三河の住まい
月曜日から、三河は高校に復帰した。
三河は教室に入ると、教室の片隅で連合艦隊の三条神流に連絡した。
「無事に登校しました。後、例の計画ですが連合艦隊に支援を要請します。」
「分かった。だが、支援要請した以上、必ず実現させるんだ。連合艦隊も最大限の努力と支援をする。」
「女なんて、怖くはありません。我々と同じ人間です。」
三河は電話を切る。
窓から、赤城山や谷川岳がうっすらと見えた。
(新潟はあの山の向こうか。俺はこの群馬で一旗揚げてやる。絶対に。)
と、三河は思う。
放課後、女子達を振り切って鉄道研究部の部室に入ると、そこにあった鉄道模型を調べる。
短い編成だったが群馬を走る115系や211系、107系があった他、貨物列車の模型もあった。
線路も、KATOの複線プレート線路があった。だが、ジオラマで運転するにはとても足りない。せいぜい2列車を走らせる程度だった。
(これでは、潰されるのも分かる。あのとき、大量にあると思ったが実際は僅かな量だな。俺の所有する物を足しても3本だしな。)
三河は、新潟で走る列車の模型を持っていたが、それでも僅かな量である。
(やはり、連合艦隊と共に行動するしかない。)
三河は三条神流に、霧島が所有していた車両を知らせる。
「分かった。だが、その前にレールが使えるか確認しなければな。Tomixのクリーニング車両を使用して、レールを整備した方がいい。しかし、レール全部持ち出すのは無理だから、そこでやるしかないな。明日、クリーニングセット一式持って行くから、それを使え。」
「はい。」
「それから車両は持ち出せるか?」
「115系と機関車なら何とか今の状態で持ち出せます。」
「なら、メンテナンスをしよう。お前の家でやるか?それとも連合艦隊に委託するか?」
「私の家で行います。」
連絡を終えると、Tomix製の115系4両セットと、KATO製のEH200をスクールバックの中に入れる。
「どうして模型を持ち出すの?」
と、松宮芽衣子に聞かれる。
「家で整備する。放置されていたから、動くか分からないからな。って言うわけで、今日は帰るから。」
「なら、私も帰るよ。」
「えっ?」
「大丈夫よ。変なことはしないから。」
三河の住まいはアパートだったが、両親はいない。
「離婚して追い出された。今は親父とその親戚が家賃と仕送りを払ってくれているがいつまで持つことやら。だからバイトしている。まあ週2日なんだけどね。」
と、三河は言う。
芽衣子は部屋の様子を見る。
「綺麗にしているんだね。」
「俺以外誰もいねえからな。散らかすバカが。」
三河は鉄道模型のケースを開くと、めん棒にクリーニング液を染み込ませ、モーターを空吹かしさせながら車輪を磨いた。
「夕飯作るね。」
「えっ。自分でやるからいいって。」
三河は言うが、芽衣子はキッチンへ行くと、夕食の支度を始めた。
「三河君の好みに会うか解らないけど。」
と、芽衣子が言った時、踏切の音が聞こえた。
倉賀野貨物ターミナルの入換線の踏切の音である。
アパートの裏が入換線だ。
芽衣子が夕食を作り終えたとき、ドアホンが鳴った。
玄関に行くと、そこには三条神流がいた。
「明日って言ったんだが、霧降が部室の奴持ってけって。」
と言って、三条神流はTomixのクリーニング車両を渡す。
「ありがとうございます。」
「明後日取りにくるから、その時に返してくれ。ところで、今日は客か?」
「ええ。」
三河が言った時、芽衣子が様子を見に来た。
「ああ。あんたか。」
と、三条神流は芽衣子を見ていった。
倉賀野貨物ターミナルに常駐するDE10‐108が汽笛を鳴らし、推進でコンテナ車をヤードに入れる。
「三条君。」
「霧島の事を忘れたことはない。元に、こいつは霧島の夢を叶えようと動き出したんだ。邪魔立てするな。」
「邪魔立てなんてしないわ。私は、二度と好きになった人を死なせない。キリシマ艦隊遭難事件。あんな事件を起こしてはならない。だから私は、三河君を援護する。貴方だって、こんなところでグズグズしてないで、長野行ってクイーンエメラルダスを打ち取ってきたらどうよ。」
「エメラルダスは、彼氏が居る。それに、俺は女目当てに旅をしているのではないのだ。」
「なんでもいいけどね。」
三条神流は芽衣子と話をした後、帰っていった。