月はいつも僕らの側に.1
わたしたちはチャット仲間だ
趣味の掲示板で知り合い、年齢も近くお互いに近県に住んでいることがわかり、今は4人グループで話している
ゆきな【おつかれー】
としき【よぉ。早いな】
ゆきな【仕事そっこーで終わらせたよーみうは?】
としき【まだ来ていないな】
たくみ【おつかれさん】
としき【おつかれ、仕事終わったのか?】
たくみ【まだだよ。としきは?】
ゆきな【たくーおつかれ♪】
としき【俺もまだ仕事中】
たくみ【ゆきな、今日早いじゃん】
みう 【出遅れちゃった!みんなおつかれさまぁ】
としき【みう、おつかれ】
ゆきな【みうー!ねぇ、昨日のドラマ見た?】
――毎日その日にあった話や愚痴など、夜中まで盛り上がっていた
そんなある日
としき【あれ、みんなまだか】
みう 【としくん!いるよー】
としき【おう】
としき【あのさ、今時間あるなら少しいいか?】
みう 【大丈夫だよ!】
としき【じゃあ、ここにきて――――】
みう 【はーい】
としき【ログ消したら行くわ】
--------
みう 【ここかな?】
としき【きてたな、ありがとう】
みう 【どうしたの?なにかあった?】
としき【メール、交換しないか?】
みう 【急にどうかした?交換はいいけど…】
としき【4人もいいけどさ、2人で話したい】
みう 【うん、わたしも話したかったからいいよ】
としき【…………………@…………………………これね】
メール交換をしたわたしたちは
そのうち電話番号も交換することになった。
としき「みう、おまたせ」
みう 『おつかれさま!昼休み?』
「うん、やっとだよ…疲れたー」
『おつかれさまだぁ』
「なぁ?そろそろ俺たちが話しだして2年だろ?」
『そうだね!早いねー』
「それでさ…なんつーか」
『ん?どうかした?』
「もうすぐ誕生日って言ってたろ?」
『覚えててくれたの?うん!10月ね!』
「うん…あのさ、俺にも祝わせてくれないか」
『…え?あっ!こうして電話くれるってこと?』
「違う」
『ん?どういうこと?』
「会いたい」
『……あっ』
もしかしたら会うことになるかもしれない
とは思っていた
としくんのことは好き…なんだと思う
大事な人だから
あれから2年間変わらずにチャットもしていたし
毎日10通くらいのメールや
こうして通話もしていたから
それでも、わたしは会うことを躊躇していた
夫がいるから…
としくんの迷惑になりたくなかった
その日も、夫は荒れていた
職場で嫌なことがあったのだろうか?
最近、暴力とまではいかないまでも
わたしにあたることが増えていた
わたしは夫がこれ以上機嫌を損なわないように
細心の注意をはらい
無理やり抱こうとしてきたときも我慢して応じた
ある日、我慢が限界を超えて、喧嘩の末に外に飛び出してしまった
"声が聴きたい"
思わずメールをしてしまったけれど…
仕事中だよね…迷惑だよね…
2分も経たずにスマホが鳴る
「みう!どうしたんだ?」
『としくん…わたし…』
「泣いてるのか…?ゆっくりでいい」
『もう…どうしたらいいのかわからない…』
‐‐‐‐
俺はゆっくり話しを聞きながら
みうを落ち着かせた
本当は今すぐにでも会いに行って抱きしめたかった
それができないのがもどかしかった
『ごめんね…仕事中なのに…』
「そんなの気にしなくていい」
『ありがとう、落ち着いた』
「何かあったらいつでも連絡してくれ」
『ありがと…』
「つらくなったときは、空を見上げるといい」
『空…?』
「空はつながってるからな 同じ月や星が見られるだろ?」
『うん…そばにいてくれてるみたいで元気でる』
「そばに…いてあげたいけどな」
いけない、これは…言ってはいけなかった
『としくんがいてくれてるだけで、わたしは』
「みう!」
『え?』
「落ち着いたなら、家に帰りな 夜も遅いから1人で外にいさせるのは心配だ」
その先を聞いてしまったら、俺は…
『としくん…』
「なんだ?」
『わたし、会いたい』
「みう…」
『わたし、会いたい』
それは本心なのだろうか
旦那さんのことでつらかったから出てきた言葉ではないのか
俺だって会いたい
今すぐにでも
でも、今会ってしまって本当にいいのか
としき【たく、いるか?】
たくみ【今きたとこーどした?】
としき【話したいことがある−−−−にきてくれ】
たくみ【おっけーログ消せよ?】
としき【あぁ】
−−−−
たくみ【おーい】
としき【来てたな、悪い】
たくみ【どうしたんだよ】
としき【ネットの相手に会ったことある?】
たくみ【あるぞー昔な】
としき【その時はさ、相手、独身?】
たくみ【いや、既婚しか会ったことねぇ】
としき【その相手とはどうなったんだ?】
たくみ【続かねぇからな。2、3回で終わり】
としき【体だけだからだろ?】
たくみ【ちげーよ!】
たくみ【ちゃんと恋愛してたつもりだぞ、おれは】
としき【そうか…】
たくみ【お前…みうちゃんだろ?】
たくみ【やめたほうがいいぞ】
としき【そう思うか】
たくみ【あの子は純粋すぎる】
としき【…だよな】
たくみ【とし…お前会うなら覚悟決めろよ】
としき【覚悟?】
たくみ【1つの家庭を壊すかもしれないってこと】
たくみ【あの子は…うまく立ち回れなさそうだ】
としき【それは…わかってるつもりだ】
たくみ【それに…】
としき【なんだ?】
たくみ【いや、とにかく、よく考えろな】
としき【…あぁ ちゃんと考えるよ ありがとう】
たくみは昔、奔放な生活をしていたらしい
何事もなく終わったことも多いが
相手が離婚することになったこともあったから、
色々と思うこともあるのだろう
たくみ自身は離婚にはなっていないが
別居中だという
俺にあるのか…覚悟は
ゆきな【最近集まり悪いなー】
としき【なに愚痴ってんだ(笑)】
ゆきな【だってーフリーは暇なんだよー】
としき【まったく】
としき【あっ呼ばれた、行くわ】
ゆきな【はいはーい】
みう 【出遅れたーっ】
ゆきな【みうー!おそーい!】
ゆきな【としき戻っちゃったよー】
みう 【遅かったぁ忙しい時間なのかなー】
みう 【あっ、ゆきちゃん、昨日の見た?】
ゆきな【見た見た!あれさー】
しばらくして----
たくみ【お!盛り上がってるな、お嬢さん方】
みう 【たくみさん、おつかれさまー】
ゆきな【たくーおそーいっ】
たくみ【おい!おれは仕事中だぞ!(笑)】
みう 【あっ、ごめんそろそろ…】
ゆきな【うん!またねっ】
たくみ【みうちゃん、またなー】
みう 【またねー!】
ゆきな【たくはいつまでいけそ?】
たくみ【レス遅くていいなら夜中までいいぞ】
ゆきな【やったー!独り占めできるー(笑)】
たくみ【なにされるんだろ、おれ…】
ゆきな【ねぇ!そろそろ通話したい!】
たくみ【お前なー無茶言うなよ】
ゆきな【他の女には教えるのにー】
ゆきな【なんであたしには教えてくんないわけ?】
たくみ【あのなぁ…】
たくみ【こうして話せてるんだからいいだろ?】
ゆきな【…そっか。もう聞かない、ごめん】
たくみ【あぁ!!もう!!大事にしたいから】
たくみ【あんまり近づかないよーにしてんのに】
ゆきな【…え?】
どうやらこの2人も何か起こりそうである
「みう、おつかれ」
『としくん、おつかれさまー』
「なぁ?この前の話だけど」
『ごめんね、わがままだってわかってる』
「違うんだよ」
『え?』
「俺だって会いたいよ。そもそも俺から言い出したんだし」
『うん…』
「でもさ、旦那さんとのアレがなくても会いたいと思ってくれたか?」
『…それは…』
「そうだろ?本当に会いたくなってからでいいから。それまで待つよ」
『でもね、会いたいの』
「…いいのか?」
『うん…』
「俺、みうと旦那さんの仲を壊したいとか思ってるわけじゃないんだ」
『わかってる…』
「でもな。俺、みうさえ良ければ、これから先のことも…ちゃんと考えたいって思ってるんだ」
『としくん…』
「会ったこともない、チャットやメールだけでみうのことを何も知らないかもしれない。それでも…みうが大事だ」
嬉しかった
大事に想ってくれているなんて
わたしも……
『としくん、次のお休みに時間合わせよう?』
「わかった…待ち合わせは―――」
約束…してしまった
ついに会えるんだ…
心臓が口から飛び出そうなくらいドキドキしていたし、舞い上がっていた
そしてわたしは……
ここが浦和駅かぁ…
初めてくる場所だった
としくんはまだ…かな、着いていないみたい
まだかなぁ…
9月末とはいえ、暑い日が続いていた
日陰を選んで待っていたが、
メールの返事も本人も来る気配がない
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車で向かっていた俺は、少し遅れるとメールしたあと返事が見れずにいた
やべぇな、10分くらいかかりそうだ
みうが待っているから早くつかないとと焦る気持ちを落ち着かせ車を走らせた
やっと着いた…みうは…ん?
日陰のところにカップルがいるな…
車を停め、みうに電話をかける
…出ない。
音が鳴っている
もしかして…
着信音が鳴る場所まで走る
『離してくださいっ』
これは…みうの声だ
「みうっ!」
『としくん…?』
男に腕を引っ張られていた
「すいません。この子俺の連れなんすけど…」
俺は人より少し背が高いせいか、威圧的に見られるらしく…
男は捨て台詞をはいて去っていった
『としくーん…怖かった…』
「ごめん、俺が遅れたせいで…」
俺が着く5分くらい前からしつこく話しかけられていたらしい
ナンパは初めてだったようで、うまくあしらえずにいたようだった
俺はみうを車に乗せた
「会いたかった」
『わたしも…』
「なにか飲み物とか買ってから行くか」
『うん…』
さっきまで泣きそうだったのに、
妙に緊張した面持ちになったみうが可愛くてしかたがなかった
「すまんな、こういう場所で…」
『ううん。少し離れてはいても、外で会うわけにいかないもん』
「俺、大事にしたいから…それが目的だと思われたくないんだ」
『ありがとう。そう想ってくれてうれしい
ねぇ!それより…綺麗だねぇ、ここ』
みうはラブホには初めてきたらしい
物珍しそうに部屋を見てまわったり
ベッドに座りながらぴょんぴょんしていた
コンビニで買い込んできた飲み物や食べ物を食べながら
俺たちは話しを弾ませていた
しばらくして−−−
『そうだ、としくん ちょっと立ってみて?』
「ん?どうした?」
『わぁ…さっきも思ったけど、背が高いねぇ』
「183あるからな」
『すごーい、わたしより30cmも高いんだ…』
なんだかみうがバタついている
「…なにしてんだ?」
『あっ!いや、その…届かないなぁって…えへへ』
「まったく…こうするんだよ」
そんなつもりなかったけど…
やはりそうなってしまうよな…
それでも、大事に、大事に抱きしめた
次にいつ会えるかわからないから
この時間を堪能したかった
帰る間際、プレゼントを渡した
「少し早いけど誕生日おめでとう」
『としくん…ありがとう!あけていい?』
「もちろん」
『わぁ…可愛い…つけて!』
普段アクセサリーをつけない彼女に
何にしようかと思ったが
"三日月のモチーフのブレスレット"を選んだ
『としくん…ありがとう!…わたしに見送らせて?』
「俺が見送りたかったんだが…みう、またな」
『今日は本当にありがとう。幸せだったー』
「こちらこそ。大げさだなぁ(笑)」
楽しい時間はあっという間だ
俺はみうの言う通り車に乗り込み
その場を後にした
そう、俺は何も気づいていなかった
みうの"覚悟"に
こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。
再編集して投稿しております。




