卑怯者
三河が連れて行かれたのは、倉賀野貨物ターミナルの入換線の終端部だった。
「ここまで機関車が来ることは滅多に無いでしょ。」
と、芽衣子が言う。
「私ね、三河君の事が好きなの。だから、何度も二人でデートしたいって言ったの。」
芽衣子は三河に告白した。
「三回目よ。いい加減答えて。って言うより、付き合って。芽衣子と。」
水樹麗奈も言う。
三河は溜め息をつき、入換線の終端部を見る。
「どこに行ったんだろうな。夢を乗せて走る銀河超特急は。」
と、三河はつぶやく。
三河は何も言わず、列車が来ないかと待ってみたが、ここまで列車が来ることは滅多に無い。
水樹麗奈は溜め息をつくと、芽衣子と共に三河をまた拷問部屋へ連れて行く。
ベッドの上に三河を縛り上げると、
「こうでもしないと、芽衣子の気持ちが解らないでしょ。」
と、水樹麗奈は言い、拷問部屋を出る。
芽衣子は縛り上げられた三河を少し弄って、
「こうしないと、私の思いは伝わらないでしょ。」
と言った。
「俺に言いたいことがあるなら、正々堂々やれ。身動き出来ないようにした上で身体を押し付けて来るなど、卑怯者だ。俺は逃げも隠れもしない。」
「いいえ。何度も伝えて、その度にはぐらかされた。こうなった以上、ベッドに磔にしてでも伝える。そして、要求が飲まれるまで攻撃する。私はバカではないから、最後の強硬手段に出たのよ。」
「バカでは無くても卑怯者だ。」
芽衣子は深呼吸をした。
「そうね。身動き出来ないようにして攻撃するのは、卑怯よね。でも、伝えてもそれを聞こうともしないで鉄道を追う人よりはまだましよ。」
と、芽衣子は言うと、冷たく笑って更に攻撃をしかけてきた。
翌日の放課後、三条神流は三河の様子を見に倉賀野貨物ターミナルに来てみたが、その時の三河はボロボロになっていた。
「大丈夫か?」
と、三条神流が聞く。
「死ぬ。マジで死ぬ。」
三河は用水路に嘔吐する。
「しっかりしろ!」
三条神流が必死に呼びかける。
三河は酔っ払いが千鳥足で歩くような状態になっていた。
そこへ、松宮芽衣子と水樹麗奈も来た。
「貴様!三河に何をした!」
三条神流が怒鳴る。
「一晩かけて、芽衣子の好きだって思いを身体に染み込ませた。一対一でね。まあ、状況としてはこんな感じだったけど。」
水樹麗奈は蟻を摘むと、蜘蛛の巣に貼り付けた。
「逆らえば、三条君もこうなるよ」
「言いたいことがあるなら、正々堂々やれ。身動き出来ないようにした上で身体を押し付けて来るなど、卑怯者だ。」
「あなたも、三河君と同じことを言うのね。」
「ああ。三河は連合艦隊所属の准尉官で俺が教官だからな。」
「でも、まもなく芽衣子の物になる。」
「それでも、連合艦隊所属の人間であることに変わりはない。」
三条神流は鋭い目付きで言う。
「まあいいわ。でも、笑っていられるのも今のうちね。」
と、水樹麗奈がニヤリと笑って言い、麗奈だけは帰路についた。
「大丈夫です少佐。ただ、足の付け根が痺れて言う事を聞かないのです。」
三河が言う。
「車椅子が必要か?」
「普段の生活には支障ありませんが、連合艦隊として活動する場合に必要かもしれません。」
「分かった。艦隊の中に車椅子を貸してもらえる奴が居るか調べてみよう。」
三条神流が言った時、
「曾爺ちゃんが使っていた車椅子を使って。」
と、芽衣子が言った。
「貴様に援助してもらう筋はない。」
三条神流が言い放つ。
「付き合い始めることになるのだから、私も何かしないと。実際、私がやりすぎたからこうなってしまったから。」
芽衣子は言う。
「大丈夫?肩に掴まって。」
芽衣子は三河を抱き起こす。
「この後ラブホへ連れ込もうって事か。」
「違うわ。三河君の家まで送るの。」
と、芽衣子は言うと、三河の家の方へ三河を抱えて歩き出した。




