遠征の準備
行き過ぎた白の騎士団の行為が騒がれるようになる
と、シグルドの立場も危ういものとなっていた。
「テオバルド、なぜ呼び出したか分かっているな?」
「先日の件でしょうか……あれは……」
「俺になんの断りもなく、黒の騎士団長を処罰しよ
うとした事だ」
「それは……今までなら平民には強く当たるように
皇女様もおっしゃっていたかと…」
「それで先に動いたと?やり過ぎだ。」
「しかし、今回の寄宿舎の件は……」
「黙れ!」
キッパリと言葉を止めさせると、シグルドは否定し
たのだった。
最近出来たばかりの寄宿舎と訓練場は黒の騎士団へ
譲り渡された。
これには少なからず、動揺が走った。
てっきり白の騎士団のシグルドの為に用意したのだ
と誰もが思っていたからだった。
黒の騎士団は平民出身の傭兵崩れが多い。
そして一番危険な場所へと赴く事が多く、犠牲にな
る兵士も多い。
それに比べ、白の騎士団は貴族の子息が多く、後方
にいる事が多いし魔法も使えることから重要視され
ていた。
そして騎士団には必ずと言っていいほど治癒魔法の
使い手が同行する。
今回の遠征もそうなる予定だった。
だがティターニア皇女は王族でも魔力が豊富で治癒
魔法に優れているという事で、いつもなら白の騎士
団についていくのだが、今回ばかりは黒の騎士団に
ついていく事になっていた。
「ティターニア皇女様、本当に今回の遠征に付いて
いくのですか?」
「そうですよ、危ないです。今回は白の騎士団では
ないのですよ?あの野蛮な平民どもです」
侍女の二人は言いたい放題に言ってきた。
「デボラ、ラジーナ、貴方達はこの国の騎士団を信
じられないのですか?」
「いえ、そんな事は……」
「ですが、黒の騎士団は……」
ティターニアはティーカップを傾けながら真っ直ぐ
に二人を見つめた。
「いいですか?騎士団の人は毎日厳しい訓練をして
いるのです。それはこの国を脅威から守る為であ
って、自らを犠牲にして日々戦っているのです」
「はい……」
「分かっていますわ」
「なら、どの騎士団であっても全力でサポートすべ
きではありませんか?」
「そうですわね」
「わたしく達が間違っておりましたわ」
ティターニアはガゼルを悪く言われるのが嫌で、推
しの安寧の為に必死だった。
この遠征後に推しの誕生日イベントが発生する。
それまでには仲良くなっておきたいところだった。




