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「シクシク……」

 ◇◆◇



 僕の呟きは置いといて庭に出るみんな。ドライさん以外縁側で腰を下ろして観戦モード。

 リククラゲの数は四。僕の背の半分くらいが三体。そして、ドライさんより大きのが一体。

 リククラゲは小さいのは枯れ葉とか食べるだけでいいんだけど、大きいのは畑の野菜とかスイドウタンポポとか食べられちゃうから退治しないといけないんだ。しかも、ずいぶん丈夫だし下手すると体当たりされるしで子供は手を出したら危ないって言われているからね。だから普段は出たら大人の人を呼ぶんだよ。

 あと、リククラゲは食べられるんだ。さすがにそのままじゃないよ? 味はあんまりないけどコリコリしてて食感がいいんだよ。


「――見てなよカイト。俺の実力ってやつを」

「あ。う、うん」


 すっかり食べることを考えてたらドライさんの声が聞こえて慌てて取り繕う僕。

 そうそう、ドライさんの見せ場なんだからちゃんと見ないとね。それにしてもあの大きいのはかなり頑丈そうなんだけど……

 そう考えてると、早速ドライさんが手を一瞬重ねてから弓をつがえる構えをとる。一瞬だけ見えたまだらの青と緑の(たね)がもう氷の矢の形をしている。


 えっ? いつ珠だしたの?


「疾ッ!」


 僕が唖然としてるうちに狙いを定めて直ぐ様ほとんど黙って矢を放つ。

 ――放つ。

 ――――放つ。

 直ぐ様小さいほうの三匹は体にぽっかり穴を空けて倒される。

 えっ? 詠唱(しかけ)は?


「風十、土十」


 僕が目を白黒させてるうちにドライさんが次の行動にすぐに移る。

 ドライさんは一瞬だけこっちをみるとニヤッとして助走をつけて跳んだ。


「風は空気を圧縮、土は固定し踏み台となれ」


 ドライさんが上昇中に詠唱(しかけ)ると、空中の見えない足場を蹴ってもう一回ジャンプ。


「水五十、風十。水に作られし氷槍よ(レイト・)の助けで敵を打ち抜け(ジャベリン)


 ドライさんが不思議な詠唱(しかけ)で作られた氷の槍を握ると、宙から下降しながらそれを投げる。その反動でドライさんの体がふわっと浮かんだ。

 投げられた氷の槍は大きなリククラゲの体に突き刺さった一瞬で凍りつく。――直後に低い音が僕の体を通り抜けると、地面にぶつかった槍が放つ衝撃波でくだけ散った。

 衝撃はスイドウタンポポの花をぐっと傾けると、花に貯まってた水をいっぱいこぼしたところにドライさんが地面に着地して手をパンパンと払うように叩く。


「いっちょあがりっ! っなんてね。カイト、どうだった? って、おーい」


 ドライさんは腰に手を当てるとフフンと鼻を高くすると、あまりの事にポカンと口を開いてた僕の目の前で手を振る。

 いけない、僕自分が声を掛けられてるのもちょっとわからなかったよ。


「え? あ。すごい……、すごいよっ! ドライさんっ――、いやドライ先生っ! 僕に西魔術を教えてくださいっ」

「あはは、先生ね。オッケー、よろしくね」

「はいっ、よろしくお願いしますっ」


 本当にすごかったよ。オチ担当とか言ってごめんなさいだよっ。

 僕、興奮しすぎてちょっと鼻血が出そうだったよ。


「うーん、三十点」


 口をへの字にして腕を組むヴォルクス様。

 あんなにすごいのに……?


「何でだよじいちゃん」

「最初の三体はよかった。百点近くはやろう。じゃが、最後が大、大、大減点じゃ」


 予想に反して厳しい言葉。僕は一番最後の槍がドーンってのが一番すごいと思ったのに。


「ドライ、アドリブでいれたあの足場。なんじゃあれ。――あれ入れたから槍が地面に……、派手に弾けて……。リククラゲの食べれるところが、ほとんど。――ほとんどなくなってしもうたじゃないかっ! ワシの、ワシの酒の肴が……」


 涙ぐみながら拳を握って訴えかけるように言うヴォルクス様。よっぽど好きだったんだね。あれくらいおっきいのも珍しいし。

 うーん、確かにそういう意味ではそうかも。


「えー、せっかくだからカイトに派手に見せたかったんだしー。俺あの歯ごたえ苦手だしー」


 口を尖らせるドライさん。

 あの歯ごたえがいいのになぁ。もったいない。

 そう思っているとセナさんがパチパチ拍手する。


「素晴らしいですわぁ。限られた出力の中で最大限の運用。西魔騎士団の何かと合唱すればいいと思ってる軟弱なヘタレどもに見せてやりたいわぁ。うん、やっぱりドライ君なら立派な先生になれますわよぉ」

「はは、ありがとうございます。頑張りますよ」


 僕の頭をポンポンと撫でながら握りこぶしをつくるドライさん。

 気合いが入ったみたいだね。

 セナさんがヘタレとか言う言葉を使ってたのはたぶん気のせい。


「でも、好き嫌いしてたら大きくなれませんよぅ?」

「……余計なお世話です。もう止まってますから」


 コロコロと笑うセナさんにジトッとした目で返すドライさん。

 あんなにかっこよかったのに、やっぱりいじられちゃうんだね。


「んじゃ西魔術やろっか、カイト」

「はいっ――。あっ、ドライ先生ちょっと待っててください」

「え? あ、うん」


 返事をしたときに目の端に入ったのが気になって庭に出る。

 僕はスイドウタンポポのところへ向かう。


「ん? カイトや、折れた花を摘むんか? 几帳面じゃな。綺麗に真ん中からポッキリいっとるから、別に放っておいても水は漏れんぞ?」

「ううん、違うんです。なんかね、泣いててかわいそうだから、なんとかしてあげたくって」


 ドライさんの氷の槍の衝撃で折れちゃったみたい。冷気が当たってかな? 下を向いてるスイドウタンポポの花はちょっとだけ閉じかかってる。

 花びらの端からは、ポタッ……、ポタッ……って、一滴ずつ水滴がこぼれる。

 これが僕にはね「いたいよー、さむいよー」って言って泣いてるように見えたんだ。


 僕はハンカチを出して花を起こす。

 おっきいし水含んでるから結構重たいんだよねこの花って思いながら、起こした花を肩で支える。折れた部分をハンカチで巻いてあげるとちゃんと立つと思うんだけど。

 ……ダメだなぁ、ハンカチじゃ支えきれない。


「おお、なんと優しい子じゃ……。そうじゃぞ、ドライ。タンポポさんがかわいそうじゃゆえの三十点なんじゃ」

「さっきは自分のことばっかだったくせにっ! まぁ、確かにかわいそうかも。カイト、そう言うときは添え木をしてね――」

「あらあら、じゃあわたくしは怪我をしたタンポポさんに包帯持ってきますわね――」

「えっと、ワシもっ、ワシも手伝うぞいっ――」


 ――みんなで折れたスイドウタンポポを立てて包帯を巻く。添え木をしたらうまくいったみたい。

 すごいなぁ、こういう風にするといいんだね。


「よっし、うまくいったねカイト。じゃ、改めて始めようか」

「はいっ、ドライ先生お願いします」


 僕は返事をするとみんなで道場へ戻る。僕は縁側でスイドウタンポポに向かって振り返る。


「元気になってねっ、またねっ!」


 僕は手を振る。

 スイドウタンポポのちょっと閉じかけた花が開いた気がする。

 ちょっと元気出たのかな?

 そう思うと少し嬉しくなった。

 さて、ドライ先生とのお勉強だねっ!


 ――でもそこは省略っと。


「なんでだよっ!」



 ◇◆◇



 なんかドライ先生の叫び声が聞こえた気がするけど気にしない。

 なんたって先生は僕の目の前で普通に教えてくれてるからね。あれは気のせい。


「おーい、ドライ。そろそろカイトを帰さんといかんわい」

「えっ、ああ。ほんとだ、昼前だね」


 ヴォルクス様の呼び掛けにドライ先生が時計蘭の花を見る。

 ほんとだ、短い雌しべが真上に向かってきてる。


「じゃ、今日はここまでね」

「ドライ先生ありがとうございました」

「はい、どういたしまして」


 僕はドライ先生にお辞儀をすると、ドライ先生も丁寧にお辞儀を返してくれた。

 なんだか、西魔術の勉強すぐ終わっちゃったなぁ。 きっと夢中になってたんだね。

 一人そんなことを思っていると。


「おーいっ! じっ様いるかぁ? ちょっと頼みたい事があるんだが――。あれぇ? カイトじゃねえか」

「父さん、おかえりっ」


 ひょこっと道場に顔を出す父さん。

 僕は父さんに駆け寄ると、父さんは僕をひょいと抱き上げた。


「ご苦労じゃったようじゃなリック。パーブル村まで行ってもう戻ってきてるのはさすがじゃが、首尾はどうじゃったんじゃ」

「他の近隣の村からも足自慢が何人か応援来てたからよ、俺が着いたときにはもう反撃開始してたんだよ」

「えっ! 父さんより足の早い人がっ?」


 僕はものすごく驚いた。父さんより早い人なんて……

 はっ! わかった、ミズキリペンギンに乗ってきたんだっ!

 それなら早いかもっ。うわぁっ、羨ましいなぁっ!


「いいなぁっ! 僕もミズキリペンギンに乗りたいっ」

「へっ? ミズキリペンギンなら俺より速いけどあれは人が乗れねぇし、違ぇ。応援した村で一番遠かっただけだ。俺が普通に走って負けるわけねぇよ」


 そう言ってニカッと笑う父さん。あ、ミズキリペンギンはのれないのかぁ残念。でも良かった、やっぱり父さんが一番速いんだね。


「まっ、一番に到着出来なかったのはなんか悔しかったけどよ。一人で裏から奇襲かけて魔人仕留めてきたぜ」

「ふっ、リックは狡いの。そんなまどろっこしい事せんと乗り込むなら正面からいくもんじゃぞ?」

「ケッ、こっちはじっ様ほど命知らずじゃねぇやい」

「ふぉっふぉっ。で、ワシに頼み事ってなんじゃ?」

「あっ、いやな、カイトに西魔術教えてやってくんねぇかなぁって思ってな、帰りに寄ったんだ。が……?」


 僕とヴォルクス様の顔を交互に見る父さん。

 どうしたんだろ?


「それならカイトが一人でここまで来て直接お願いしに来たぞ」

「えっ! カイトが一人で来たっ? えっ?」


 さっきよりももっと早く僕とヴォルクス様を交互に見る父さん。

 あっ、そっか。父さんは知らないもんね。


「僕ね、一人で来たんだよ。朝の父さんみてかっこよかったから、僕も父さんみたいにかっこよくなりたいからね。まずは一人でお出かけくらいはってね」

「そっか、やるなぁカイト。かっこいいぞっ!」

「えへへ」


 父さんに褒められちゃった。嬉しいなぁ。


「んで、じっ様に教わってるのか?」

「あっ、いや、ヴォルクス様はちょっと上級者向けだったから……」

「……あちゃー、やっぱか。んじゃ誰がいいかなぁ?」

「エヘンっ!」


 父さんが頭を捻ってるところでドライ先生が胸を張って咳払いをする。


「どうした? ドライ、風邪か? 気を付けろよ? カイトにうつったら逆さまにして吊るすからな?」

「ち、違いますっ!」

「そうだよっ、違うんだ父さんっ。ドライ先生が教えてくれてるんだよ」

「――ぷっ、ドライ先生? ダハハハ」


 吹き出して笑い出す父さん。それは流石に失礼かも。

 ドライ先生ほんとはスゴいのに。


「ふんっ、どうせ俺は先生ってガラじゃないですよ」

「そんな事ないよっ! ドライ先生。父さんっ、先生は全然オチ担当じゃないんだよ。すっごく強かったんだよっ! 父さん知らないんだっ」


 父さんの袖を掴んで訴える。父さんは一瞬驚いた顔をしたけどすぐニンマリ顔をする。


「カイト、俺もドライは強いと思ってるぞ? それもかなりだぜ」

「えっ? そうなの?」

「あったり前だろ? ここ最近俺が一番組んでるのはドライだしな? 普段はオチ担当だしムダに面白れぇ奴だ。が、戦闘ではこの村で俺が一番信頼して背中まかせられる奴だよ」

「そっか、そうなんだ……」


 そういえばそうだ。父さんは実際にドライ先生と狩りに行ってるんだった。当然強さも知ってるよね。

 それを僕ったら……、恥ずかしいね。

 僕はなんだか顔が熱くなって父さんのからだに顔を隠すように押しつけると、父さんがなんだか嬉しそうに僕の頭をなでる。


「リックさんっ!」

「何だ――、ウオッ!」


 ドライ先生の声に僕と父さんが振り返ると、ドライ先生がなぜかすごい涙を流していた。


「リックさんが俺の事をそういう風に……。俺――、俺ぇ嬉しいぃぃぃぃっ!」


 涙を流しながら両手を広げて突っ込んでくるドライ先生。

 父さんは僕を抱える方と逆の手でドライ先生の片腕をペチンと払って背中向きにひっくり返す。そのままお尻を蹴っ飛ばした。


「うぜぇっ!」

「ひどいっ! ぎゃんっ」


 床に顔から激突するドライ先生。


「男に抱き付かれる趣味はねぇっ! ったく」

「シクシク……」


 呆れるようにドライ先生を見下ろす父さん。

 あれ? でも父さんの言ってる事ちょっと変かも。


「父さん、僕も男だよ?」

「ばっか、これは抱っこだから違ぇ。……でもそうだな、今日は一人で来てエラかったしこっちだな」

「え? わあっ」


 一旦下ろされて後ろを向かされると、突然僕の両脇を抱えるとそのまま肩に乗せる。


「あっはは、肩車だっ」


 すっごく目線が高くなるっ。肩車っていいよねっ! それに父さんのふわふわの狼耳が目の前に……


「だはっ、こらっカイト。俺の耳をいじるなっ、くすぐてぇだろっ!」

「あはは、ごめんなさーい」


 触ったら怒られちゃった。あはは。でも、ちょうどいい位置にあるからついついね。


「ったく。――まぁ、ドライから教わるのはちょうどいいと思う。ドライ、カイトの事よろしく頼むな」

「ふぁーい」


 まだ床に顔から突っ込んだままの姿勢で返事するドライ先生。そろそろ起き上がればいいのに。


「じゃあ、そろそろ帰るか。邪魔したな、じっ様。今度カイトに菓子持たせていかせるよ」

「ん、そんな事別に気にするな。ワシも楽しんどるしな。菓子なんぞ、噂のパルドレオの白いケーキ程度で構わん」

「うへぇ難易度たけぇ。あれ発売の前の晩からテント張って待ってるやついるんだぜ? まぁ適当に持たせるわ」


 僕の誕生日の時に作ってくれたケーキだね。あれからパルさん新製品として売り出したらすごい人気になったんだ。僕もあれから食べてないよ。


「じゃあなっ、世話かけた」

「さようなら、またね」

「ほい、さようなら。またの」

「ふぁーい」


 肩車されたまま手を振る。ヴォルクス様もニッコリしながら手を振って送ってくれる。ドライさんはまだ同じ姿勢で尻尾だけ振って返してくれる。


 ……次来た時にまだあのままだったらどうしよう。


――― おまけ ―――


「――って感じで物を動かしたりするのは、風のイメージで緑の珠を作るんだよ」


 ふむふむとうなずく僕。ドライ先生の教えてくれる西魔術ってすごく分かりやすい。ドライ先生ってば丁寧だし、それに。


「さて、ここまででわからないところある?」

「ううん、大丈夫です」


 こうやって聞き返したりしてくれる。

 本当にいい人にお願いできたなぁって思うんだけど……


「じいちゃん、セナ義姉(ねえ)さん、そうじーっと見られるとすっごいやりにくいんだけど……」


 そう、二人とも僕のすぐ後ろで座って見てるの。


「ワシらの事は気にするな。なっ? セナ」

「ですわぁ」

「めっちゃ気になるよ……。まぁいっか」


 ドライ先生が大きなため息を一つ吐くと授業を進めた。


 ◇◆◇


「はいはいはい、先生はーいしっつもーん」


 あれからずっと黙ってたヴォルクス様の声が、僕の後ろから飛んでくる。


「なに? じいちゃん」

「モワーッとビュワーを混ぜたらええ感じにナカパッパッになると思うんじゃが、先生はどうじゃ?」

「……えー、先生にはそれは高度すぎてわかりませんから答えれませんっ。さっ、カイト。続きしよっ――」

「はぁいはぁい、先生ぇしっつもぉん」


 今度はセナさんの声が飛んでくる。


「……なんです? セナ義姉さん」

「さっきのレイト・ジャベリンの事なんですけどぉ、やっぱりあの角度から撃つ場合はぁ、やはりあの形状を選択する事での空力を得る力はむしろ若干の力のロスになるんではないかとぉ。いや、ロスと言っても誤差の範囲内で――」

「――すいません。本当に高度すぎて先生いっぱいいっぱいです。その話はまた後で、今はカイトの時間ですから」

「ちぇー」


 セナさんの話をこめかみを押さえながら中断させるドライ先生。

 セナさんもちょっとふくれながら質問を諦めてくれたみたい。


「なんかゴメンねカイト」

「う、ううん。大丈夫です」

「そか、じゃ続き――」

「はいはいはいっ!」


 またヴォルクス様の声が後ろからする。いい加減あきれ顔のドライ先生。


「……なに? じいちゃん」

「ワシ、おトイレ」

「勝手に行ったらいいでしょうがっ!」

「ぶははは、ほーい」


 顔を真っ赤にするドライ先生をしり目に、笑いながら道場を出ていくヴォルクス様。

 なんかドライ先生の事をからかってただけみたいだったねぇ。


「まったくもうっ!」

「はぁい、先生」


 憤るドライ先生に今度はセナさん。


「なんですか? セナ義姉さんもトイレですか?」

「まぁっ! おセクハラぁ」

「……えぇ」


 ちょっとピリピリしながら問いかけたドライさんがセナさんの答えに一気に脱力する。


「お昼御飯何がいいか聞きたかっただけよぉ」

「ぬぐぐぐっ――――。はぁ……、今日はアイン兄と相談してください……」

「あは、はぁい。んじゃ頑張ってくださいねぇ。ドライくん本当に丁寧でいい授業よぉ」


 握り拳を作って唸った後にまた一気に脱力するドライ先生に対してひらひらと手を振って出ていくセナさん。ドライ先生の浮き沈みが激しいなぁ。


「まったくいつまでも半人前扱いなんだから。俺だってちゃんとできるっての……」


 ドライ先生がぽりぽり耳の後ろをかきながら二人が出ていった方を見る。

 そっか、二人ともドライ先生の心配をしてたんだね。


 --- 図鑑 ---


《リククラゲ》

 不定形。

 陸上にいるプルプルした生き物。いわゆるスライム。どこにでもよくいる生き物で、何気なく足元を見かけると水滴のような大きさのリククラゲがよくいる。普段はダンゴムシやミミズのように枯葉や土を食べたりしており土を柔らかくしたり肥やしたりする。そのため、リククラゲが多い畑は良い作物が育つ事も多い。

 ただし、ふいにリククラゲ同士が合体する事もありその時は大きなリククラゲがいきなり目の前に出現する。合体した巨大リククラゲ動きは遅いものの、近くにあるものは何でも食べてしまうため。放っておくと畑も荒らされてしまうため退治する必要がある。

 動きはとても遅いためさほど恐ろしい魔物ではない。しかしリククラゲの耐久力はとても高く、へたに子供が手を出すと逆に食べられてしまう恐れがあるため気をつける必要がある。

 リククラゲは赤、青、黄、緑の4色がおり、それぞれ赤は熱に強く、青は冷気に強く、黄は衝撃に強く、緑は斬撃に強い。そのため的確に攻撃をしないといつまでたっても倒すことはできない。

 またリククラゲは食べる事ができ、塩に付けるなどの一定の処理をした後は特有の食感を楽しむいい和えものとなる。これもリククラゲの色によって食感が異なり、赤はグニグニ、青はプリプリ、黄はプチプチ、緑はコリコリとよく言われている。


《時計蘭》

 植物型。

 最近見つけられた変わった植物で、花についている雄しべと雌しべはそれぞれ1日に決まった回数ぐるぐると時計のように回転する。

 株によって雄しべが長いか雌しべが長いかは違っており、長いほうは一日に24回転、短い方は2回転する。雄しべが長い株は雌しべが長い株としか受粉しないため、1日に何回も雄しべと雌しべがすれ違っていても自家受粉しない。雄しべや雌しべがグルグル回っても全ての株が全く同じ角度で回るため、グルグル回る事によって他の時計蘭と雌しべや雄しべが直接接触する事はあまりなく、なぜグルグル回るかはよく分かっていない。

 天候に関係なく、一日の回転数はきっちりと決まっていることが最近発見されたため、獣人の森の住人の家では時間を図るためによく鉢植えにして室内で育てられている。


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