木の枝
仕方がないので、魔王ディアが、
「今回は特別だぞ?」
といって、場所まで連れて行ってくれる事になった。
とはいえ、ある場所まで人の道を行き、それからという形らしい。
そんなわけで、ディアを含めた四人が徒歩で人の道を歩いていたわけだが、
「……魔王様は、どうしてそんなに元気なのですか」
ぜいぜいと息を切らすカミルを、ディアを含めて振り返る。
「……随分と虚弱体質なのだな。大丈夫か?」
「いやいやいやいや、ソラやエリオットは一応戦闘慣れしているしそこそこ体力があるでしょう、それならば納得いきます。ですが、魔王様! 貴方は別だ!」
「ええ! 何故に!」
「魔王様が直接戦闘には普通でないでしょう! 城で書類とかの扱いをしているはず!」
「ああ、うん。まあたまに。普段はお菓子作りとかかな。この前、レース編みをしたぞ?」
「そんな花嫁修業ぽい事はどうでもいいです! 問題は、大した努力もせずに、僕以上に体力がある事です!」
「つまり?」
「ずるい!」
意味のわからない絡まれ方をしていたディアは、困ったようにカミルを見ると、つかつかとソラが近づいていってカミルを抱き上げた。
「つまり、こうして連れて行けって事だろう? 俺に」
「いや、別にそういうわけでは……というか、僕はもう子供じゃないもん!」
「はいはい」
そう軽くあしらって、ソラはカミルをお姫様抱っこして連れて行く。
その時のソラの表情が優しげで、ソラはカミルを好きなように見える。
だが、本人達は、恋人ではないと否定している……そんな奇妙な関係。
そこでエリオットが、その二人をじっと見ているディアに、
「ディアも俺にして欲しいのか? お姫様抱っこ」
「……私がエリオットをするのではなく?」
「もういい」
エリオットが拗ねたように歩き出した。
それをディアが慌てて追いかけて、エリオットに、
「だが、それだけ私はエリオットの事を愛しているのだ」
「知らない」
更にへそを曲げたようにエリオットはぷいっとそっぽを向く。そんな様子のエリオットにディアは、
「もう……ちゅ」
ディアがエリオットに抱きついて、機嫌を直してという事で頬にキスしたのだった。
このあたりで良いかなと、周りに人がいない事を確認してから、ディアが何か呪文を唱えると、ふわりと体が宙に浮かぶ。
「ついでに、不可視の結界も張ってあるから外からは我々の姿は見えない。では、行くぞ」
そう説明してそのまま宙を飛びながら、眼下に広がる森の木々を見る。
深い森に細い川や泉がぽつんぽつんと見えて、山の中腹辺りまで来る。
そして……唐突に眼下に村が現れた。
「さて、結界を解くぞ」
それと同時に、ふわりと四人はその場所に舞い降りて、突然現れた目の前の四人に傍で遊んでいた子供が手から飴を落としかけた。そして、
「うわぁぁあああ、人間だぁあああ」
叫んで、怯えた様に走り去ってしまう。その様子を見たエリオットがディアに、
「……ここには話は来ていないのか?」
「いや、だって昨日全部の村やらなにやらに伝達しておいたぞ?」
「……とりあえずディアはその怪しい格好はやめよう。ここは魔族の村だし」
ディアは先ほどまで人間もいる場所を歩いていたので、サングラスにマスクという怪しい格好だったことを思い出して、それを取った。
やがて村長らしい人が来て、
「! これは魔王様じきじきに……」
「昨日、こちらに勇者に関する旨を送っておいたはずだが……」
「はい、今見ました」
「……」
「申し訳ありません。我々も日々の生活が忙しく、それに今は村の若者は都市に出稼ぎや勉学のためにここを離れていまして……今いるのは女子供と年寄りくらいなのです」
「そ、そうなのか……どうするか。では、ここは無しに……」
と、ディアが呟いた所で、先ほど逃げ出した子供が木の枝を持ってやってきた。
「勇者め、絶対やっつけてやる」
「そうだそうだ、勇者になんか負けないぞ!」
「大体弱そうだし! ……あの、もしかしてそちらにいるのは魔王ディア様ですか?」
そこで魔王ディアに気づいた子供たちが顔を赤くして、ディアを見上げた。
「ん? そうだが……」
「「「僕達が絶対に勇者からお守りします!」」」
そう、子供達がきらきらと目を輝かせてディアを見上げる。
それにエリオットは困ったように、その三人の魔族の子供に、
「子供や魔族、魔王に酷い事をしようとか、俺は別に……」
「嘘だ! 人間は嘘つきだから、そう言って、勇者はうちの魔王様をお嫁さんにしちゃうんだ! 許さないぞ!」
そう言われてしまうと、エリオットも言い返せない。だってディアを、お嫁さんにしたいと思っているのは事実なのだから。
そこで、ディアが手を軽くぽんと叩いたのだった。
「では、君達三人に、勇者のお相手をしてもらおうか」
次回更新は未定ですがよろしくお願いします。




