あれ?
カミルが、大人気なく魔族の子供を追い回していた。
「やーい、男女ぁー」
「このガキ、僕が気にしている事を抜け抜けと……お仕置きしてやる!」
「わー、男女が怒ったぁー!」
その魔族の子供は、魔法も使って飛び跳ねて、カミルを翻弄しながら逃げ回る。
それをカミルが追い掛け回しているのだ。
その微笑ましい光景とは対照的に、ソラは目の前の魔族の子供に、
「……なんだ? へんなものを見る目で」
「お兄ちゃん変だ。剣士でも魔法使いでも槍使いでも、そのほか色々なものであるのにどれでもないみたい」
「多才なのだ」
「要するに、中途半端ってことだよね?」
「……成敗」
「うわああああああ」
黙ったまま、無表情にソラが子供を追い掛け回していた。
そんな二人を横目で見ながら、エリオットの相手の魔族の子供が嘆息する。
「……まったくあいつらは子供だから」
「……君も子供じゃないのか?」
「僕を、あいつらと一緒にするなよ?」
そう告げて、エリオットにその魔族の子供は攻撃を仕掛ける。
その速さが思いの他早く、エリオットは驚く。けれど、
「甘い」
さっと木の棒で、子供の木の枝を払ってしまおうと思った。
どれだけ甘い理由があろうとも、これは魔王ディアに認めてもらうための足がかりの一つなのだ。
けれどエリオットのその行動を、その子供は読んでいたらしい。
それをさっと受け流すと、雷撃の魔法がエリオットに打ち込まれて……エリオットはそれを木の棒で一刀両断した。
「ほう……今のは面白いな」
それを見ていた魔王ディアは呟く。
まさか剣げきで魔法をきりさくなど……良く見れば、魔法を使っているようにエリオットの剣が強化されている。
おそらくはエリオットが触れた瞬間にその武器はただの木の棒であれ、上等な剣となるのだろう。
それが勇者の血筋という固有の魔法なのかどうかは分らないが……。
「ええ! 何だよ今の!」
「この程度の魔法は簡単に切れる。残念だったな」
「ま、魔法では負けないんだからな!」
そう告げて、今度は魔族の子供は呪文を唱えて、炎の塊を幾つも出して攻撃してくる。
けれどその攻撃にエリオットは小さく何事かを呟くと、その炎が凍りに包まれて、そのまま消えうせて地面に落ちる。
「ええ! えええええ!」
子供が目を見開いて、大きな声を上げた。
それを見ていた魔王ディアも、あれ?、魔法もエリオットは使えるのかと、冷や汗を垂らした。
しかも、普通では水滴を一粒凍らせる程度の威力しかないはずで……魔王ディアは嫌な予感がした。
そんな何処か不安を覚えたようなディアに気づいたエリオットが、狡猾そうな笑みを浮かべて、
「一応俺は、魔法も使えるんだ」
「そ、そうなのか。剣に魔法か。うん、だが……」
「まだディアに追いつかないか?」
「う、うむ。そうだ。その通りだ」
そう虚勢を張りながら、もし今度キスをした時にしっかりとエリオットの魔力量その他諸々のパラメータを測っておこうとディアは決めた。
そんなディアの前で、魔族の子供の木の棒がエリオットによって打ち払われた。
魔族の子供の目が大きく開かれて……呆然としている。
その後ろで、カミルとソラが別の子供二人を捕まえて木の棒を取り上げていた。
「うむ、勇者たちの勝利だな」
「ずるいです! 大の大人が子供に本気になって!」
そんな子供の意見に、ディアは困ったようにエリオットを見ると、
「じゃあ、今日はこれから暫く、君たちの相手をして遊ぶ。それでどうだ?」
「……人間なんかに遊んでもらいたくないもん」
「どうした、怖気ついたのか?」
「! そんな事ないもん。泣いたって知らないからな!」
そう言って、怒ったように魔族の子供がエリオットに攻撃を加える。
それを見ていた別の子供も、
「「それで、お兄ちゃん達は遊んでくれるの?」」
と、にやっとカミルとソラを見て、笑ったのだった。
次回更新は未定ですがよろしくお願いします。




