遠征の準備 2
遠征に行くにあたって武器が新しく新調されたの
だった。
他の騎士団に比べて持っている武器も手入れはし
てあっても古い事に変わりはなかった。
せっかくなら全部新調しようと考えたティターニ
アの考えに誰も異議を唱える事など出来なかった。
「団長!今日から新しい武器が届くって本当です
か!」
「あぁ、皇女殿下が頼んでおいたらしい」
「うおぉーー!皇女殿下最高!絶対に生きて帰る
ぞぉーー!」
ガゼルの部下のエミールは喜ぶと新しく建設され
た倉庫へと受け取りに行った。
そこには色んな武器が並べてあった。
どれも新しく作られたもので、有名な鍛治職人に
よって作られたものである事が伺えた。
エミールが手に取ったのは弓だった。
剣も使うが、先に先行して先制を仕掛けるなら一
番優れているからだった。
古く使い古されたものだと飛距離もさることなが
ら攻撃力にも欠ける。
だが、今手に持っているものは、手に馴染む気が
した。
それでいてしなりもよく引いた時に手応えもしっ
かりあった。
貴族なら自分の獲物は家自体が用意する事が多い。
が、黒の騎士団では傭兵が多い為、安物でも使え
ればそれでいいと思う考えがあった。
自分の為だけに作られた武器など持っている者は
滅多にいない。
ガゼル・トート卿でさえも腰に下げている剣は
国からの支給品で、どこにでもある大量生産品
なのだった。
「団長ー!これすっごく手に馴染むんです!」
騎士団の中でも数少ない女性騎士のビオーナが
いきなり飛び込んでくると、嬉しそうに武器を
見せに来ていた。
手に持っているのは曲剣だった。
真っ直ぐに鍛えられた剣と違って大きく湾曲し
ているのだ。
軽くてしなやかな分、強度には欠けるが速さは
剣の比ではない。
二つの曲剣を構えると振り回す。
「分かった、分かったから、ここで振り回すな」
「あ……はい!でも、すっごく使いやすいんで
すよう」
今、ガゼルの腰に下げているのも、皇女が置い
ていったものだった。
刀身が黒く、鋼よりも硬い。
それでいて切れ味がいい。
ガゼルの黒い髪にも似ていて、だいぶ気に入っ
ている。
どう言うつもりでこんな物を渡して来たのか、
警戒心を抱かずにはいられなかった。
最近はティターニアの態度が前に比べて変わっ
て来ているのを不思議に思い始めていた。
「皇女様って美人だし、いい人ですね!私、会
ったらお礼言わなくちゃ!」
「そう……だな」
ガゼルには不思議で、仕方がなかった。
他の騎士達は、あまり接点がない為、偏見もない。
だから今のように、素直に感謝できるのだ。
だが、ガゼルは違った。
あんなに平民を嫌っていたティターニア皇女に
何があったのだろう。
これではまるで別人ではないだろうか?
今までの暴言が信じられないほどだった。
「人は変わるのか?……いや、ただの気まぐれ
だろう」
もし、信じてまた元のような傲慢な皇女だった
らと思うと、おいそれと信じられなかったのだ。




