガゼルもそれに気づいて側
にきていた。
「何をしたんですか?」
「この水だけど、治癒と浄化をかければ元に戻る
んです」
「浄化だけじゃダメなのか?」
「はい、浄化だけだと濾過するだけで、すぐに濁
ってしまうんです」
説明すると目の前で見せてみた。
「なるほど……では、飲み水だけでも確保はでき
ますか?」
「全部は無理だけど、樽に数杯ならなんとか…」
「おい、樽を持って来い。すぐに水を汲んで来い」
ガゼルの指示で部下の数名が背中に背負っていた
調査用の水汲み樽を下ろした。
そこに並々と水を入れた。
そこに目掛けてティターニアが魔法をかける。
真っさらな、透明な水が出来上がった。
最初匂いを嗅いだが、無臭だった。
ガゼルが一口飲むと、団員が驚くように反応して
いた。
ガゼルは決して部下を犠牲にはしない。
そんな性格なので部下からは慕われている。
「大丈夫そうだな……これをすぐに下の村に持っ
て行ってくれ」
「ですが調査が……」
「それは残りのメンバーでいい。」
「わかりました」
数名を置いて、樽を持った団員とその護衛を村へ
とももどらせたのだった。




