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お前もか

 やってきたエリオットがやけに不機嫌そうなので、魔王ディアは首をかしげた。

「どうしたのだ? エリオット」

「……さっきのレイトと俺の話を聞いていなかったのか?」

「えっと……すまない。途中からそれど頃ではなくなってしまって」

「? 何があったんだ?」

「カミルに襲われた」

「……」

 無言で冷たい視線をエリオットはカミルに送る。と、カミルは、

「酷い! ちょっとくすぐって魔王ディア様にエロい声とか表情をさせただけなのに!」

「……俺が見ていない所でディアになんて事をするんだ、カミルは」

「うぐっ、皆喜んでくれたのに。酷い」

「そういう問題じゃない!」

 そんなエリオットの様子に、今まで周りが喜んでいるばかりで一行に助けてもらえなかったディアは、目を輝かせてエリオットを見る。だが、

「俺が見ていない所で、そう、俺が見ていない所でなんでそんな美味しい展開になっているんだ!」

「エリオット……お前もか」

 ディアが信頼していた相手に裏切られた悲壮感を漂わせながら、ディアは呟いた。だが、

「俺だって、ディアのそんな可愛い様子が見たい! 俺は、ディアの全部を見たいんだ! 愛しているから!」

 そんな、エリオットの明け透けな言葉にディアは顔を赤くした。

 好きだから、好きな人の事をもっと知りたいのだと言われて、それが嬉しいと同時にディアは、

「わ、私もエリオットの事をもっと知りたい。その……愛しているから」

 顔を赤くするディア。そのディアの可愛さに、エリオットはディアを抱きしめた。

「……俺は、このままディアを連れ去ってしまいたい。そして自分だけのものにしてしまいたい」

「! だ、駄目だ。私だってエリオットが欲しい! 自分だけのものにしたい!」

「ディアが可愛いのが悪い!」

「! それを言うならエリオットの方が可愛い!」

「何でだ! どう考えてもディアの方が可愛いだろう!」

「エリオットだ!」

「カミル、ソラ、そしてそこの竜の魔族! ディアの方が可愛いと思うだろう!」

 竜の魔族であるフリードは、エリオットに名前を呼んでもらえなかったのでしょぼんとしながらも、確かにディアの方が可愛いと思えたので頷く。

 そして、ソラも頷いた。けれどカミルは、

「うーん、エリオットもディアも両方僕は可愛いと思うなー」

「く、自分は美少女みたいな容姿をしているくせに」

「ふっ、ディア様には及びませんよ。というか本当にディアは可愛いですよね」

 そう呟いたカミルがにたっと笑った。

 その笑みに、ディアは何やら嫌なものを感じて後ずさる。

「じゃあどちらが可愛いか証明しますか? 女装して」

 カミルの台詞にその場が凍りついた。正確には、エリオットとディアが凍りついただけだったのだが、そのカミルの提案に賛成したのは意外な人物だった。

「いいだろう、ディア、女装するんだ」

「ちょっと待て! 何でレイト、お前が乗り気になっているんだ!」

「何を言っているんですかディア! あんな人間ごときに……いいですか? 勇者などという人間ごときがで時後同じくらいに可愛いなどと、魔族の誇りにかけて、そう、ディア、今、魔王としての尊厳がかかっているのです!」

「え、えっと、レイト?」

「この輝くばかりに美しい我等が魔王陛下であるディアが、我々魔族の愛しんでいる魔王が、そんな、そこにいる程度の勇者と同列だと? そんな事があって堪るか!」

 幼馴染の、あまりの豹変振りにディアはおろおろする。

 実の所、その言葉は確かにレイトの本心から出た言葉ではあったのだが、別の計算も働いていた。

 つまり、愛しいディアの女装姿が見たい、というよこしまな欲望である。

 けれど表立ってそうは言えない為、そう叫んでいたのだ。

 というわけで女装する方向に話が進んでいる事に気づいたカミルが、

「じゃあ、ディアとエリオットが女装する事で決まりだね?」

「……く、私だけがやられてなるものか」

「エリオットもするじゃん。ディアはどんな服がいいかなー」

「……カミル、お前もしろ。でなければ……」

「でなければ?」

「……カミルの弱点が思いつかない。うう、だが着るんだ!」

「えー、僕は見る派だから」

 と、そこでカミルの傍にソラが来て、

「俺は、カミルの女装も見てみたい」

「僕は見る派だって、ソラは知っているじゃないか」

「俺が見たいんだが、駄目か?」

「……仕方がないな、ソラは、もう」

 ソラが言うと、比較的あっさりとカミルが頷いた。

 そんな二人を見ていたレイトが、

「二人は恋人同士なのか?」

「どうしてディアとエリオットと同じ事を言うのかな。僕達は幼馴染なだけだよ」

 そう答えるカミルに、レイトがディア達が以前したような微妙な表情をする。 

 けれど、ここで何かを言ってディアが女装しない展開になるのは避けたかったのでレイトは黙っていた。

 とはいえ、こんな状況に流されて、ふに落ちない者が一人。

「何故、俺はディアといちゃいちゃしていたはずなのに女装する事になっているんだ?」

 そう、エリオットが不条理だと言わんばかりに呟いたのだった。


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