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とある鉄路の模型列車  作者: Kanra
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模型店

 三河は松宮芽衣子と共に高崎にある鉄道模型店に行く。

 自転車でも行けなくは無いが、三河の足の調子が思わしくなく、車椅子に乗っていたため電車とバスで行くことにした。

 倉賀野駅で芽衣子は駅員にスロープを持ってきてもらい、車椅子に乗る三河と列車に乗る。

 高崎駅で下車するときも、待機していた駅員の手を借りて下車して改札を抜ける。

「ごめん。やり過ぎちゃって。」

 と、芽衣子は言う。

「こっちこそ。気がつかなくって悪かった。だが、もう少し良識あるやり方ってもんが出来ないのかね。」

「だから、お詫びとして今日の往復の運賃は私が持つから。」

「はいはい。」

「それに、二人でデートしたいって願いも叶っちゃったし。」

 芽衣子は笑う。

 倉賀野高校の学園祭まで2週間。

 今日は鉄道模型店に行き、ジオラマで使うアクセサリーやストラクチャーを購入する。

 高崎市郊外のショッピングモールに着くと、鉄道模型の専門店へ向かう。

 その途中で、三河は見覚えのある顔を見た。

 連合艦隊の照月中佐だった。

「そういや、照月中佐は靴屋でバイトしているって言っていたが、ここだったか。」

 と、三河は横目で見る。

 照月は上司に何か言われた後で、溜め息を付いていた。

「ちょっといいか?」

「うん。」

 芽衣子に車椅子を押してもらって、照月に会う。

「三河准尉か。恥ずかしいところを見られてしまったな。」

 照月が苦笑いを浮かべる。

「せっかく商品整理して上司呼びに行った間に、ガキがとっ散らかしやがって。「してないじゃん!サボってんじゃないよ!」だってさ。ついてねえよ。どうもこの職は適職じゃないらしいんだが、やるしかないよ。」

 照月は溜め息を付きながら商品整理を始めた。

「ふざけんじゃねえ。」

 と、照月はつぶやいた。

「手伝うわ。」

 芽衣子が言い、照月を手伝おうとした。

「いや、お客にやってもらったら、また怒られちまう。」

 照月は言うと、三河に向かって「早く出て行け」と言う雰囲気を出した。

「行こう。」

 と、三河が言い、芽衣子は車椅子を押しながら店を後にした。


 鉄道模型店でジオラマに使うアクセサリーやストラクチャーを購入しようと言ったのは三河だった。

 高崎第一高校や高崎車両センターでのジオラマ運転時に「ここが駅だ」と言ってもそこにはホームはなく、信号も無いため説得力に欠けた。特に高崎第一高校では「どこが駅だ」とヤジが飛んだ程である。

「随分いっぱいあるんだね。」

 と、芽衣子が模型店で言う。

「ああ。鉄道模型って言っても、かなりのメーカーがあるからな。」

「そうなんだ。それにしても、さっきの理不尽よね。」

「何が?」

「照月君。せっかく商品整理したのを第三者が台無しにしてそのために怒られてやり直しなんだから。」

「まあな。「何これ!俺がやったの目茶苦茶にしやがって!」って怒鳴りたいだろうな。まあ、本当にダメな奴やクズな奴も中には居るがな。」

 三河は言いながら、高架駅舎のセットを見る。

「ふーむ。新品は高いな。旧製品だけどTomixのニュー高架駅セットを2セット買えるぜ。」

「なら、旧製品2セット買おう。ホームの有効長は?」

「720mmだから、フル編成は入らないよ。」

「ああ。フル入れるには、追加で部品買うしかないか。」

「あと、線路もな。ただ、新品の半分以下で2セット買えるって思えば得だ。それに、2セットあれば、待避線も出来るから留置線を設けるために分岐器や制御機器を追加購入しなくて済む。」

「頭を使ったってわけね。」

「三条少佐の教えだよ。頭を使えって。」

 三河は笑う。

 しかし、中古品でも予算をかなり使ってしまった。

「地上駅のホームはどうしよう。」

 芽衣子は三河と自分の財布と予算案を見ながら言う。

 三河は店員に、

「KATOのローカルホームの設計図だけってありますか?」

 と聞くと、

「それはホームページ等からダウンロードして頂いた方が早いと思いますよ。」

 と答えながら、店員がKATOのページから設計図だけをダウンロードして印刷してくれた。

「設計図だけ貰ってどうするの?」

 と、芽衣子が聞く。

「トレーシングペーパーにトレースして厚紙を使いペーパークラフトで再現する。高架駅だと折れちまうが地上駅ならば、ペーパークラフトでいける。」

 と、三河は答えた。

「あっ。また頭を使ったってわけ?」

「違う。今回はとっさの思いつきだ。」


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