好き
「ディア!」
駆け寄ってきたエリオットが、魔王ディアに抱きついた。
それを見ていたレイトが、邪魔をしようと慌てて着替えようとするが余計に上手く行かなくなる。
とはいえエリオットにはどうでも良かった。
何しろ、今花嫁衣裳を着たディアを抱きしめているのだから。
「ディア、本当に似合っているよ」
「だから、どうして私が、そんなものが似合うと……」
「綺麗だよ、ディア……」
言い返そうとして、ディアは、嬉しそうなエリオットを見てそれ以上言えなくなる。
エリオットの方がよほど可愛いと思うのだ、だんだんと魔王ディアも嫁でいいかなと思えてきて……いや、エリオットを嫁にするのは私だとディアは思う。
だって、そうしないと……また、傍からいなくなってしまうから。
ふと浮かんできた奇妙な言葉に、ディアは首をかしげる。
「“また”?」
「ディア? どうしたんだ?」
「いや……エリオットが傍にいてくれたらなと思っただけで……あ」
その言葉に、エリオットが嬉しくなってディアを抱きしめた。
エリオットはディアが好きで好きでたまらなく好きで、この優しいくて美しい魔王の全てが欲しかった。
もちろんその全ては心と体を指す。
そして、今のディアの言葉はエリオットを求めているように感じられた。
「……今の発言は、ディアが俺の事を求めてくれたと思って良いか?」
「あ、う……その、そう……です」
顔を赤くして恥ずかしそうに微笑んで頷くディアを、エリオットは更にぎゅうと抱きしめた。
抱きしめた体は柔らかくて、このまま攫っていってしまいたかった。
「ディアの匂いがする……」
「ええ! そんな、だって身だしなみ整えて……」
「甘くて良い香り。今すぐに少しだけ味見したくなるような……」
そこで、少し抱きしめる手を緩めて、エリオットはディアと向き合い、ディアの顎を掴む。
そのままエリオットは、ディアの唇と自身の唇を重ねる。
軽く吸われて、びくっと震えるディア。
そして唇を割り入り込んでくる舌に前と同じように絡めとられて軽く噛まれてしまう。
それだけで甘い刺激がディアの中を走って、けれど更に飢えるような感覚に陥る。
欲しい、エリオットが欲しい。
この可愛くてちょっと生意気で、けれど純情なこの勇者が欲しい。
傍において、もう何処へも行かせない様にして、ディアだけを見つめるようにして……そう出来たならどれほどいいだろう。
ふわりと風が凪いで、エリオットは微笑む。
「ディア、愛してる。だから絶対に、ディアに勝ってみせるから」
「む、私に勝たせるつもりはないのか」
むっとしたようナディアの怒った顔も魅力的だったのだがエリオットは、
「ない、少しもない! そして、絶対にディアに勝って……今度は、俺が選んだ花嫁衣裳を着てもらうんだ」
「く……だが、私とて負けるつもりはないぞ」
「ああ、実力で倒さないと、ディアは納得してくれなさそうだし」
「だって、私は……エリオットが好きなんだ。私だって男だし、好きな相手をお嫁さんにしたいと思って、何が悪いんだ!」
「その論理は間違っていないが、ディアが可愛過ぎるという問題に対応し切れていない。なので、ディアがお嫁さんになるべきだ。それに……」
「それに?」
不思議そうに覗き込むディアの耳にエリオットは軽く舐め上げて、可愛い悲鳴を上げたディアに囁く。
「頑張ってまた一つクリアしたんだから、ご褒美をくれてもいいんじゃないか?」
「う、で、でも……」
「いきなりこんな強い相手とやらされたんだ。明らかに順番がおかしいだろう?」
「こ、こちらに手違いがあっただけで本当はもっと弱い相手で……」
「でも強い相手で、挙句の果てに俺が他の魔族にとられるかもしれない事態になったんだ。もしも俺が負けていたらどうする気だったんだ?」
「無理やり奪うから良い」
ディアがきっぱりと答えた。
本当はもう少し押して、戸惑った所でもう少し先に進みたいなとエリオットは心の中で悪巧みをしていたのだが、ディアは真っ直ぐにエリオットを見て、
「私がエリオットを他の奴にくれてやると思うのか? 出会う前ならまだしも、出会ってしまったのだからもう……私はエリオットを諦め切れない」
「ディア……もう、どうしてこんなに可愛いんだ!」
そうエリオットはディアを抱きしめる。
健気なディアが愛おしい。優しくて可愛いディアが愛おしい。
会う度にどんどん夢中にさせられていくなんて、エリオットは罪作りだと思う。
けれど、だからこそもう一度走り出してみようとエリオットは思ったのだ。
この愛おしい大切な人を手に入れるために。
「ディア、愛してる」
「う、私も……エリオットを愛している」
そうお互いを抱きしめあっていたディアとエリオットだが、そこである人物に引き剥がされた。
「貴様、よくもディアに……」
「レイト、あの、私はエリオットが好きなのだが……」
「……聞こえません、何も聞こえません……さあ仕事がありますので帰りますよディア」
そうレイトはディアの手を引っ張っていく。それにディアは、
「ま、まって、レイト……エリオット、それにソラにカミルもまた、会おう」
「待っています、俺のディア」
そうエリオットが答えると、ディアは微笑み更にレイトは肩を怒らせる。そして、魔王ディア達は竜の魔族と共にその場を去っていったのだった。
しばらく更新を止めてプロット練りなおしてきます。すみませんorz




