そんなこんなで
エミがいなくなって、ディアがようやくほっとしたようにエリオットに甘えるように抱きついた。
「ディア?」
名前を呼ぶと、嬉しそうにエリオットの胸に顔をぐりぐりとやり、そのままぎゅうとディアはエリオットに抱きついた。
その様子にエリオットは、ディアは何でこんなに可愛いんだとくらくらして、エリオットもぎゅうっとディアを抱きしめる。
暫くお互い抱きしめあい、相手が傍に居る幸せを感じてから名残惜しげに体を離す。
そこでエリオットにディアが自分から唇を重ねた。
軽く触れるだけのキスだけれど、エリオットはつい微笑んで再びディアを抱きしめてしまう。
それにディアが応じて、一度ぎゅうとエリオットをディアが抱きしめてから呟いた。
「……嬉しかった」
「そうか」
「……もしかしたなら、まだ幼馴染に未練があるんじゃないかと思って、私は不安だったんだ。こうやって……茶色い髪の女にまた取られるんじゃないかって」
「ディア?」
「私なんか選んでもらえるはずなんてなくて。私はエリオットと違うから、だから……」
「ディア!」
そこでエリオットは強くディアを抱きしめて名前を呼んだ。
それにディアははっとして、けれど抱きしめられた腕の強さに幸せを感じてしまう。
ディアはエリオットが好きだ。
どうしようもないくらい好き。
そんなディアにエリオットは、今度こそ絶対放したくないような思いを抱きながら、
「さっきも言ったように、俺は、ディアが好きなんだ。他の誰よりも、特別なんだ。魔王とかそういったことは関係なくて、だから……もしディアが俺の事振ったら、引きこもってもう家から二度とでないくらい好きなんだ」
「……エリオット、流石にそれは駄目だと思う」
「それくらいディアが好きなんだ! じゃあどんな言葉でそれを示せばディアが納得してくれるんだ!」
「エリオットがお嫁さんになってくれるとか?」
にこっと可愛らしい微笑を浮かべて、ディアがエリオットに微笑んだ。
そしてその言葉にエリオットの額に青筋が浮かぶ。
「ディア……」
「だ、だってそうすれば、今すぐにでも魔王城につれて帰られる気がするし」
「……戦わなくて良いのか?」
「お嫁さんだからそういう風に誤魔化せるかなって」
「……分った。ディアの気持ちは分った」
「エリオット?」
そこで何時になくやさしげにエリオットは微笑み、ディアに一言。
「絶対に倒して嫁にするからな。どうあっても、どんな手を使っても」
「……お手柔らかにお願いします」
「全力に決まっているだろう? これから装備諸々整えて、完膚なきまでに叩きのめしてやる」
ディアが顔色がさああっと青くなる。
そういえばエリオットの今の実力でも十分に強くて、これ以上装備整えたりと言うか装備まだ渡してないのにこの状況とかどうなんだろうとディアはぐるぐる考えて……自分が墓穴を掘った事に気づいた。
このままだと本気でディアはお嫁さんだ。エリオットの。
いや、確かにエリオットは好きなのだが、でも自分がお嫁さんてとディアは思う。だって、
「エリオットはこんなに可愛くて綺麗なのに」
「……ディアはまず鏡を見てから言うべきだと思う。ほら、この前ドレスを着た時、魔族達がディアの方が綺麗って……」
「あれは魔族だからだ! ぐう、もういい。……私を選んでくれた事だけで、嬉しいし」
そう頬を染めてそっぽを向くディア。
エリオットはもう押し倒して良いんじゃないかと思った。
こんなにディアは可愛いし。
そうだな、そうしようと、エリオットの理性が切れ掛かっていると、
「それで、ディアは、ここにずっといて良いの?」
「は! しまった、仕事を放り出してきてしまった! すまない、エリオット」
エリオットが恨めしそうにカミルを見た。
カミルはニヤニヤ笑っており、ディアはそれじゃあとその場を去ってしまう。
ディアのいなくなった部屋で、エリオットがカミルに問いかける。
「どうして俺のディアとのささやかな逢瀬を邪魔するんだ?」
「押し倒そうって思ったでしょう、エリオット」
「! 何で分った!」
「……いや目が怖い事になっていたから。でもここで押し倒したら、怖がってディアがこれなくなるかもしれないじゃん?」
「でも、あんな……」
「完全に手に入れるまで、ディアが逃げられない状態にしないと。そのためにはま、だそういう風にディアを不安にさせたら駄目だよ。でないとただでさえ良く思っていない魔族が総出でディアを守るだろうし」
「うぐ……」
「まあまあ、所で、装備を良くするんでしょう? 確か次の戦う場所では装備が何かもらえるんじゃなかったっけ」
そう、ディアの渡してきた地図を見るとそこには、
「……勝てば“装備を借りる権利をやろう”。……お金取るのか」
「下のほうに注意書きで“お金は出さないけれど口は出すやつなんか大っ嫌いだ by 作り主”って書いてあるね」
一体何があったんだろうとエリオットは思うも、口には出さない。
とはいえ、こうして次の目的地は決まったのだった。




