騎士団のわだかまり
白の騎士団では朝早くから慌ただしかった。
それはこの前の失態について追及する事だった。
テオバルド・ペリドットは伯爵の次男坊だ。
彼は白の騎士団長の忠実な部下、彼の思いをいち
早く汲み取って動くように心がけている。
そして、この前のガゼルの失態を追及しようと黒
の騎士団事務室へと来ていた。
「これはどういう事だ?」
「ガゼル・トート!この前の事は皇女に怪我が無
かったからいいようなものの、一つ間違えれば、
命すら危ぶまれる事態になっていたのは分かっ
ているだろうな?」
「それは……私の失態です……」
素直に認めると、当たり前のように跪かせた。
騎士団では貴族などの身分など関係ない。
だが、こうして平民上がりでありながらも、新し
い宿舎を手に入れ、訓練場も与えられるなど許せ
る事ではなかった。
そう思うと嫌がらせをしたいと思う事もあるのだ。
「縛り上げろ!」
「はっ!」
連れてきた部下に命じると後ろ手に縛り上げた。
首にも重い枷を嵌める。
手に持っていた棒を振りかぶると思いっきり背中
へと振り下ろした。
バシッ!
っと大きな音が響き、奥歯を噛み締めるガゼルの
顔を見ては再び振りかぶる。
その瞬間、ドアが開きティターニア皇女が姿を見
せたのだった。
「何をしているの?……何をしているのかと聞い
ているのです…答えなさい!」
ティターニアの言葉に、テオバルドは手に持った
棒を止めると敬礼した。
「ティターニア皇女を危険に晒した罰を執行して
おりました。この平民に罰を与える事をお許し
いただきますよう……」
「ふざけないでっ!私がそんな事を望んでいると
いつ、いいましたか?」
ティターニアの言葉に一瞬怒りが見えた。
いや、確実に怒っている。
白の騎士団のやる事は全てティターニア皇女の気
分で変わると言っていい。
ティターニア皇女がシグルド・ヴォルフに執着し
ているので、時期皇帝は彼に決まりとさえ囁かれ
ていたからだった。
「もう一度聞きます。私の意に反して何をやって
いるのですか?」
「それは………皇女様の命を軽んじた罰を……」
「誰がそれを命令したのですか?すぐに解きなさ
い」
「はい……」
テオバルドは部下に言って縄を解くと逃げるよう
に立ち去って行った。
「ガゼル・トート卿、大丈夫ですか?」
「……」
縄を解いてもその場で座り込んだまま動こうとし
ないガゼルにティターニアは心配になった。
「どこか痛いのですか?」
「罰を……決してわざとではありませんが、皇女
殿下を危険にさらしたのは事実です。腕を切り
落としますか?」
「そんな事はしません!」
いきなりの言葉に心臓に悪すぎる。
ガゼルに傷をつけるなど絶対に許される事ではな
い。
こんな可愛い推しが、ものすごく反省してるとい
うのに、これ以上の罰など与えるわけにはいかな
かった。
「もういいのです」
「ですが……では、脱げばいいですか?」
「脱ぐ……ですか?//////」
ティターニアの妄想が一瞬頭を過った。
あの服に隠れた肉体を脱いで見せるという事だろ
うか?
そう考えただけで、顔が熱くなる。
真っ赤になって、顔をみるのさえも恥ずかしくな
った。
「騎士団を抜けた方がという意味ですが……」
「え……脱ぐってそういう……その必要はないわ
あれは私の不注意で起きた事です。これから気
をつければいいのです。私はこれで失礼します
わ」
そういうと、そそくさと出ていく。
後で、真っ赤になって恥ずかしがる皇女を思い出
しガゼルが笑いを浮かべていた。
「あの我儘皇女がな……ウブな反応をするとは。
実に面白い……」
今までの反応とあきらかに違う態度に、少しは見
直したのだった。




