準備は万全
けれど何時までも頭がさえ、中々寝付けないエリオット。
外の世界の神である幼馴染リアネーゼに、彼らはこの世界を奪おうとしていて、もしかしたならディアが殺されてしまうかもしれない。
そのためにはエリオットのこの力が必要なのだ。
「……ディアを失うなら、この力があったって仕方がないから、それはいい」
弱くなってしまうが別の力を渡すというディアの父達だが、エリオットにとってはディアの方が大事だった。
ただ不安があるとすれば、
「ディアも、俺を“勇者”としか見ていないのだろうか」
確かに、“勇者”の血を引いているからディアに会えたわけだが、それ以外に取り得はあっただろうか。
「ディア……」
寂しくなって、愛おしさのあまりにエリオットは呟くと、
「どうした? エリオット」
ディアが現れた。それにエリオットは目を見張り、
「ディア、どうしてここに?」
「ん? もうすぐ私の物になると思ったら嬉しくなってエリオットに会いにきた」
「……必ず負かしてやる」
「ふふん、この前の強さから、それを防御する魔道具も作り出したし、準備は万全だ」
腰に手を当てて、偉そうにしているあたりも、見た目が可愛いためか様にならない。
だからそんなディアを、エリオットは腕を掴んでベットに引きずり込んだ。
「あ……んんっ」
そのまま唇を重ねて舌を入れてやると、ディアの頬が朱に染まる。
唾液の絡まる音も静かな部屋に卑猥に響く。
そこで唇を離すと、潤んだ瞳でディアがエリオットを見上げた。
可愛いと、くらくらしながらエリオットは、そこで不安を覚える。ディアは、
「俺が勇者でも無くても好き、ですか?」
「エリオット?」
「答えて欲しい」
「? エリオットはエリオットだろう? そもそも勇者でなかったら、力づくで連れ去って花嫁にだって簡単に出来たのに、何でエリオットは勇者なんだ!」
「……ディアだって魔王じゃなかったら、力づくで連れ去って花嫁にだって簡単に出来たのに、何でディアは魔王なんだ!」
「むう! ふん。エリオットの意地悪」
ディアがそっぽを向いてしまうその仕草も可愛くて、エリオットは再びディアの頬に手を伸ばしてキスをする。
そしてディアは嫌がる風でもなく大人しくキスされる。
愛しい。
そんな感情で満たされて、エリオットはたっぷりと味わってからディアの唇を離す。
けれど離れてしまえばまた欲しくなって、エリオットはディアをぎゅうとお抱きしめる。
腕の中の温かさに、心が満たされる。
そんなエリオットの様子にディアは、
「何かあったのか?」
「色々と、予想外の事が、ね」
「確かにいきなり五傑と戦うのは、不安だろうな」
そう頷くディアに、話すべきかどうか迷うエリオットだが、話さないで欲しいと言われた事を思い出して、
「……そうだな、不安だな」
「すまない。本当はもっと、弱い相手と……」
「けれどその分ディアを早く手に入れられると思えば、不安なんて吹き飛ぶ」
「……負けるつもりはない。私は」
「俺もだ」
お互い挑戦的に見詰め合って、そこでディアが噴出した。
「前は、すぐに引きこもろうとしたくせに、どうした?」
「今だってディアが俺のものにならないなら引きこもってやるつもりだ」
「……勝てば良いのだ、私に。もっとも私は手加減するつもりはないが」
そうぎゅうとディアが抱きついてきて、幸せそうな顔をする。
会うたびに愛おしさが募って、エリオットはため息がつきたくなる。
どれだけエリオットの心を奪えば気が住むのだろうと。と、
「さて、夜這いも終わったし、私は帰る」
「ディア、夜這いの意味を知っているのか?」
「夜中に会いに来ることだろう?」
そんなディアに、ちょっとだけ不安を覚えたエリオットがキスをして、その日は別れたのだった。




