第27作品目:5年って言ったのに、嘘つき……でも負ませんから
夫の転勤が決まって五年近く経ちました。夫の出向が終わり、私はもうすぐまた一緒に暮らせると思っていました。
それなのに────。
企画投稿時はヒューマンドラマ〔文芸〕作品でした。
・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。
私の夫は主にビールを造る酒造会社に勤めています。夫は雪の降る町の会社へ出向中です。五年は戻れないはずでした。
もともと本社も工場もあちらにあって、出向と言うよりも栄転のはずなのですが、受け止める人によって違うようです。
本来なら栄転と受け止めて、喜ぶべきでしょう。でも都会育ちの私には、夫が地方の会社へ飛ばされたように映りました。都落ち……ママ友達にそう思われるのも嫌でした。
夫の事は愛しています。私も仕事があります。織姫と彦星のように、一年に一度しか会えなくても、貴方の帰る所を守るつもり。いつでも安心して帰って来れるように……。
────なのに、世の中は時に非情なもの。都会の空気に触れて、すっかり変わってしまったあの娘のように、貴方は変わってしまった。
まず……私に送られてくるメッセージが目茶苦茶。向こうの事がわからないと思って、適当に嘘を並べ立てる人ではないと思っていたのに。
「ジーコが引き抜かれて、不味い事になりそうだ……」
「親会社に潰されて会社がなくなる」
「親会社に転職するには、ロダン勝負に勝たないといけない────」
「ギリギリ残れた。金星人の社長は気前がいい」
「金魚ビール最高! これをお前も広めて欲しい」
「黒いコスモスは美しい……」
…………えっ、私の夫UFOに拐われて洗脳でもされたの?
何を言っているのか、わからない。
何て答えていいかも、わからない。
最後のメッセージは多分浮気よね。
……約束の五年目。貴方はもうすぐ私の元へ帰って来ると思っていたのに。この冬を越せば、また一緒に暮せるはずだったのに。
────────嘘つき。
夫の元の会社がなくなったのは、調べてすぐに確認出来た。でも夫と電話で話してみても、言っている事がおかしい。離れて暮らす間に別人になったのかしら?
私は仕方なく休みを取って夫の会社へ乗り込んだ。
「────黒いコスモスさんは、美しいわ」
夫の言葉に嘘はなかった。社長は、金髪で金眼って金星人よね。黒いコスモスさんは黒髪の和美人で、所作が美しい。
────私は地元の仕事先を辞めて、アパートを引き払い夫の会社に中途入社していた。
「桜子様は男共に穢させない!」
気付いた時には桜子ファンクラブを起ち上げ、夫や男共と戦っていました。
……いえ、気付いていたから桜子様には悪いけれど利用した。もちろん素晴らしい方なのは確かなので応援もしますが。
社長秘書のジーコさんが協力してくれたのは助かりました。ジーコってサッカーの神様ではなかったけれど、私には救世の仏様。
夫が夢中になるものを肯定しつつ、のめり込む事のないようにやんわりとブロックするだけ。
────夫婦と言えども五年近くも離れて暮らせば、愛情が薄れていくものです。
私は夫の最大の理解者である事を意識させて、夢中になるものからこっそりと引き剥がすの。
────だって私は夫を愛していますから。
お読みいただきありがとうございました。
読み返すと、社長と黒いコスモスの髪の話しの部分がごちゃ混ぜで、なんだかわからない人になってました。
投稿時は読みづらさに、まったく気がついていなかったんですよね。
特別企画にも異世界、現実恋愛作品をそれぞれ投稿しました。「リドルカ女傑は恋戦鬼」の方はベッタベタのありふれた恋愛物語です。




