第31作品目雪山近くの我が町の風景〜言わせたいだけの物語〜:
私がこの雪山近くにある町にやって来たのは、なろうラジオ大賞5に投稿された舞台がある、そんな噂を耳にしたからだ。
効能のある飲み物や、温泉もあるというので取材がてら調査に来た。
企画投稿時はその他〔その他〕作品でした。
・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。
私がボーっと美しい雪山を背景に町の様子を眺めていると、おかしなたまごが屋根を駆け回る姿が見られた。
雪の降り積もるこの町にいくつかあった会社や工場は、大企業のオカルト女が指名した金星人のマヤという名の会社の傘下になり、金魚人達がビールと温泉たまご造りに励んでいた。
金魚ビールの味には賛否あり、弱っているものほど美味しく感じるらしい。金魚人達はめちゃくちゃ元気なので、信憑性は低いようだ。
マヤには社長秘書のジーコと、黒いコスモスと呼ばれた黒里桜子という護衛がついていて、町を取り仕切る三日月商会も彼女達の味方だ。
三日月と言えばこの町の銘菓三日月堂の和菓子がある。あれは美味い、あれこそ当たりだと思う。
この町にのみ存在する謎の金魚人は、太平洋に浮かぶ黄金郷の住人だ。町には某国の密偵も露骨にうろつく。
雪山では奴らに山荘が破壊され暖炉しか残らなかった。ただでさえ雪山では子供の冬期遠足の事故が多いのに、誘拐事件まで起きたという。
それに、最近は帽子を被るお地蔵さままで出始めたと聞く。雪崩で助けられたものが多いのだろう。
騒がしい町だが、学校の文化祭などは楽しめた。私以外にメイド喫茶に泣いた連中の顔も見たいものだよ。
おっと、また一人消えた。あれはお人好しの男だから異世界に飛んでも苦労しそうだ。
なにやらゲームのクエストとやらでパスワードを入力すると、この地に呼ばれ、旅立つ事になるようだな。
金星人を名乗る連中もいるので、案外異界への扉が開いているのかもしれんな。
温泉も楽しみに調査に来て五年住んでみたが、まったく飽きない町だよ。
のんびりと暖炉の炎のゆらめきとを前に、私は自分が何者なのかをひたすら考える。
この町において、私は役割を与えられていない。何かを追うわけでもなく、作るわけでもない。
──────そして私は自分自身の存在意義に気がついた。
三日月堂では新年に「はっぴっぴ団子」なる和菓子を売り出すんだとか。私の役割は、ただ和菓子の名前を言うだけの為にある。それを言わせたいがためにいる。
魔法のような「はっぴっぴ」を繰り返す事で、聞いているものも楽しくなる。
ここは閉ざされた雪の降る世界。神の声を持つお方よ、我々のために、幸せの呪文を唱えてほしい。
「はっぴっぴ」と。
────幸せに包まれるといいな。
だいそれた無理な願いを祈った私は、もうじき消えることになるだろう。
人の業は深い。聴衆の熱望がひとつの思想に凝り固まってゆくさまを見ると、叫ばずにはいられなくなるのではないだろうか。
そして封印されたもう一つの魔法の言葉、禁忌の呪文のように聞かせるようにと、神の声を持つ方がまた一人導かれてゆく。
消えゆく私の最後の悪あがきに答える数多くの声が集まれば、あるいは奇跡は起きるやもしれないか……
お読みいただきありがとうございます。
企画投稿時は遊びネタ、全ワード使用作品のために投稿しました。今週まだお声を聞いてませんが、喉の調子心配です。




