姉と弟
10月16日。この日は高崎車両センターのイベントで、連合艦隊は鉄道模型のジオラマを作って展示していた。
そこには、三河の姿もあったが、芽衣子達倉賀野高校の生徒は居なかった。
「やっぱ、鉄道イベントでやると、面白いな。」
と、霧降が言う。
「ああ。ようし!んじゃ早速一発目の解説プログラム始めますか。」
「三条少佐。呼び込み頼んます。」
「はいよ。」
三条神流がメガホンで呼び込みをした。
やはり、鉄道好きの親子連れが集まってきた。
三河が案内役となって、解説プログラムをする。
それが終わった時、群衆の中から紺と赤のマントを身につけた女の人がジオラマの前に現れた。
「カンナは居る?」
と、三河に聞く。
「カンナ?」
「あっ私の弟の三条神流。」
「ええ。あの、貴方は―。」
「大丈夫。怪しい人じゃないから。この格好と顔を見たら解るよ。クイーンエメラルダスの格好だもんね。」
三条神流も気が付いた。
「エメラルダス。」
「エメラルダスなんて、私は貴方の姉なんだから。」
「すまん。姉ちゃん。」
連合艦隊の前に現れたのは、三条神流が長野で出会ったという「エメラルダス」と言う人だった。
「元気そうだね。カンナ。」
「姉ちゃんも。」
「イベントだって言うから、長野から来ちゃったよ。」
三条神流と話す。
「失礼ですが、お名前は?」
霧降が聞く。
「南条美穂。まあ、みんなクイーンエメラルダスって呼んでるけどね。」
と、南条美穂が笑った。
三条神流は南条美穂に彼氏がいて、彼氏も鉄道好きと聞いていたため、彼氏も一緒だろうと思ったが、その姿が無いため、
「彼氏さんは一緒じゃないのか?」
と聞いた。
「私に彼氏はいない。私が男としてみているのは、弟だけ。」
と、南条美穂が答える。
「どういうこと?」
「別れた。所詮、男なんて身体目当ての奴だった。約一人を除いてね。クイーンエメラルダスに会うために銀河超特急で旅をする、弟を除いて。」
南条美穂は言いながら、破壊された模型を見せた。
それは、キャプテンハーロックが座乗するアルカディア号の模型だった。
「あいつをキャプテンハーロックと呼ぶなんて、私も甘かったわ。キャプテンハーロックはあんな卑劣な男じゃない。」
イベントが終わると、連合艦隊は打ち上げを行うが、三条神流と南条美穂は打ち上げに参加せず、二人で過ごしていた。
「驚異のクズ鉄って、連合艦隊で話題にしていいよ。」
「キャプテンハーロックをクズ呼ばわりとはな。」
と、三条神流が言う。
「飯代払ってんだぞって言うならまだしも、エサ代って。姉ちゃんをペット扱いかよ。ぶっ殺すぞ。」
「こら。鉄郎はそんな言葉遣いはしません。それに、私とカンナはバカと生きている世界が違うの。バカの相手はしないの。」
クイーンエメラルダスの格好をした南条美穂は、顔に傷が無いところを除けば、クイーンエメラルダスにそっくりだった。
「でも、問題あるな。」
と、南条美穂が言う。
「もしカンナとくっつくなら、カンナは「鉄郎」じゃなくて「トチロー」だからなあ。でも、カンナは「銀河鉄道999」が好きだし。そうなると、私はメーテルにならないとだ。」
「えっ?」
「さっきから何度アピールしても解らないの?」
三条神流は何も言えなかった。
「私、当分恋愛はしないって決めたの。ある一人を除いては。その、ある一人が、カンナだって言いたいの。」
「でも、俺は姉ちゃんの弟で―。」
「血は繋がって無い。」
その通りだった。
南条美穂と三条神流は姉と弟の関係であると言っているが、実際に血は繋がっていない上、生まれた家も場所も違う。
「まあ、今日会いに来たのは、それを言うため。私も、飛行船を失ってしまった。弟であるカンナは失いたくない。」
「姉ちゃん。姉ちゃんは俺とならいいのか?」
「いいわ。でもね。一つ条件がある。」
「何?」
「周りに悟られてはだめ。私とカンナが付き合い始めたら、姉と弟が付き合い始めたって事になる。だから、もし何か言われたらこう言って。「あれは姉だ」って。」
「分かった。」
「それから、もう「エメラルダス」なんて呼ばないで。これからは、私はカンナの姉なんだから。」
その日の最終の新幹線で、南条美穂は長野へと帰っていった。




