高崎第一高校文化祭
翌日も、三河は放課後、倉賀野高校の部室で鉄道模型を整備する。
一緒にいる芽衣子に、昨日、三条神流が言っていた「姉ちゃん」は誰か知っているか訊いてみた。
「エメラルダスのことじゃないかな?」
「エメラルダスって、例の?」
「うん。三条君は一人っ子で、女の子が嫌いって言うより本当は怖がっている。その三条君が「姉ちゃん」なんて呼ぶ人は連合艦隊には居ない。となると考えられるのは、長野のエメラルダス以外には。」
三河は先日購入したDD51と旧型客車をレールに載せて試運転をする。
「ねえ。もしも私が、三河君とずっと二人で居たいとか、二人で遠くへ行きたいって言ったらどうする?」
「えっ?」
「だから―。」
と、芽衣子が言いかけたとき、クラスメイト達が部室にやって来たため、その対応に追われた。
最近、芽衣子は三河を拷問部屋へ連れ込んで集団レイプするという事に参加していない。
むしろ、拷問部屋へ連れ込まれるのを止めようとする事もある。
三河はそれに気が付いたが、だからといって芽衣子に対する態度を変えることはなかった。
9月23日から24日まで、高崎第一高校の文化祭である。
文化祭当日、連合艦隊は鉄道模型のジオラマの試運転を終えて、列車の運転を開始する。
客足はよくない。
入口のところには、解説プログラムの開始時間を表示したが、興味を示す人は皆無である。
ようやく、来たと思ったらそれは三河だった。
「客足は?」
「伸び悩んでるよ。」
三河は溜め息をつく。
その後、解説プログラムを行ったが客足は伸びず、三回目のプログラムを中止しようと霧降が言い出す始末だった。
三河は何を思ったのか、持ってきていたカメラで鉄道模型の走行シーンの動画撮影を行い始めた。
三回目のプログラムを中止する事にしたため、一部の車両も撤収させ、文化祭一日目終了時には貨物列車だけが走っている状態だった。
二日目の午前中も同じだった。
三河はまた、動画撮影を開始する。
午後になると、来客があった。
連合艦隊は活気付いたが相手は倉賀野高校の女達で、三河に会いに来たのだと言い、三河は落胆した。
だが、三条神流は、
「今から臨時でプログラムやるぞ。」
と言い、連合艦隊もそれに向けて車両の入換作業を始める。
「臨時の解説プログラムを行いますので、しばらくお待ちください。」
と、三条神流は言う。
「おーい!253出すか?」
「出すよ。」
等と、入換作業をしてから、解説プログラムを始める。
三河が、案内役であり、女達は笑いはじめた。
「普通列車が発車してしばらくしますと、回送線より赤と黒の電車が出てきました。こちらは253系特急「成田エクスプレス」です。現在は現役を退きましたが、長野電鉄で―。」
と、三河が解説する。
「夜になると、昼間に走る特急列車は車庫へ帰っていき、代わりに夜の鉄路の主役の―。」
「暗くしてよ!」
「明るいよ!夜じゃないじゃん!」
と、ヤジが飛ぶ。
「照明設備の関係上、ご勘弁ください。」
と、誤魔化す。
解説プログラムを終える。
「誰だよ「鉄道の一日」やろうって言ったのは!」
「お前だろうが!」
「うるせえ!テメエぶっ殺すぞ!」
「死ねこの野郎!」
喧嘩が始まった。
「落ち着け。」
三条神流が言う。
「倉賀野高校の時は設備も何とかしよう。喧嘩するな。頭を使え。出来るな?三河准尉?」
三河は肯いた。