C62‐2
部室に着くと、霧降達の目付きが普段と違っていた。
「どうしたのです?」
「三条。緊急事態だ。来年、ヨーロッパから「オリエント急行」が来日する事は知っているだろうが、JR東日本とJR西日本の発表によると、牽引する機関車にC62が含まれている。それも、上越線で。」
「なんですって。」
三条神流は驚いた。
「そして、JR西日本、JR東日本の発表だが梅小路運転区のC62‐2とC62‐1を高崎機関区に貸し出し、代わりに高崎のD51とC61が梅小路に貸し出されるそうだ。」
「いつです?」
「今年の12月からだ。そして、12月24日と25日の「SLクリスマス号」の牽引機になるそうだ。」
「―。」
三条神流は驚きのあまり立ち尽くした。
三条神流が憧れるC62が高崎機関区にやって来るというのだ。そして、真冬の上越線で雪景色の中を突き進む。
夢にまで見た光景が現実になろうとしているのだ。
「でも、三条君。貴方は無理ね。」
と、松宮芽衣子が言い、三条神流の携帯を奪い霧降にメールの画面を見せた。
「返せ。」
三条神流は携帯を奪い返してから、
「夢にまで見た光景だぞ。C62が高崎に来るのだ。しかも、雪景色の中を突き進むなんて、最高じゃないか。」
芽衣子は溜め息を着く。
「C62のために、エメラルダスからの誘いとチャンスを逃すというの?」
「銀河鉄道999を見てから憧れていたC62の走る姿が見れると言うのに、なぜそれを諦めなければならない。憧れを捨てろというのか?」
「憧れのために、好きな人を棄てるというの?」
「いつ俺はエメラルダスと付き合うと言った?」
「恋愛と鉄の塊とどっちが大事よ!」
「なんだとこの豚!もう一度言ってみろ!」
三条神流は地雷を踏まれて激怒する。
「止めろ!」
霧降が止める。
「落ち着いて考えてみろ。C62はオリエント急行が来るまでの間、約1年間高崎に来るんだ。そのスタートダッシュに居られないだけで、お前が長野から帰ってきた後も、C62は高崎に居るんだ。一早く見たいのは解かるが、そのために、一生に関わるようなチャンスを逃して後悔したら、元も子もないぞ。」
「しかし―。」
「エメラルダスはお前に何を教えた?エメラルダスは連合艦隊に何を教えた?」「―。」
「エメラルダスに導かれたのなら、今度はお前が導け。」




