二つ名
そうして次の日、色々な装備を固めたエリオットがカミル達の部屋を訪れると、
「『美しく煌びやかに着飾らされたディアは、その衣装とは反対に暗い顔をしていた。理由はこれからこの衣装そのものが意味がなくなって……』はっ! 何奴!」
「……カミル、前にディアを汚すのは止めてくれって言っただろう」
「う、う……で、でも見てください! この杖!」
そこには、この間の魔族クロックがぜひ使ってくださいと選んだ杖が転がっていた。
それを嫌そうにカミルは見て、
「昨日エリオットの部屋に言った後へ屋で、ソラにこの杖を見せられたんだ。こんなに女の子っぽい容姿を気にしている僕に、ソラはこれを渡してきて似合うと思うだって、酷すぎる」
「そういえばソラは? 見かけないが」
「今下で、僕のご機嫌伺いのデザートを買いに行ってる。でもそんなので許さない、僕はもっと男らしくなって、ソラをサポートしまくりなできる男になるんだ! はあ」
そう溜息をついて、カミルは俯いた。
そしてその杖を見て、確かに高度な杖なのは分るんだけどな、と嘆息する。
と、そこでソラが戻ってきた。
「カミルの大好きな、チョコレートパイ、クリーム添えだ」
「わーい」
さっきの不安そうな悩む表情は何処かへと吹き飛んだカミル。
ちょっと心配してしまったエリオットは、損した気持ちになったという。
そして、指定された場所へと向かい始めるエリオット達。
「えっとここか……あれ、この近くの村には、高速馬車が走っているな」
高速馬車というのは、乗継が連続している馬車で、待ち時間があまりない分早く目的地に着く。
その分料金が上乗せされるが。
「少し早めに行って、ディアを驚かせてやるか」
エリオットが嬉しそうに呟いたのだった。
指定された場所は森の中にある、広場のような場所だった。
そこに立つ魔族が一人。
「その瞳は紅蓮、その赤き血潮に囚われし我が名はブラット……」
そこで赤い髪をした魔族は、自分で言っている意味が分っているのかなと思いつつ、エリオット達に背を向けている魔族に、とりあえずエリオット達は声をかけた。
「あのー」
「今リハーサル中だと言っただろう! 静かにしろ!」
怒鳴られてしまったので、エリオット達は黙った。
そして暫くそんな台詞を延々としている彼だが、それをエリオット達が見ていると、
「あれ、エリオット達は早いな」
魔王ディアが現れた。
恥ずかしい台詞を叫んでいた魔族が固まった。
それはいいとして、魔王ディアはそのままエリオットに抱きつくも、すぐについて来た“緑の人”レイトに引き剥がされる。
「ディア様、あまり親しくしないようにしてください。一応ここで負ければ挑戦権を彼らは失うのですから」
「う、でも……」
ものほしそうにディアはエリオットを見て、そんなディアをレイトが怒ったように更に一歩下がらせる。と、
「レイト、どうせ我々が勝てば、もう二度と会うことは出来なくなるのですから、少し位はかまわないのでは?」
「“黄の人”ロウズ。だが……」
「それに私もここに来ましたからクリムゾンと一緒に二人がかりで、この三人に痛みが快楽になるようにしつければ良いのでしょう?」
にっこりと微笑むロウズだが、そこでエリオットは、
「クリムゾン、とは誰ですか?」
「ん? あそこで恥ずかしい台詞をしていて、後で私にお仕置きされる“赤の人”クリムゾンだよ?」
そう指差す“黄の人”ロウズ。
けれどお仕置きと言われた瞬間、クリムゾンはびくっと体を震わせて顔を蒼白にさせた。けれど、
「ブラット、では?」
「ああ、彼はそういった“二つ名”が大好きで、昔や私やディア様達にそう呼ばせていたのですよ。そうですよね、ブラット」
「だからその名前で呼ぶ名と何度も言っただろう! ロウズ」
「と、今は恥ずかしがっているのですが、まさかディアがここに来るとは思っていなかったらしく、昔の性癖を全開で出してしまっているのです。可愛いですね」
“黄の人”ロウズ がにこにこ笑いながら、クリムゾンの羞恥心を煽る。
“赤の人”クリムゾンは涙目だった。そこでディアも、
「そうなんだ、昔私もそう呼んでいたのでついそういった呼び名で呼んでしまうんだ。本人の前では気をつけているのだが……やっぱりブラットと呼んだ方が良いのだろうか」
「……ディア様も、もう許してください」
そう、悲しげに“赤の人”クリムゾンが呟いたのだった。




