第25作品目:社長秘書になった元ぼやき事務員のジーコさん、パスワードに告白されたもよう
五年勤めた前の会社でハニトラにかかり、自主退社してしまったぼやき事務員のジーコ。
新しく誘われた会社で社長秘書となり、初めてのお給料が貰える。胸を高鳴らせ銀行へ行ったのだが……。
企画投稿時はコメディー〔文芸〕作品でした。
・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。
「残高はありません」
────いや待て、目の錯覚だ。ないわけないよ。
……五年勤めた会社を辞め、金星人と名乗るマヤ社長の秘書についた私は、ウキウキしながら銀行へ向かった。
薄給ながらも楽しみにしていた前の会社は、しょせん地味な事務員。今度の会社は社長秘書だよ? 期待も高まって、ない胸も膨らむってもんだよ。
「残高がありません」
────嘘でしょ? 生命の危険を侵してまで働いて、まさかの無給だと。
「どうなってるんですか!」
いくら恩人でも、払うもんは払ってもらうよ。お給料ないと生活困るもん。
「困っているようだねジーコ君」
私がぼやきながら騒ぎ起こしていると、果てしなく胡散臭いたまごの銀行員がススッと近づいて来た。
「いい、私は手を汚すこと無く片手で三個のたまごを割ることが出来る能力がある。叩き割られて、スクランブルエッグになるのが嫌なら失せな」
ビクッとしてたまごの銀行員はさがってゆく。
まったく……手間かけさせる。くれるならもっと良い能力を下さいよ、神様さぁ。
「メッセージが届いてます」
測ったようなタイミングのメッセージ。会長令嬢から持たされた新型スマホは、絶対に監視付きだ。
マヤ社長は人は良いけれど、基本アホなんだよ。何も気にせず、社員用に携帯を義務づけている。
まあ某国への対策もあっての事だけど、私にとっては給料の振込ミスの方が一大事だよ。
「給与のことだが、我が社は現金主義なんだ。支給会社まで戻りたまえ」
ハァ、疲れた。始めから言って欲しい。あと支給が至急とかかってんだよって、わざわざメッセ入れんな。
────会社に戻ると、マヤ社長が待っていた。
「なんか手違いで、お給料ロッカーにあるんだって」
うん、このマヤ社長はまったく疑っていないね。この場合のロッカーとは、機密文書などをしまっておく金庫部屋だ。
金庫は最新式の自立発電型のものだ。無駄に技術と重さがあって、襲撃されても運び出すのに苦労する。
そして肝心のパスワード画面にはこう書かれていた。
「私を愛していますか?」
………………ぅっ、ゼェェ!!!!
何度目だよ、このやり取り。これ何ハラ?
お給料のため、私は仕方なく該当ワードを入力する。
「ア・イ・シ・テ・ル」
────カチャリ……ガチャ。
「私もあなたを愛してます」
はぁ? 何、今の間? おいっ、いま開いた鍵をかけ直したよな?
「もう一度入力を……」
「アイシテル」
────カチャ!
よし、開いた。地味な事務員の反射神経舐めんなよ。あと会長、暇なん?
金庫の中には……中には…………十キロ相当の、金魚型の黄金。本物だよ、重いし。
現金って言ってたよ、確かに合ってるよ、現実の金、略して現金ってか。けどさ、多いって。
相場でグラム一万円として、億越えあるよ。マヤ社長はアホだけど、会長はバカなの?
社員全員分でも多過ぎて、税務調査が怖いんだよ?
────結局全て私が調整して、前の会社のお給料三倍と、ボーナスをせしめた。でも疲れた……。
私の次の目標は、上司二人に常識を教え込む事になったようだ。
お読みいただきありがとうございます。
この物語は会長令嬢がジーコさんを気に入って、彼女をいじる話しになっています。
心を読める可能性のある会長にとって、ジーコさんの反応が楽しいようです。
オリジナルキャラの真守葉摘は、公式企画、小説家になろう Thanks 20th や夏のホラー2023にも掲載されています。




