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第11作品目:暖炉から出てきたのは、たまごの怪盗と……

 冬になると雪山にかわる山近くの町に、たまごの怪盗が現れるようになった。


 たまごの怪盗のやって来た家の子供は、原因不明の病から回復する事が出来た。




 企画投稿時はアクション〔文芸〕作品でした。


・作品についての思いやお話しなどは後書きに掲載します。

 某国某県某町。雪山に近いその町では三日月の晩になると、たまごの怪盗が現れるという。


 冬になると当然雪が降り積もり寒い地域だ。化石燃料だけでは暖の確保が間に合わない所も多い。そのためかなのか煙突を作り、暖炉がある家もかなりあった。

 

 町の民家に煙突がある家が多いので、クリスマスにはサンタさんがやって来やすいと謳っている地域でもあった。


 でも実際は積雪が多くて雪も湿っぽいために、雪かきという重労働作業が毎年ついて来る。


 また春先になると、謎の奇病で生命を落とす子供が多い。夢のような(うた)い文句の裏側は、あまりにも夢のない重い現実ばかりがあった。


 ────だからであろうか。都市伝説的な噂が町に流れ出したのは。


 たまごの怪盗は、雪解けの季節に現れ始めたという。その頃の時期になると暖かい日もちらほらあって、暖炉を使わない日も出でくる。


 たまごの怪盗は、そういう日を選んでやって来た。


 サンタさんがやって来るのは煙突から。でも暖炉の煙突というのは、実際は煤で真っ黒になる。


 真っ黒のサンタさんに家の中を歩き回られると、煤だらけにされてしまうだろう。清掃代や労力を考えると、プレゼントよりもかえって高くつくかもしれない。


 ────他にも不法侵入だったり泥棒だったりと、あげればキリのない夢の代償。


 たまごの怪盗もはじめは町の人には良くないイメージで伝わった。たまごの怪盗と呼ばれたのはそのためだ。



 たまごの怪盗は、大きな音を立てて暖炉から現れる。煤だらけで真っ黒になった、たまごの怪盗……まるで箱根の名物の黒い温泉たまごのようだ。


 たまごの怪盗は怪盗だから、足跡など残さない。病の子供に怪しげな────金魚ビールと名の付く液体を無理やり飲ませて行く。


 金魚ビールという謎の飲み物と温泉たまごを置いて、たまごの怪盗は玄関から出て行く。暖炉は降りれても登るのは難しいようだ。


 子供以外に家人がいなければ、鍵はどうするんだと言う話しだが、たまごの怪盗だけに施錠もバッチリという。


 怪盗なのに、物は盗まず物を置いて行く。その奇妙なたまごの怪盗の、奇跡は子供の奇病が治ることだった。


 ────現代のネズミ小僧、いやナイチンゲールか。ネズミ小僧は結局盗人なのは否めず、ナイチンゲールは優しい人と言うわけではなかったようだが……たまごの怪盗は果たしてどちらだろうか。


 町の人々はざわつく。金魚ビールなるもの塩っぱさと、温泉たまごが合うからだ。



 たまごの怪盗の思わぬ活躍で、雪山近くの町の子供達は奇病に悩まされる事がなくなったという。


 町の居酒屋には金星人おすすめの金魚ビールと温泉たまごのセットが密かに置かれている。


 たまごの怪盗は金魚人に雇われて市場調査を行っていた宣伝マンか、三日月の夜に現れる為に、和菓子で有名な三日月堂の(ゆかり)のもの、そういう噂もあるが真相は謎のままだ。

 

 お読みいただきありがとうございます。


 たまごの怪盗が凄いのか、噂を知って煙突のない家は普通に玄関から入れてもらったのかは想像にお任せします。


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