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とある鉄路の模型列車  作者: Kanra
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三条神流

「霧島の鉄道模型は、未だに倉賀野高校の部室に残されたままか。」

 と、霧降が聞く。

「ええ。」

「霧島は学園祭で鉄道模型のジオラマを作るって夢を実現させようとしていた。だが、倉賀野高校の女子達の圧力で実現できなかった。俺達は、倉賀野高校ではなく高崎第1高校でやろうって提案したんだが、やはり集団レイプされるのが怖くて実現出来なかった。」

「なぜ、夢が女子の圧力で実現出来ないのです。それに、もう一つ疑問が残ります。なぜ、キリシマ艦隊は高崎第1ではなく、倉賀野高校に入ったのかと言う疑問です。」

「キリシマ艦隊は、引っこ抜かれたんだ。高崎第1は男子が多いが倉賀野は女子ばかり。男女共同参画社会ってことで、このような現象を無くそうと日教組の奴等が動いた。そして、キリシマ達4人がその犠牲になるように、故意に不合格にされて―。」

「では、私が倉賀野高校に居るのも、日教組の圧力ということですか!?私だって、高崎第1が第一志望でしたのに、転校生の受け入れはしないと言う事で仕方なく倉賀野へ。」

 霧降は肩を落とした。

「大人って、勝手ですよ。何でもかんでも自分の都合に合わせて動いて、周りの人の気持ちも考えない。結果、キリシマ艦隊の事件が起きて、その穴埋めのために―。そもそも、離婚するなら結婚するな。追い出すなら子供産むな。」

 三河は舌打ちをして言った。

 三河は三条神流と共に、倉賀野へ戻る。

 両毛線の列車は115系だったが、高崎から倉賀野までの高崎線はE231系だった。

 115系はボックスシートとロングシートのいわゆるセミクロスシートだ。

 特にドア横の2人がけの席は、学生カップル専用席のような物で巷では「リア充シート」と呼ばれていた。一方で、211系や107系はロングシートが主だが、トイレの前の席は列車の進行方向に対し直角に、それも2人がけになっている。 

 この席の窓側に座った人は、通路側にも座られると座席から出るのが難しくなる。特に、女子をナンパしようとする男はこの席の窓際に女子を座らせ意地でも落とそうとする。もしくは如何わしい事をするカップルがこの席で行為を行い、こうしたことから、この席は、115系の「リア充シート」に対し「レイプシート」「ラブホシート」と呼ばれるのだ。

 三条神流からそんな話を聞きながら、三河は倉賀野貨物ターミナルに向かう。

 倉賀野貨物ターミナルはかつて、陸軍の専用鉄道であったため、その痕跡が残っている。特に、入換線の一部は、河段段丘の段丘面から飛び出して高架線になっている。かつては更に先まで線路があったのだが、一部が廃線となり、中途半端な橋になってしまっている。

「まるで銀河鉄道999のカタパルトレールだ。もし、高崎がメガロポリス駅なら、スリーナインはここから宇宙へ向けて飛び上がるんだろうな。」

 と、三条神流は言う。 

 三条神流は松本零士の作品が好きらしく、カメラバックには銀河鉄道999号のヘットマークとクイーンエメラルダス号のストラップが付いていた。


「さっきお前が言っていた事だが、まさしくその通りだ。銀河鉄道999だって、日教組やらPTAやらアホな大人どもが難癖つけて来たせいで、中途半端に終わっちまった。夢を乗せたC62‐48号機が引く銀河超特急は何処へ行ってしまったのだろうか?」

 三条神流はうつむく。

「勝手な大人の言う事に、なぜ従わなければならないのです。我々は操り人形でも、ロボットでもありません。人間です!」

「まったくだ。」

 三条神流は小石を投げる。

「俺もお前と同じく、新潟県出身だ。親父は公務員。母さんは水上温泉の旅館の次女だ。更に言うと、曾祖父、祖父は海軍で、曾祖父さんは戦艦「三笠」に乗ってロシア海軍と戦って、爺さんは駆逐艦「雪風」で真珠湾、ミッドウェイ、そして、戦艦大和の海上特攻に参加した。」

 三条神流は普段、多くを語らないと霧降から聞いていたが、自分の経歴の話を始めたため、三河は意外に思った。

「親父も成り行きでは自衛官と思ったのだが、周囲から「自衛隊は人殺し」って言われ欝になり、自衛隊に行けず、公務員をしている。それを親父のダチは根性無し!って言ったらしい。んで、俺が親父の敵討ちで自衛隊行こうって言い出したら周りの奴は人殺し!って言う。独断と偏見で筋が通れば、テロなんか起きないっての。」

 三河は溜め息をついた。

 DE10が入換線に来たが、停車するとまた戻って行ってしまった。

 背後を振り返ると、松宮芽衣子がいた。

「こんなところで何してるの?今週、学校来なかったし。別に風邪ひいたって訳ではないでしょ?」

 芽衣子はニコニコしながら言うが、三河にはそれが腹立たしかった。

「これ、休んでた分のノート。」

 芽衣子はノートを渡す。

「キリシマ艦隊の事件だが、詳細を知っているのか?」

 三河は思わず聞いた。

「事故死って知らされた。」

 三河は余計に腹が立ったが、三条神流に止められた。

「こいつらはキリシマ事件に関係はない。原因作ったのは日教組のバカな大人共だ。文句あるならそっちに言え。」

「しかし、先日私がされたのと同じ事をされた結果、キリシマ艦隊遭難事件が起きたのではないのですか?」

「その通りだが、だからといってこいつらを恨んで言い分けでは無いだろう。こいつらも、俺達と同じ世代なのだぞ。」

「霧島さんの夢を俺が実現させることは出来るでしょうか。」

「解らん。だが、やるというなら連合艦隊は最大限の努力をする。お前の気持ちが揺らぐ事がなければな。」


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