違和感
クロックの問いかけに、エリオットは首をかしげる。
「リアネーゼはリアネーゼだ。俺の幼馴染で俺を嵌めた、けれど実力は折り紙つきの勇者だ」
「……実力は、お前と同じくらいか?」
「? いや、俺の方が少し強い」
「その力、全てを使って?」
「そうだが……それがどうかしたのか?」
クロックはエリオットを見て、何かを読み取ろうとする。
けれど自分の望んだ答えがないと分り舌打ちをしてから、
「……嘘はついていないようだな」
「だからどうした? 嘘をついて欲しかったように聞こえるが」
エリオットの問いかけにクロックは再び黙ってから、どうしようかと悩みつつ、もう一度確認する事にした。
「実力は、お前よりも少し弱いくらいなのだな?」
「そうだ。それがどうかしたのか?」
「そしてそのリアネーゼは勇者の血を引いていない、と」
「そうだ。元々彼は、孤児だから……」
その言葉にクロックは深刻そうな表情になって、小さな声で、
「そもそも……が存在しない……可能性……」
「何かあるのか?」
「……お前は、リアネーゼの強さに疑問を持たないのか?」
そう言われても、エリオットは良く分らない。
昔から一緒にいて、昔からあんなで、共に強くなっていった部分もある。
だからこそエリオットは、あれほど手酷い裏切りにあってしまったのだ。
そんなエリオットにクロックは大きく溜息をついた。
「まずお前は自分が強いという事を自覚しているか」
「している。現に何人も魔族を倒しているだろう」
「……そうだな。そして先ほどの話を聞いて、その力の源は我等が魔王様が神である頃に贈ったものだ。それも分っているな?」
「ああ……」
「そしてその神が最後まで手放さなかった巨大な……身を守る、にしては物騒な破壊の、攻撃の魔法だ。それがエリオット、お前のもっている勇者の力でもある」
そこでエリオットはこのクロックが何を言いたいのかに気づいた。つまり、
「この力に匹敵する力をリアネーゼがどうして持っているのか、と?」
「そうだ。そして、あいつは勇者の力を引いていない。なのに、神が持っていた“光”の属性であれだけの力を持っているのだ」
「しかもその力は四人の中で一番強かった神の力に匹敵する、と」
「そうだ」
確かに言われてみればおかしな話である。
ずっと一緒にいたのでエリオットは当たり前としか思わなかったが、
考え出すエリオットに、クロックは嘆息した。
「お前は何も知らないようだ。……知っていながらわざわざディア様に近づいた可能性も考えていたが、それもなさそうだ」
「……リアネーゼが何者なのか心当たりがあるのか?」
「……お前に話す義理はない。はあ、予感が当たってしまったな。先見の明があるという点では流石か、あの方達は」
「? あの方たち?」
「お前には関係ない話だ。……南の魔王様も、まだ確証がもてませんので、もし分りましたらお伝えします」
「そうだね、僕達にも関係があるからよろしく。どの道まだ暫くエリオットといるだろうから、またね」
「ありがとうございます」
そこでカミルがくてっとソラに倒れこむ。
それをソラが抱きとめて、けれどエリオットは何も分らないまま話が進まれたのを感じて、再びクロックに問いかけようとするも……。
「エリオット!」
そこでディアが現れた。
ついでに他の、レイトとかいう魔族も一緒に現れたが、それよりもディアの方にエリオットは意識が向かう。
抱きついてくるディアをエリオットは抱きしめ返して、得た剣を見せる。
「俺が使う剣は、これだ」
「……この剣で、私と戦うのか?」
「違う、ああ、でもそうかも。ディアを手に入れて、守るための剣だ」
「そ、そうか。だが負けるつもりはないので……私を守るだけの剣だな」
「強いディアを俺が守るのはおかしいから、ディアには負けてもらわないと」
「いやだ、エリオットが嫁になるんだ」
「ディアが嫁になるんだ」
「むー、エリオットは強情だな。とはいえ……少し事情が変わったので、エリオットには大変になってしまうかもしれないが……いいか?」
そのもったいぶった言い回しに、エリオットはいぶかしんでいるとそこで、“緑の人”のレイトがやってきて、にやりと笑い、
「事情により、これから五傑が全力でお前の相手をする事になった」
そう告げたのだった。




