遠征予定地
予定の場所まであと1日という所で、怪しげな影を
見つけた。
一旦待機すると、数人で前の様子を見に行く。
「皇女様は後ろに…オルフェン、お前は皇女様から
絶対に離れるな!あとの者は俺に続け!」
少しして戦闘音が響いてきたが、静かになるとガ
ゼル達は戻ってきた。
「先へ進むぞ」
少し雲行きが怪しくなってきていた。
安全確保を図りながら進むと夕方にはやっと予定
の村に辿り着いたのだった。
「おぉーーー!騎士様だぁ!」
「聖女様も居られる!これで私達も助かっるわ」
「神のお導きだ!」
口々に称えるような歓声が上がった。
「うわぁ〜、あのお姉ちゃん綺麗……」
子供の一言が聞こえた。
ティターニアと視線が合うと、真っ赤になりなが
ら恥ずかしそうにしている。
「我らは黒の騎士団である。物資を持ってきた。
困ったことがあったら言って欲しい」
ガゼルが話しているのを横目に、ティターニアは
馬から降りると少年に駆け寄った。
「大丈夫?」
「お姉ちゃんがお母さんを助けてくれるの?」
「えぇ、どこにいるのかしら?」
「こっち……」
そういうと少年はティターニアの手を引くと村で
一番大きな家へと案内した。
中に入ると、そこには床に何人もの人が寝かされ
ていた。
「これは………」
手足が壊死して動けない者や、体が真っ暗っ黒に
なって動かない者までいた。
これは影の尖兵に傷を負わされた人がかかる病気
のようなものだった。
回復魔法で治るのだが、このような貧しい村では
教会に寄付してまで依頼をするのは無理だろう。
しかも働き手である若い男達がこの有様では村は
立ち行かない。
「待ってて、お姉ちゃんが治してあげるわ」
魔法なんて初めて使う。
でも、このティターニア皇女はシグルドにさえ固執
しなければ、腕は本物だったはずだ。
ゲームではコマンドを入れるだけだったが、現実は
どうなのだろう。
そう思いながら魔法を使う想像を膨らませた。
すると、思った事が現実になる。
手の先から暖かい何かが出ているのを感じた。
そして光が周りを包み、部屋にいた人々を包んで行
った。
部屋全体が小さな光の粒子に包まれる感覚がした。
その中で、床に寝かせられていた病人達が次々と、
自分の体に起きた事を驚くように実感していた。
そして泣き出す者まで出てきた。
「お母さーん!」
少年は母親に向かって走っていく。
さっきまで手足が黒ずみ顔色もごげ茶色になって
いた女性が、今では普通に起き上がり自分の手足
を不思議そうに眺めていた。
「まだ不調がある人はいますか?」
「聖女様だ」
「そうだ、聖女様だ!神はお見捨てにはならなか
った……」
「ありがとうございます」
皇女がこんなに感謝される事など今までなかった
だろう。
それがどうだろう。
正当な評価とはこうやって成り立っていくのだと
実感したのだった。




