大正橋
渋川駅から大正橋までは徒歩で移動する。
上越線はこの鉄橋で利根川を渡るのだが、鉄橋に沿って国道の橋があるため、この橋から安全に鉄橋を渡る列車を撮影できる。ただし、渋川駅に停車するため、SLの場合は煙が出ていない事が多い。
「リスクの割に、いい写真が撮れる確率が低い。だが、いいポイントだからこの時間でもこんなに人が居るんだよ。」
と、三条神流は言いながら国道の橋を見る。
そこには、すでに20人近い人が列車の来るのを待ち構えていた。
「マジで?」
「ああ。これが俺達の世界だ。よくね、テツと自分は違うから分らないって言う人がいるんだけど、まさしくその通りだ。一般の人からすれば鉄道の写真を撮るのに何時間も待つなんてどうかしているだろう。だが、これは鉄道ファンの中では常識なんさ。」
三河は言う。
大正橋で連合艦隊は再度集結した。
連合艦隊には女子のメンバーが2人居る。技術士官の松田彩香と、情報士官の三宅綾子だ。
2人は高崎第一の生徒だ。
「もし、三河君と付き合うなら、貴方も連合艦隊に入るべきだね。腕と能力にもよるけど。」
と、松田彩香が言う。
「一応、鉄道の知識は少しだけあるわ。」
芽衣子が言う。
三河は音楽プレーヤで音楽を聞いたり、ゲームをしたりして時間を潰す。
「あっつ!」
芽衣子が言うのが聞こえた。
温まったコンクリートの上にペットボトル入りの水を置いたため、水が温まってしまったのだ。
「三河君。水!水ちょうだい。」
「えっ。でも、これ口つけて―。」
ためらう三河から奪うように、芽衣子は水を貰うと、それを飲んだ。
「ちょっとは気にしろ。」
三河は言う。
「それやるから。素人相手にこれは無理だ。」
三河は溜め息をつきながら言った。
「霧降少将も、無茶だ。素人連れてんだ。何かあったら大変なことになるのは少将だぞ。」
三条神流が言うが、
「無茶なことではない。私が三河君と付き合うのなら、私は三河君を支えられる存在にならなければならない。そして、三河君が望むなら、連合艦隊と共に行動する。」
と、芽衣子は言った。