制御できる
足手まといか、と問われてエリオットは困ってしまう。
確かに、先ほどの竜巻を切り裂いたのはエリオットだ。
そして今後も彼らのような敵と戦うことになるわけで、戦力としてソラが不安を覚えるのは当然に思える。けれど、
「俺は、ソラやカミルがいるのは心強い」
「けれど俺の力では、あの魔族すら対抗できない」
魔王所か、その下の五傑にすらも敵わない、それがソラのプライドを粉々に壊していた。と、
「ごめん、僕がもっときちんとサポートできていれば……」
「カミルは悪くない」
「うんん、この、貰った恥ずかしい杖を頑張って使えば、多分一つくらい消せたかなって」
「……だったら俺は余計、カミルを守る事なんてできないじゃないか」
「ソラ……」
カミルがソラの名前を呼んで、同時にカミルの中の南の魔王も不安そうにソラを見る。
このまま自分から離れていってしまいそうで、カミルは無意識にソラの服をつかむ。
そんなカミルに、ほんの少し優しげに微笑みながらもすぐにソラは、
「弱いままでは、エリオットにも迷惑がかかります。俺は、足手まといになんてなりたくない。だから……ここで一旦別れて……」
「駄目だ」
エリオットは短く告げた。
それにソラはきっとエリオットを睨みつけて、
「こんな足手まといな俺を連れて行って、どうするつもりなんですか!」
そう苛立ち、声を荒げるソラにエリオットは、
「一つ聞きたい事があるんだが……」
「何ですか」
「いや……その、勇者の血を、ソラは引いていると聞いたが、その力を今、見せてくれないか?」
突然のエリオットの問いに、一瞬カミルがびくっとする。
正確には、カミルの中の南の魔王だろうが、それを視界の端に捕らえながらエリオットは、
「その勇者の力を見せてくれ。それとも使い方が分らないのか?」
「いや、知っている。だが、血が薄いせいでそれほど威力はない」
「一応、見せてくれ」
渋るソラにエリオットは続ける。
今までの戦闘でも、僅かにその力をエリオットは捕らえていたが、それでも気にかかる点が幾つかある。
そして根負けしたらしいソラが、
「少し離れていてくれ、エリオット、それにカミルも」
頷き離れるエリオット。
一方カミルは不安そうにソラを見て、そっと服から手を放す。
そのままエリオットの方に走りより、不安そうにソラを見つめる。
そこでようやく槍を構えて、ソラは力をこめる。
闘気が揺らめくように立ち上り、見ているだけでその恐ろしさを肌で感じる。
けれどそれを見ていたエリオットは、ふむと頷いてから、
「ソラは、誰にその力の使い方を教わった?」
「独学だ」
「独学?」
「ああ、俺の家はもう勇者の血が薄まっていて、もうとっくに廃業してしまっているんだ。だから、使い方は、聞いていない」
その言葉に、エリオットは少し黙ってから、
「何となくこの勇者の力の使い方は分るが、それでも俺の場合父達に教わった」
「そうなのか?」
「そうだ、そうでなければ気づかないものなのかもしれないな、これの使い方は」
そうエリオットは自分の手を見て、それからソラを見て、
「勇者の力の使い方が、非効率的だから、それを上手く使えれば、あの竜巻の一本や二本はどうにかなるかもしれない」
エリオットが告げると、ソラが目を丸くする。
すぐに教えて欲しいとソラはエリオットに頼み、けれどカミルは――性格には南の魔王は不満そうだ。
けれど、ソラが、
「カミルを守れるぐらい、俺は強くなりたいから」
「……分ってる」
渋々と呟くカミルに、ソラは笑ってカミルの頭を撫ぜる。
そして、エリオットに習う事、数時間。
「こうか?」
「待て! ここで……このっ」
ソラが槍を振るうと、エリオットが慌ててそれを受け止める。
けれど受け止め切れない一部が、太い木々を何本もなぎ倒す。
「もう少し、制御をうまくしないと……暫く、俺が相手になる」
「いや、多分もう少しで上手く制御できると思う」
「……早いな。俺は……もっと時間がかかったな」
「いつも父親達に相手を?」
「いや、幼馴染の……リアネーゼによく、相手をしてもらっていた」
「……強すぎですね」
「今考えるとそうだな。でも、あいつ、何をしようとしているんだろう」
複雑な別れ方をしたせいで、素直には認められないが、確かにエリオットにとって昔は、仲の良い大事な幼馴染だったのだ。
雲行きが怪しくなっているのを感じながら、エリオットはリアネーゼは今何をしているのだろうと、久しぶりに思ったのだった。
西の魔王テイルの城にて。
「それで、どうするんだい? リアネーゼ」
西の魔王テイルは、招いた勇者リアネーゼにそう問いかけたのだった。




