24.~疑い~
「とまれ!三人とも武器を置いて手を挙げるんだ!」
突然の出来事に驚き、咄嗟に声の方向に視線を向けると此方に向かって武器を構え人々がにじり寄ってくる。
なんの冗談だと航平は声を荒げるがその喉元に刃物を突き付けられ静止する。
山田も同じように後ろから突き付けられたボウガンにより動きを制限されていた。
にじり寄る人々の中から一名の中年男性が出て来た。
この人が陣内という男なのだろうか。
「君はとんだ役者だな!あの化け物共を連れて来たのも君なんだろう?」
「あなたは誰だ?何故いきなりこんな真似を!」
辺りを見回すが数人に囲われ二人には刃物が突き付けられている。
ヘタなことは出来ないのは明白だ、自分だけに刃が向けられているのであればどうにかすることも叶うが
それを二人に期待するのは酷なものだ。状況を問うがあちらからの答えはいいものではなかった。
「僕はただの教師さ、こんなことになる前までの話だがね。そんなことはどうでも良いのだよ。それよりもだ!!君がここに来てから奴らの凶暴性は増すばかりだ。たったの1日やそこらでこちらの被害は増えオマケにリーダーまで動けなくなった。君の目的はなんなんだ?
権力か?女か?物資?それとも食料が欲しいのか?ここにはたくさんあるものな、人間という餌が!
…もし、我々に危害を加えるつもりが無いと言うならば、出て行ってくれないかな?君さえ居なければここは安全な場所になるんだ、皆もそれを願っている。ほら周りを見てごらんよ」
辺りを見渡すと此方を見る人々の視線に違和感を感じる、畏怖している目、そして未知に対する恐怖、奴らに対する恐怖の目そのものだ。
「モニタールームから確認をとっている、君があの化け物にトドメを指すところを、小此木くん、君には何か不思議な力があるようだ…。ここに来るまでに何回負傷した?いや噛まれたと言うべきか?」
山田や航平に視線を送るが小さく首を振る。
何者かが、俺たちの動向を探っていたのか?
「外に出ていた者がモールの近くで君たちを見掛けたようでねぇ、何体もの感染者に噛まれたそうじゃないか?何故発症していない?
最近では大学生がテロリストに入るなんて馬鹿げたニュースを目にする事もあるがまさかねえ、君が奴らを操っていたんじゃないか?
違うと言うなら証拠を見せてはくれないか?我々は君たちが怖いんだよ。」
「そんな…証拠なんて見せられない。俺だってどうしてこんなことが起こったかなんて説明できませんよ!!」
どうしようもない、こんなに早く俺の体質がバレてしまうなんて
「この身体だから何なんですか!友達は殺され知らないうちにこんな身体になって!今度こそは守りたくて!ここに来たら裏切者扱いかよ!」
「何が説明できないだ、君の身体が物語っているじゃないか。噛まれても発症せず、傷はすぐに治癒し、武器を手にせずとも化け物を足蹴に殺して見せたではないか!今になって何故現れたのか。全部作戦のようなものなのだろう。
仮にだ不幸にもテロリスト事件に巻き込まれ不思議な力を手に入れた人間だとしよう、君が普通の人間で人の死を悲しむことのできる人間だとしよう。そして我々に力を貸してくれるのであれば君への疑いは一旦保留にしようじゃないか」
「何をすれば信じてくれますか?」
「このまま出て行ってくれと言いたいところだが…そうだ、病院へ瀬戸内さんを運んでくれないだろうか?手術が必要なんだとさ。
彼が怪我をしたのは知っているだろう?噛まれたわけではないが、深い怪我であることは確かだ。ここにあるだけの簡易キットや薬で状態を維持出来ないんだそうだ。
幸いここには医者も看護師も揃っている、足りないものは薬や設備だけ、人材は貴重だが他に何人か医者も居るしそちらに回す者は此方で用意しよう。
なぁに、君が守ってやれば病院まで辿り着くことも容易いはずさ。瀬戸内さんが居なければここは瓦解するのは時間の問題だ、背に腹は変えられんのだよ。まさに苦肉の策だ」
表情を変えずに声色だけは悔しいそうに言い訳を話しだす。
此方は人質も取られ言うことを聞くしかなさそうだ。
「協力をします。俺は友人たちを助けに来ただけですから、だから二人を」
「言うことを聞いてくれるのであればこの二人の安全は確保しよう、ただ病院までの安全なルートの確保と院内の安全を確保出来るまではここから離れていてもらおうか、二人は人質ということだ」
「優一人でどうしようってんだよ!!さっき自分から協力するって言ったじゃねぇか!!!」
「沢渡君と言ったか、我々に必要なのはあくまで先導者だ、彼が居なければここの連中はだめなのだよ。だが逆もしかりだ、彼を助けるためとは言え人々を危険に晒すわけにはいかないということだ」
「そんな無茶苦茶な話があるかよ!!!」
「部外者がどうなろうと知ったことではない、僕はここの人々を守らないといけないからね」




