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第37作品目:温泉に落としたのは、何のたまごだったのか誰も知らない

 男は雪山の中で遭難しかけていた。寒さに震えながら辿り着いたのは、暖炉の魔人がおでんの鍋を作っている所だった。


 意識を失った男は暖炉の前に寝かされていた。男はおでんの種にされ食われる前に逃げ出す────。


※ 結末は見方によってハッピーエンド、バットエンドどちらとも言えません。


 企画投稿時は童話〔その他〕作品でした。


・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。




 

 雪山で遭難した男は寒さに震えていた。ふらつきながらも、暖かな暖炉の炎に(いざな)われてやって来た。


 暖炉の側には大きな鍋でおでんを煮る暖炉の魔人がいて、男の姿を見るとニヤっと笑った。


 寒さに震える身体が凍りついたかのように、男は倒れる。


 ────気がつくと男は暖炉の側に寝かされていた。


 まだ、生命はあるようだ。このまま食われるのか……そう思った男は、煮え加減を見る魔人の隙をついて逃げ出した。



 間一髪とは、まさにこの事だろう。男と一緒に煮るつもりだったのか、ポケットの中にはたまごが入っていた。


 魔人の作るおでん鍋は湯気が立ち込め熱々で、美味そうだった。


 ────食われるのが自分でなければ。



 男は雪深い山の中を闇雲に走った為に、魔人に食われずに済んだ。しかしこのままだと凍死すると思った。


 一面雪の世界で白い(もや)が浮かぶ。吹雪いて来たのだろう。男は手足の感覚がなくなり自分が動いているのかどうかもわからなくなった。


「湯気……か」


 男はありがたいと思った。魔人のおでん鍋の湯気も魅惑的だったが、こんな雪の中に温泉が湧いてるなんてついている。


 怖いのは野生動物達がいる場合だ。熊は勿論、猿は結構凶暴だ。弱った男では襲われたら先ず勝てない。


 ────男は温泉の温度を確かめるように、そっと手を湯に入れる。


 寒さで麻痺した手を溶かすように、ジンジンと血が巡る。


 男は作法に構っていられず、服のまま湯に沈む。


 暖まった手で顔も洗う。温泉から出た後の事など忘れて身体を温めていた。


 ────ブクブクッ……。


 ザパァんと現れたのはたまごの女神だ。


 ────あなたの漬けたのは


 ……金のたまごですか?


 ……銀のたまごですか?


 ……普通のたまごですか?


 はぁ、何を言っているんだと思う男だったが、ポケットのたまごが入っていない事に気がついた。


「普通のたまごだ。返してくれ」


 金だろうと銀だろうと、こんな雪山で渡されてもクソの役にも立たない。


 暖まった後に役に立つのは腹を満たす普通のたまごだ。

 

「正直な方ですね。ならば金と銀のたまごをあげましょう」


 何を言ってるんだコイツ。


「いや、普通のたまごを返してくれ」


「あらあら、ならばブラフマーのたまごと交換しましょう」


「このたまごの女神、交換言いやがったな」


 金だろうと宇宙のたまごだろうと、食えないたまごなどいらない。


「それなら雪山の麓に孵してあげます」


 それなら……と言いかけ()()()意味に気づいた時にはもう遅い。


 無事に麓に孵った男は(ひな)、つまり赤ん坊として誕生した。


 魔人のたまごが普通のたまごだったのか、それは彼も知らない事だ。

 お読みいただきありがとうございます。


 話しのネタの大元は、自作品の暖炉の魔人と池ポチャ斧女神さまの話ですね。


 

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