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とある鉄路の模型列車  作者: Kanra
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アルカディア号

 三河は南条美穂が持っていたアルカディア号の模型を思い出す。

 3連装の主砲やハープン発射口、魚雷発射管等が粉々になり、深緑色の船体は折れ曲がっていた。

(もし、クイーンエメラルダス号とアルカディア号が戦ったら、アルカディア号はあんな形になってしまうんだろうな。)

 三河は思う。

 三河も最近は三条神流の影響で松本零士の作品に興味を持っていたが、彼はエメラルダスやハーロックが登場する作品ではなく、「宇宙戦艦ヤマト」が好きになった。

(もし、宇宙戦艦ヤマトとクイーンエメラルダス号が戦ったらどうなるかな。波動砲でクイーンエメラルダス号が吹っ飛ぶか、逆に側面レーザー砲でヤマトが蜂の巣か。)

 三河は想像したら笑ってしまった。

(それにしても、なんで南条さんは壊れたアルカディア号を持っていたのかな?)

 と、気になり三河は放課後、倉賀野貨物ターミナルで撮影をしていた三条神流に訊いてみることにした。

 だが、三条神流はそれに答えることは無かった。

「遮るな怒らせるな私を。エメラルダスと付き合う掟。これに従わなかった奴は、ああなってしまったのだよ。だが、撃たれたから撃ち返すと撃ち返したほうが悪くなる。ふざけんじゃねえよ。これじゃあやられる一方じゃねえかよ。姉ちゃん。」

「誰ですそれは?」

「誰でもいい。俺も、彼女のためならたとえ仲間でもあんな姿にしてしまうだろう。俺は彼女と同じく、卑怯者や卑劣な人間、ミスをしても謝れない人間を許せないからな。」

 三条神流は言いながら、地上を這いつくばっていたゴキブリを掴みそれを用水路に張られたコガネグモの巣へ投げつけた。

「では、南条さんは?」

 と、三河が言った時、背後から水樹麗奈と松宮芽衣子に取り押さえられた。

「一緒に来て。」

 と、芽衣子が言う。

「何をしている。」

 三条神流が言う。

「何もしていない。ただ、これは芽衣子の気持ちを伝えるためよ。」

「蜘蛛みたいな奴だな。何もしていない人を捉えるなんて。」

「貴方だって、地上を這いつくばっていただけで、何もしていない虫を掴んで、蜘蛛の巣に投げつけて蜘蛛の餌にしたでしょ?」


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